アップオアアウト(up or out)という言葉を聞いたことはありますか?
外資系コンサル企業において、よく使われることがある言葉ですが、どのような意味か気になりますよね。
アップオアアウトとは、端的に言うと、昇進できなければ、退職するという文化のことをいいます。
ただし、アウト(退職)ついての細かいニュアンスについては、人により理解が異なります。
いずれにせよ、外資系企業においては、入社後数年間で退職するケースが日系企業に比べて多いことからは、どのようにして退職に至るのかについて知っておく必要があります。
アウト(退職)になった場合の対処法を理解することが自分の生活を守ることにもつながります。
今回は、外資系のアップオアアウト(up or out)について、詳しく解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、アップオアアウトとは何かについてよくわかるはずです。
目次
外資系コンサルなどのアップオアアウト(up or out)とは
外資系コンサルなどのアップオアアウトとは、端的に言うと、昇進できなければ、退職するという文化のことをいいます。
アップオアアウトについて明確な定義がされているわけではありません。
退職(アウト)については、会社から明確に戦力外を宣告される場合だけではなく、自ら見切りをつけて去っていく場合も含めて、この言葉が用いられる傾向にあります。
日系企業では、終身雇用制のもと長期間の雇用が予定されています。
これに対して、外資系企業では人員の入れ替わりが激しく、特にコンサル業界ではその傾向が顕著となります。
外資系コンサルの平均勤続年数を例に見てみると以下のとおりとなります。
これに対して、厚生労働省による賃金構造基本統計調査では、以下のとおりとなっています。
このように、外資系コンサルの平均勤続年数は、一般的な平均勤続年数に比べて格段に短くなっています。
アップオアアウト(up or out)のメリット・デメリット
アップオアアウトのメリット・デメリット以下のように整理できます。
労働者側から見れば、その職場で働き続けた場合には昇進することは望めないですが、退職して他の職場で新たなチャレンジをすることにより成功する可能性があるというメリットがあります。
これに対して、上手く再就職先が決まらないような場合には生活に困る可能性があり、収入が不安定になる点がデメリットとなります。
会社側から見れば、会社に合わない人材は退職していくことになりますので、会社に合う人材のみを会社に残すことができるという点がメリットになります。
これに対して、不安定な地位をおそれた優秀な人材からの応募が減り、また、業務指導をしていくことにより高い成果を出せた可能性がある労働者も排除していくことになるため、優秀な人材を確保する機会を逸失する可能性があるという点がデメリットとなります。
アップオアアウト(up or out)の文化は本当にあるのか?
アップオアアウト(up or out)の文化については、私が実際に相談を受けている中では、本当にあるように感じます。
勿論、弁護士のもとに相談に来るのは、退職勧奨や解雇などの問題が顕在化したものですので、外資系企業についての退職トラブルをよく聞くのは当然かもしれません。
しかし、日系の企業に比べて、外資系企業における退職勧奨、解雇は、十分に他の手段を検討することなく行われることが多い傾向にあります。
ただし、近年では、昇進(up)できない者について、必ずしも退職(out)させるわけではなく、現状維持(stay)、降格(down)、成長(growth)させるという考え方の外資系コンサルも出てきています。
そのため、アップオアアウト(up or out)の文化自体は本当にありますが、少しずつ外資系コンサルの文化も変わってきていると言えるでしょう。
よくあるアウト(out)になる3つのケース
アウト(out)になるケースは1つではありません。
アップオアアウト(up or out)という単語を使う人によってニュアンスが異なる場合もあります。
例えば、よくあるアウト(out)になるケースについて3つ挙げると以下のとおりです。
ケース1:期待された成果を出せていない場合
ケース2:成績の下位2割などに入る場合
ケース3:自分で昇進を見込めないと判断した場合
それでは各ケースについて順番に説明していきます。
ケース1:期待された成果を出せていない場合
よくあるアウト(out)になるケースの1つ目は、期待された成果を出せていない場合です。
外資系企業では、年収が高額である代わりに、それに見合う成果を出すことができているかを厳しい目で見られます。
自分より成績が悪い従業員がいるような場合でも、期待された成果を出していない判断されたらアウト(out)を宣告されることがあります。
厳しい会社では、実際に結果が出る前の、目標や計画を立てる段階において期待した成果に満たないものであるとして、アウト(out)を宣告されることもあります。
ケース2:成績の下位2割などに入る場合
よくあるアウト(out)になるケースの2つ目は、成績の下位2割などに入る場合です。
会社によっては、毎年、成績の下位●%はアウト(out)などのルールがある場合があります。
ただし、これは外資系コンサルでも特に競争が激しい会社であると考えられます。
ケース3:自分で昇進(up)を見込めないと判断した場合
