会社から突然解雇されて悩んでいませんか?
結論から言うと、会社からの突然の解雇は、原則として違法とされています。
会社は労働者を解雇するには様々な義務を課されているためです。
突然の不当解雇をされた場合には、あなたにはいくつかの権利があります。例えば、あなたは会社に対して、解雇後の賃金や慰謝料、解雇予告手当を請求できる可能性があるのです。
しかし、たとえ突然の解雇が不当であったとしても、適切な対処をしなければ、あなたの権利を実現することはできません。
実際、突然の解雇をされても、それが違法であることに気がつかず、権利を害されている方が数多くいるのです。
あなたが突然の不当解雇をされた場合には、まずは以下の3つの対処をするべきです
①不満を伝える
②解雇理由証明書をもらう
③生活費を確保する
今回は、突然の解雇が違法であることやその対処法について解説していきます。
この記事を読めば、あなたがどのような権利を持っているのか、どうのように行動すればいいのかがわかるはずです。
突然解雇された場合に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」は、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
突然の解雇が違法となる4つの理由
会社からの突然の解雇は、原則として違法とされています。
その理由は、以下の4つです。
理由1:解雇するには予告が必要
理由2:解雇するには改善の機会の付与が必要
理由3:解雇するには配置転換等の解雇回避措置が必要
理由4:懲戒解雇では弁明の機会の付与等の手続が必要
解雇は、労働者の生活に対して大きな影響を与えます。そのため、会社は労働者を解雇するには様々な義務を課されているのです。
以下では、突然の解雇が違法になる理由について1つ1つ説明していきます
理由1:解雇するには予告が必要
突然の解雇が違法となる理由の1つ目は、解雇するには予告が必要であることです。
会社は、解雇する場合には、原則として、労働者に対して、30日以上前にその予告をしなければなりません。
労働基準法20条(解雇の予告)
1「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。…」
例えば、会社があなたをその日に解雇するというのは、原則として許されないのです。
ただし、以下の4つのケースでは、予告なしの解雇が適法とされることがあります。
例外1:やむを得ない事由により事業の継続が不可能となったケース
例外2:労働者の責めに帰すべき事由があるケース
例外3:労働者の属性により予告が不要とされているケース
例外4:解雇予告手当の支払いがされているケース
例外1:やむを得ない事由により事業の継続が不可能となったケース
やむを得ない事由により事業の継続が不可能となったケースでは、例外的に解雇の予告が不要とされています。
労働基準法20条(解雇の予告)
1「…但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合…においては、この限りでない。」
例えば、以下のような場合です。
・過失によらない火災により事業場が焼失した場合
・震災に伴う工場、事業場の倒壊
例外2:労働者の責めに帰すべき事由があるケース
労働者の責めに帰すべき事由があるケースでは、例外的に解雇の予告が不要とされています。
労働基準法20条(解雇の予告)
1「…但し、…労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」
労働者の責めに帰すべき事由とは、予告期間なしで解雇されてもやむを得ないと認められるほどに重大な規律違反や背信行為をいいます。
例えば、会社内で重大な犯罪行為を行ったような場合です。
ただし、懲戒解雇であれば、常に解雇予告が不要となるわけではありません
例外3:労働者の属性により予告が不要とされているケース
労働者の属性により解雇が不要とされているケースがあります。
具体的には以下の方には、解雇予告が不要とされています。
・日日雇い入れられる者
・2か月以内の期間を定めて使用される者(季節的業務の場合は4か月以内)
・試用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されている者を除く)
労働基準法21条
「前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。」
一「日日雇い入れられる者」
二「二箇月以内の期間を定めて使用される者」
三「季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者」
四「試の使用期間中の者」
例外4:解雇予告手当の支払いがされているケース
解雇予告手当の支払いがされているケースでは、解雇の予告は不要とされています。
解雇予告手当とは、会社が労働者に対して予告をしないでいきなり解雇をする場合に支払わなければならない手当です。
