建設業で働いているけど「残業時間が多すぎる」又は「残業代が少なすぎる」との悩みを抱えていませんか。
建設業の方の残業時間は長くなりがちで、
に及ぶことも珍しくありません。
そして、建設業においては、サービス残業をしている方(残業代が「一部支払われている」「全く支払われていない」と回答した方)の割合も、
にのぼっているという現状があります(平成30年度厚生労働省委託 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業 報告書(建設業に関する調査))。
建設業で働いている方に対しては、残業時間の上限規制の適用は猶予されていますが、残業をした場合には、一般の労働者の方と同じように、残業代をもらう権利があります。
今回は、建設業で働いている方が知っておくべき残業規制に関するルールや正しい残業代の計算方法を簡単に解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、あなたの残業代に関する悩みが解消するはずです。
目次
建設業の残業時間は多い!残業100時間になることも…
建設業の残業時間は、その業務の内容や性質上、長時間化しやすい傾向にあります。
残業時間が1か月で100時間を超えることも珍しくありません。
以下では、
・残業100時間超えの建設会社の割合
・建設業の残業が多い理由
の順で説明していきます。
残業100時間超えの建設会社の割合
残業100時間超えの労働者がいる建設会社の割合は、
程度とされています。
技能労働者とは、建設工事の直接的な作業を行う、技能を有する労働者です。
技術者とは、施工管理を行い、直接的な作業は基本的に行わない労働者です。
より詳細には、時間外労働時間の割合は、以下のとおりとされています。
(出典:「平成30年度厚生労働省委託 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業 報告書(建設業に関する調査)」を加工して作成)建設業の残業が多い4つの理由
建設業の残業が多い理由としては、以下の4つがあります。
理由1:工期が決まっているため
理由2:人手が不足しているため
理由3:仕事の繁閑の差が大きいため
理由4:顧客からの不規則な要望に対応する必要があるため
それでは順番に説明していきます。
理由1:工期が決まっているため
建設業の残業が多い理由の1つ目は、
です。
建設工事については工期が定められることになりますが、その工期が短い場合などには、残業が多くなります。
工期を守ることができないと重大な問題になることもあるため、工期までに工事が終了するように、業務量が増やさざるを得ないのです。
そのため、建設業では、工期が決まっていることから残業が多くなりがちです。
理由2:人手が不足しているため
建設業の残業が多い理由の2つ目は、
です。
建設業については、「若者の建設業離れ」と「需要の拡大」により、人手が不足しています。
建設業については、賃金に見合わないきつい仕事であるとの印象が若者に浸透してしまっており、若者の就職者が減っているのです。
また、2008年のリーマンショックで一度需要が落ち込みましたが、2011年の東日本大震災以降緩やかに需要が回復しています。
そのため、建設業では、人手が不足していることから残業が多くなりがちです。
理由3:仕事の繁閑の差が大きいため
建設業の残業が多い理由の3つ目は、
です。
建設業については、一定の時期に工事が集中することがあるなど、業務量に繁閑の差がある場合があります。
そのため、工事が多い時期などは、残業が多くなりがちです。
理由4:顧客からの不規則な要望に対応する必要があるため
建設業の残業が多い理由の4つ目は、
です。
建設業については、顧客から細かい要望や難しい要望が出されることがあります。
このような要望の内容によっては対応に時間がかかることもあります。
そのため、建設業については、顧客から急な要望が出された場合などには、残業が多くなりがちです。
建設業の残業規制
残業については、「残業を命じることができるかどうかの問題」と「残業を命じることができる時間の上限の問題」があります。
建設業の場合には、前者は一般の労働者と同じですが、後者は一般の労働者と大きく異なります。
以下では、建設業の残業時間について、
・残業を命じるには36協定が必要
・働き方改革による残業上限の適用猶予
・2024年4月1日以降の災害の復旧・復興の事業の例外
の順で説明していきます。
残業を命じるには36協定が必要
まず、会社が労働者に対して、
です。
36協定(サブロク協定)とは、簡単に言うと、
です。
法律上、1日の労働時間、1週間の労働時間は以下のように決められています。
1週間40時間
労働基準法第32条(労働時間)
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」
しかし、会社は、例外的に
残業を命じても違法になりません。
労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
1「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。」
これは、一般の労働者であっても、建設業で働く労働者であっても同様です。
36協定については以下の記事で詳しく説明していますので読んでみてください。
働き方改革による残業上限の適用猶予
建設業に対しては、2024年3月31日まで、
されています。
一般の労働者に対しては、会社が36協定を締結している場合でも、
とされています。
働き方改革により、36協定で命じることができる残業時間について、以下のような限度時間が定められたためです。
労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
3「前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。」
4「前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。」
5「第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。」
しかし、建設業については、2024年3月31日までは、これらの限度時間の適用はされません。
つまり、建設業については、
のです。
労働基準法第139条
2「前項の規定にかかわらず、工作物の建設の事業その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている第三十六条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第二項第四号中『一箇月及び』とあるのは、『一日を超え三箇月以内の範囲で前項の協定をする使用者及び労働組合若しくは労働者の過半数を代表する者が定める期間並びに』とし、同条第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。」