よくあるアウト(out)になるケースの3つ目は、自分で昇進(up)を見込めないと判断した場合です。
3~6年勤めてみると、その会社で働き続けて昇進できるかどうかが見えてきますので、現状維持(stay)が続いたり、降格(down)したりした場合には、自分から転職活動を始める方もいます。
つまり、自ら会社を去るような場合についても、昇進できないという消極的な理由である場合には、アップオアアウト(up or out)でいう、アウト(out)に含めて考えられる傾向にあります。
ただし、実際に相談を受けていると、会社から宣告されたのか、自分から見切りをつけたのかあいまいなことも多いと感じます。
例えば、「年収に見合った成果が出ていない」などと言われたりした場合に、転職先を探し始めるような場合です。
外資系企業の転職については、以下の記事で詳しく解説されています。
外資系に転職したい!転職の実情と必見の転職サイト3つを簡単に解説 – ベスキャリ|転職エージェント比較サイト (bescaree.com)
アウト(out)にする場合の外資系企業の手口5つと違法性
外資系企業が従業員をアウトにする場合の手口としては、例えば以下の5つがあります。
手口1:退職勧奨
手口2:解雇
手口3:自宅待機
手口4:引継指示や社内周知
手口5:降格や減給
ただし、いずれの方法についても、法的なルールがありますので、無制限にこれらの方法を行っていいわけではありません。
以下では、これらの各手口について、その違法性を順番に説明していきます。
手口1:退職勧奨
外資系企業が従業員をアウトにする場合の手口の1つ目は、退職勧奨です。
ある日、人事から面談を設定され、そこで自分から退職届を出すように説得されます。
これについては、前触れがある場合もありますが、何の前触れもなくいきなり行われる場合もあります。
もっとも、退職勧奨については、あくまでも労働者の意思を尊重する形で退職を促すものであり、退職を強制することはできません。
退職勧奨の方法が相当性を欠き、強制に渡ると判断されるような場合には違法となります。
例えば、労働者が退職の意思はない旨を明確に示しているのに数時間にわたり面談室から出さないこと、暴言など人格を否定するような発言をすることは許されません。
退職勧奨における会社側の発言については録音しておくことをおすすめします。
退職勧奨の録音については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨の録音については、以下の動画でも詳しく解説しています。
退職勧奨をされたらどうすればいいのかについては、以下の記事でも詳しく解説します。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
手口2:解雇
外資系企業が従業員をアウトにする場合の手口の2つ目は、解雇です。
通常、事前に退職勧奨が行われることが多いですが、労働者が退職勧奨に応じない場合には、会社は解雇により一方的に労働者を退職させようとしてきます。
もっとも、解雇については、法的にはとても厳格なルールがあり、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当とはいえない場合には、無効となります。
つまり、能力不足が重大なものと言えない場合には解雇の理由とはならず、また、期待する能力に満たない場合でも、業務改善指導や配置転換など雇用を継続する方策を検討しなければ解雇できないのです。
これは外資系企業であっても変わりません。
そのため、外資系企業から解雇された場合であっても、十分な理由がなければ、解雇は無効と判断される可能性が高いのです。
外資系企業であっても解雇が認められにくいことについては以下の記事で詳しく解説しています。
手口3:自宅待機
外資系企業が従業員をアウトにする場合の手口の3つ目は、自宅待機です。
労働者に対して、退職勧奨をした後、自宅待機を命じる会社も多くなっています。
外資系企業が自宅待機を命じる意図は、①待機期間中に労働者が転職活動をすることを促し、退職に応じやすくするとともに、②職場から隔離して復帰しづらくする点にあることが多いです。
自宅待機命令については、直ちに違法となるわけではありません。労働者には就労請求権はないと言われているので、会社側に仕事を命じる義務はないためです。
もっとも、職場環境から隔離して退職せざるを得なくするために自宅待機が命じられている場合には、これを立証できれば、違法となる可能性があります。
また、上記の通り自宅待機命令自体は直ちには違法となりませんが、転職を促す目的などで自宅待機が命じられる場合には、労働者が業務をしていない場合でも、会社はその期間の賃金を全額支払わなければなりません。
自宅待機については、以下の記事で詳しく解説しています。
手口4:引継指示や社内周知
外資系企業が従業員をアウトにする場合の手口の4つ目は、引継指示や社内周知です。
労働者が退職を承諾していないにもかかわらず、会社は、「●月●日で退職することになった。」とだけ述べて、引継ぎ指示や社内周知をすることがあります。
そして、会社内で労働者が退職することが確定した認識になったところで、退職手続きとして、退職届や誓約書等にサインをさせるのです。
労働者が退職すると言っていないにもかかわらず、労働者が退職する旨を周知することは、行き過ぎた退職勧奨として違法となる可能性があります。
手口5:降格や減給