具体的には、予告なしの解雇の場合には、会社は、平均賃金の30日分を支払わなければなりません。
労働基準法20条(解雇の予告)
1「…三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。…」
理由2:解雇するには改善の機会の付与が必要
突然の解雇が違法となる理由の2つ目は、解雇するには改善の機会の付与が必要であることです。
労働者を解雇するには、改善の可能性がなく、雇用を続けていくことが難しい状態となっていることが必要です(将来的予測の原則)。
例えば、労働者が業務上のミスをした場合であっても、何も注意せずにいきなり解雇する場合には、濫用とされる可能性が高いのです。
そのため、会社は、労働者に落ち度があったとしても突然解雇するのではなく、注意や指導をする必要があります。
理由3:解雇するには配置転換等の解雇回避措置が必要
突然の解雇が違法となる理由の3つ目は、解雇するには配置転換等の解雇回避措置が必要となることです。
労働者を解雇するには、期待可能な解雇回避措置が尽くされていることが必要です(最終手段の原則)。
例えば、労働者がある業務でのミスが多く、それが改善しない場合であっても、他の業務内容に変更することで雇用を継続することができないかなどを検討する必要があります。
そのため、会社は、労働者に落ち度があったとしても突然解雇するのではなく、業務内容の変更等を検討する必要があります。
理由4:懲戒解雇では弁明の機会の付与等の手続が必要
突然の解雇が違法となる理由の4つ目は、懲戒解雇では弁明の機会の付与等の手続きが必要となることです。
会社は、懲戒解雇の前に労働者に対して弁明の機会の付与をすることが必要とされています。
また、就業規則に賞罰委員会へ付議することが規定されているよう場合には、事前にこの手続きを行う必要があります。
そのため、会社は、労働者を突然懲戒解雇するのではなく、事前に「弁明の機会の付与」や「就業規則上規定されている手続」を行う必要があります。
~退職勧奨せずに解雇していいのか~
退職勧奨というのは、労働者に対して、自主的に退職することや退職に合意することを求めるものです。
退職勧奨は、これを行うかどうかは会社の任意であり、労働者を解雇する前にこれを行うことが義務付けられているわけではありません。
実際、多くの会社では解雇という強硬的な手段に出る前に退職の勧奨が行われますが、これを行わない会社もあります。
そのため、会社が退職勧奨をせずに労働者を解雇しても違法とはなりません。
ただし、整理解雇では、従業員に対して希望退職の募集をしたことは、その適法性を考慮する上で重要な考慮要素となります。
突然の不当解雇に対するあなたの権利
突然の不当解雇をされた場合の権利は、あなたが解雇自体を争うかどうかによって変わってきます。
以下では、「解雇自体を争う場合」と「解雇自体は争わない場合」のそれぞれについて説明していきます。
解雇自体を争う場合
あなたが解雇の効力自体を争う場合、つまり解雇された会社に戻る意思がある方は、以下の3つの権利を主張していくことが通常です。
・雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
・解雇後の賃金請求
・慰謝料請求
順番に説明していきます。
雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
解雇自体を争う場合の権利の1つ目は、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認です。
あなたは、自分が今も会社の従業員として働いて賃金をもらう地位にあることを確認することで、会社との法律関係を明確にすることができます。
解雇が不当な場合には濫用として無効になり、あなたが会社を辞める理由はなくなるためです。
解雇後の賃金請求
解雇自体を争う場合の権利の2つ目は、解雇後の賃金請求です。
労働者は、解雇された場合であっても、その解雇が不当なときには、解雇された日以降の賃金を請求することができます。
つまり、あなたは解雇された日から出勤していなくても、その原因が会社にあるため、解雇されてから解決するまでのお給料を支払ってもらうことができるのです。
勿論、解決した後も会社で働けばその分の賃金を支払ってもらえることになります。
バックペイ(解雇後の賃金)については、以下の動画でも詳しく解説しています。
慰謝料請求
解雇自体を争う場合の権利の3つ目は、慰謝料請求です。
慰謝料とは、解雇により生じた精神的苦痛を填補するものです。
解雇の悪質性が特に高い場合には、慰謝料請求まで認められることがあります。
不当解雇の慰謝料については以下の記事で詳しく解説しています。
不当解雇の慰謝料については、以下の動画でも詳しく解説しています。
解雇自体は争わない場合
あなたが解雇の効力自体は争わない場合、つまり解雇された会社に戻る意思がない方は、以下の3つの権利を主張していくことが考えられます。
・解雇予告手当の請求
・賃金相当額の損害賠償請求
・慰謝料請求
順番に説明していきます。