外資系企業が従業員をアウトにする場合の手口の5つ目は、降格や減給です。
労働者の賃金額を減らすことにより、その会社で継続して働くことを難しくしたり、将来性がないと感じるようにしたりして、退職を促す手口です。
降格や減給の内容の程度によっては適法となることもありますが、例えば、賃金を半分にするような降格や減給については、濫用として無効となります。
減給の違法性については、以下の記事で詳しく解説しています。
アウト(out)になった場合の対処法4つ
あなたが会社からアウト(out)を宣告される場合には、そのタイミングについては自分で決めることはできません。
あなたがアウト(out)を宣告された場合に備えて、是非、知っておいていただきたい対処法は以下の4つです。
対処法1:安易に退職届にサインしない
対処法2:働く意思があることを示す
対処法3:パッケージ交渉を行う
対処法4:弁護士に相談する
それでは、各対処法について順番に説明していきます。
対処法1:安易に退職届にサインしない
アウト(out)を宣告された場合の対処法の1つ目は、安易に退職届にサインしないことです。
退職届は、一度これにサインしてしまうと撤回することが非常に難しくなります。
突然のことで、十分な判断ができずにサインをしてしまったという言い訳は通じません。
裁判所からも、「大の大人がサインしたのだから、通常は、その意味を理解していたはず」と厳しいことを言われてしまいます。
また、会社側は、労働者が退職届を書いた後には、基本的に退職条件の交渉にも応じません。
既に、労働者に退職してもらうという目的を達成している以上、会社側が交渉に応じるメリットはないためです。
そのため、退職するかどうか悩んでいる場合には、その場では退職届にサインせず、一度持ち帰り弁護士に相談するようにしましょう。
対処法2:働く意思があることを示す
アウト(out)を宣告された場合の対処法の2つ目は、働く意思があることを示すことです。
会社は労働者を退職させようとする場合に「●月●日付けで退職することとなりました」などと決定事項のように告げて、引継ぎの日程を決めたり、退職の挨拶を求めたりしてきます。
こうなると、どんどん退職を前提とした事実関係が積み重ねられていくことになり、退職届を記載していなくても暗黙のうちに退職に合意していたと言われることが多いのです。
また、労働者としても、退職届を記載することを拒否しづらくなってきます。
そのため、退職に不満がある場合には、明確に働く意思があることを示しましょう。
例えば、「私にも生活があるので、退職することはできません」とだけ告げれば十分です。
対処法3:パッケージ交渉を行う
アウト(out)を宣告された場合の対処法の3つ目は、パッケージ交渉を行うことです。
外資系の退職勧奨パッケージとは、退職に応じることを条件とする特別退職金等の優遇措置のことをいいます。会社は、労働者に対して、パッケージを提案する義務はありません。
しかし、労働者が退職に応じない場合には、説得の材料として、パッケージの提案をしてくることが多いのです。
外資系のパッケージの相場は、賃金の3か月分~1年半分程度であり幅があります。
交渉力の差によりパッケージ金額も大きく左右されることになります。
外資系のパッケージについては、以下の記事で詳しく解説しています。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
対処法4:弁護士に相談する
アウト(out)を宣告された場合の対処法の4つ目は、弁護士に相談することです。
退職に応じるかどうかを検討するに当たっては、解雇されるリスクについて適切に分析したうえで、どのような交渉をしていくかを検討する必要があります。
特に、弁護士には退職勧奨を受けたらすぐに相談することがポイントです。
自分で交渉してみてうまくいかなかったら依頼しようという方もいますが、既に、不利な発言や行動をしてしまった後だと、交渉方法についても制限されてしまいます。
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まとめ
以上のとおり、今回は、外資系のアップオアアウト(up or out)について、詳しく解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・外資系コンサルなどのアップオアアウトとは、端的に言うと、昇進できなければ、退職するという文化のことをいいます。
・よくあるアウト(out)になるケースについて3つ挙げると以下のとおりです。
ケース1:期待された成果を出せていない場合
ケース2:成績の下位2割などに入る場合
ケース3:自分で昇進を見込めないと判断した場合
・外資系企業が従業員をアウトにする場合の手口としては、例えば以下の5つがあります。
手口1:退職勧奨
手口2:解雇
手口3:自宅待機
手口4:引継指示や社内周知
手口5:降格や減給
・もしも、あなたがアウト(out)を宣告された場合に備えて、是非、知っておいていただきたい対処法が以下のとおり4つあります。
対処法1:安易に退職届にサインしない
対処法2:働く意思があることを示す
対処法3:パッケージ交渉を行う
対処法4:弁護士に相談する
この記事がアップオアアウト(up or out)について悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。