解雇予告手当の請求
解雇自体を争わない場合の権利の1つ目は、解雇予告手当の請求です。
予告なく突然解雇された場合には、先ほど説明した通り、原則として、解雇予告手当の支払いが必要となります。
解雇予告手当の計算方法や請求方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
賃金相当額の損害賠償請求
解雇自体を争わない場合の権利の2つ目は、賃金相当額の損害賠償請求です。
解雇が不当である場合には、あなたは解雇されてから再就職するまでに必要な期間、賃金を得られないことになり、賃金相当額の損害を被ることになります。
そのため、あなた解雇されてから再就職するまでに必要な期間に得られなかった賃金について、会社に対して請求することが考えられます。
慰謝料請求
解雇自体を争わない場合の権利の3つ目は、慰謝料請求です。
これについては、解雇を争う場合と同様です。
解雇の予告を欠くのみで、解雇の理由自体は不当でない場合には、解雇通知から30日経過した時点で解雇が認められてしまう可能性があるので注意が必要です。
裁判例は、会社が解雇予告期間を置かず、また予告手当の支払いをしないで解雇通知をした場合でも、会社が即時解雇に固執する趣旨でない限り、30日の期間を経過するか又は通知後に予告手当の支払いをしたときのいずかのときから、解雇の効力が生じるとしているためです(参照:最判昭35年3月11日民集14巻3号403頁[細谷服装事件])。
突然解雇された場合の対処法3つ
突然の解雇が不当である場合にも、適切な対処をしなければ、あなたの権利を実現することはできません。
会社を突然解雇された場合には、まずは以下の対処をすることが重要です。
・不満を伝える
・解雇理由証明書をもらう
・生活費を確保する。
それでは順番に確認していきましょう
不満を伝える
会社を突然解雇された場合の対処法の1つ目は、解雇に不満があることを伝えることです。
あなたが解雇を承諾してしまうと、その後に、これを争うことが難しくなってしまう可能性があります。
例えば、会社から「合意書」や「承諾書」に署名押印を求められたり、「退職届」を出すように求められたりしても、解雇に納得していない旨を伝えて断りましょう。
また、会社に復職する意思がある場合には、解雇日以降についても働く意思があるとして、業務を指示するように求めることが大切です。
不満を伝える具体的な方法としては、内容証明郵便に配達証明を付けて送付することが望ましいですが、送付する前に一度、初回無料相談などを利用して弁護士に確認してもらうといいでしょう。
解雇理由証明書をもらう
会社から突然解雇された場合の対処法の2つ目は、解雇理由証明書をもらうことです。
解雇理由証明書というのは、会社があなたを解雇した理由が書かれた書面です。
会社は、労働者から請求された場合には、解雇理由証明書を交付することが義務付けられています。
解雇理由証明書の交付を受けることで、あなたが解雇された理由を具体的に知ることができます。これにより、解雇を争うかどうか、どのような証拠を集めればいいのかを判断することができます。
また、会社側は、解雇理由証明書に記載されていない事由につき、新たに解雇理由を追加しにくくなります。
そのため、突然解雇されたらまずは解雇理由証明書をもらうべきなのです。
解雇理由証明書をもらう方法については以下の記事で詳しく解説しています。
生活費を確保する
会社から突然解雇された場合の対処法の3つ目は、生活費を確保することです。
なぜなら、解雇を争おうとしても生活費がなければ、早期解決のために、譲歩を強いられることになってしまうためです。
生活費を確保する方法としては、以下の3つがあります。
①失業保険の仮給付を受ける方法
②賃金の仮払い仮処分を受ける方法
③他社への再就職
まず、①失業保険の仮給付とは、解雇を争う場合に失業保険を仮に受給する措置です。労働者としては、退職を争っているため失業保険の本受給をすることはできないので、あくまでも仮の受給となります。解雇日に退職していなかったことが確認された場合には、会社から支払われた賃金などにより返還することになります。
失業保険の仮給付については、以下の動画でも詳しく解説しています。
次に、②賃金仮払仮処分とは、訴訟で争うには期間がかかるため、裁判所に仮の措置を求めるものです。つまり、判決を得ていない間でも、会社から仮に賃金を支払ってもらうことができることになります。
最後に、③他社への再就職とは、解雇を争いながら他の会社から賃金得ることです。他社へ再就職して賃金を得ることは禁止されていませんが、解雇自体を争い復職を求めている場合には、会社から業務を命じられればこれに応じる意思あることが必要です。また、解雇後に他の会社で働いていた場合には、解雇された会社に請求できる賃金額が平均賃金の6割を限度に制限されることになります。
解雇された場合の生活費については以下の記事で詳しく解説しています。
突然解雇された場合によくある3つの悩み
会社から突然解雇された場合によくある悩みとして以下の3つがあります。
・退職金はもらえる?
・有休は消化できる?
・解雇予告手当はもらっていい?
順番にこれらの悩みを解消していきましょう。
退職金がもらえるかは退職金規程と解雇理由による
突然解雇された場合に退職金がもらえるかは、退職金規程と解雇理由によります。
なぜなら、退職金の支給については、法律上定められたものではなく、会社ごとに決められたものだからです。
つまり、解雇された場合には、あなたは会社を退職することになるため、退職金規程があれば、これに従い退職金をもらえる可能性があります。
ただし、懲戒解雇の場合には、退職金を支給しない旨が規定されていることがありますので注意が必要となります。
懲戒解雇された場合の退職金の不支給については以下の記事で詳しく解説しています。
解雇日以降は有給の消化はできない
解雇日以降については、あなたは既に会社を退職したことになってしまうため、有給を使うことはできません。
つまり、突然その日に解雇すると言われてしまった場合でも、有給を消化することはできないのです。
これに対して、解雇を伝えられてからその効力が生じるまで日数がある場合には、その間について有休を使うことができます。ただし、就業規則等で、「退職日前〇日は現実に出勤するものとする。」などと定められていることがありますので注意が必要です。
また、会社によっては、退職時点で有給が残っていた場合にはそれに相当する手当を支払うとの制度を規定していることがありますので確認してみましょう。ただし、解雇自体を争う場合には、退職を前提に有給の残日数に相当する手当の支払いを求めることは矛盾した行動になりますのでやめておきましょう。
解雇自体を争う場合には解雇予告手当はもらってはいけない
あなたが解雇自体を争い会社に復職する意思がある場合には、解雇予告手当はもらわないように注意しましょう。
解雇予告手当をもらってしまうと、あなたが解雇の効力を争っていることと矛盾してしまうためです。
もしも、既に解雇予告手当をもらってしまっていたり、一方的に振り込まれてしまったりした場合には、念のため、「解雇予告手当としてではなく、解雇日以降の賃金として受領する」旨を伝えておきましょう。
突然の解雇は早めに弁護士に相談しよう!
会社を突然解雇された場合には早めに弁護士に相談するようにしましょう。
解雇された場合には、まずは「あなた自身の権利を知ること」と「気を付けなければならない点」を知ることが先決です。
よく分からないうちに会社との話し合いを進めていくと、あなたに不利益な事情が積み重ねられてしまうことも多いのです。
そのため、あなたがまずはどのように行動するべきなのかを確認しておきましょう。
初回無料相談を利用すれば費用をかけずに相談できますのでおすすめです。
まとめ
以上のとおり、今回は、突然の解雇が違法であることやその対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。
・会社からの突然の解雇は、原則として違法とされています。その理由は、①解雇するには予告が必要、②解雇するには改善の機会の付与が必要、③解雇するには配置転換等の解雇回避措置が必要、④懲戒解雇では弁明の機会の付与等の手続が必要の4つです。
・突然の不当解雇をされた場合に通常請求していくが多い権利としては、解雇自体を争う場合には、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②解雇後の賃金請求、③慰謝料請求となります。これに対して、解雇自体を争わない場合には、①解雇予告手当の請求、②賃金相当額の損害賠償請求、③慰謝料請求となります。
・会社を突然解雇された場合には、まずは、①不満を伝える、②解雇理由証明書をもらう、③生活費を確保するといった対処をすることが重要です。
この記事が突然の解雇に悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。