2024年4月1日以降の災害の復旧・復興の事業の例外
建設業についても、一般の労働者の場合と同様、
されます。
会社が労働基準法上の労働時間規制に違反して、労働者に残業を命じた場合には、
に処される可能性があります。
「次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」
一「…第三十二条、…第三十五条…の規定に違反した者」
ただし、建設業の場合には、
は、時間外労働と休日労働の例外があります。
具体的には、災害の復旧・復興に関しては、以下の2つの規制は適用されません。
・月100時間未満の規制
・2~6か月平均80時間以内の規制
労働基準法第139条
1「工作物の建設の事業(災害時における復旧及び復興の事業に限る。)その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業に関する第三十六条の規定の適用については、当分の間、同条第五項中『時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)』とあるのは『時間』と、『同号』とあるのは『第二項第四号』とし、同条第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。」
建設業の残業時間を削減する方法
建設業の残業を削減する方法としては、以下の3つが考えられます。
・事務作業を効率化する
・会社に工期の見直しや人員の補充をお願いする
・不規則な要望を減らすために事前の確認を綿密に行う
事務作業を効率化する
建設業の残業を削減する方法の1つ目は、
ことです。
現場作業については、外部的な要因により計画通りに進まないことも多いため業務を効率化することが難しい側面があります。
これに対して、現場監督の方は、事務作業などを効率化することで、残業時間を減らす余地があります。
例えば、空いた時間に事務作業をすることや、反復して行うことの多い作業について時間を短縮する余地はないかなどを検討することが考えられます。
会社に工期の見直しや人員の補充をお願いする
建設業の残業を削減する方法の2つ目は、
ことです。
建設業の残業が多くなる原因として、無理な工期での受注や人員不足があります。これは会社の協力がなければ改善が難しい部分です。
そのため、会社に、著しく短い工期での受注を控えることや人手を増やしてほしいことを伝えてみましょう。
不規則な要望を減らすために事前の確認を綿密に行う
建設業の残業を削減する方法の3つ目は、
ことです。
建設業の残業が多くなる原因に顧客からの不規則な要望があります。
可能な限りこのような不規則な要望が出ることを防ぐために、事前に、顧客の方との間で綿密な確認を行っておきましょう。
顧客からの不規則な要望を完全になくすことは難しいでしょうが、事前にイメージを共有しておくことで、減らすことはできるはずです。
建設業でも残業代は請求できる!よくある会社の言い分4つ
建設業に従事している方でも、残業をすれば、当然、残業代をもらうことができます。
建設業の場合には、先ほど見たように残業時間の上限規制については適用が猶予されていますが、会社は残業をさせた場合には残業代を支払わなければならないためです。
しかし、建設業においては、サービス残業をさせられている方が多く、
にのぼります。
(出典:「平成30年度厚生労働省委託 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業 報告書(建設業に関する調査)」を加工して作成)
残業代を支払わないことについて、建設会社はよく以下のような言い分を述べることがあります。
・下請けは残業代を請求できないとの言い分
・みなし残業代を支払っているとの言い分
・変形労働時間制を採用しているとの言い分
・現場監督・施工管理技士は残業代を請求できないとの言い分
しかし、これらの会社の言い分は、どのような場合にも認められるわけではありません。以下、順番に説明していきます。
下請けは残業代を請求できないとの言い分
建設会社が残業代を支払わない言い分の1つ目は、
です。
確かに、雇用契約ではなく、請負契約の場合には、労働者に当たらず残業代を請求できない場合もあります。
しかし、会社と結んだ契約書に「請負契約」と記載されている場合であっても、労働者に当たるかは、実質的に判断されます。
つまり、契約書のタイトルだけ「請負契約」としていても、実際に働いている状況から、雇用契約に当たると判断してもらえる場合もあるのです。
具体的には、労働者に当たるかどうかは以下のような事情を考慮して判断します。
1 ①指揮監督関係の存在
⑴ 具体的な仕事の依頼、業務指示等に対する諾否の自由の有無
⑵ 業務遂行上の指揮監督関係の存否・内容
⑶ 時間的および場所的拘束性の有無・程度
⑷ 労務提供の代替性の有無
2 ②報酬の労務対償性
支払われる報酬の性格・額等
3 ③労働者性の判断を補強する要素
⑴ 業務用機材等機械・器具の負担関係
⑵ 専属性の程度
⑶ 服務規律の適用の有無
⑷ 公租公課の負担関係等
実際、仕事の進め方に関する一人親方に対する調査では、自分で「あまり決めることができない」「ほとんど決めることができない」との回答が16.9%にのぼっており、業務遂行方法に自由がない一人親方が少なからずいることが分かります。
(出典:「平成30年度厚生労働省委託 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業 報告書(建設業に関する調査)」を加工して作成)
また、他者に代わりに行わせることの可否に関する一人親方に対する調査では、「他者に代わり行わせることはできない」との回答が51.6%と半数以上にのぼっています。
(出典:「平成30年度厚生労働省委託 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業 報告書(建設業に関する調査)」を加工して作成)
そのため、会社と結んだ契約書に「請負契約」と記載されている場合であっても、例えば以下のような場合には、会社の言い分は認められない可能性があるのです。
☑仕事の依頼を断る自由がない
☑仕事の進め方を自分で決めることができない
☑始業時刻や終業時刻、勤務場所を厳格に管理されている
業務委託契約や請負契約の場合に、労働者に当たるかについては以下の記事で詳しく説明しています。
~建設業における労働者性を肯定した裁判例~
原告が会社に日々雇用されて業務に従事した旨を主張して残業代を請求したのに対して、会社が原告との関係は雇用ではなく請負契約であると反論したため争いとなった裁判例があります。
これについて、裁判所は、以下の事情を考慮して、原告は労働者に当たるとしました。
・本件業務が、パチンコ台等の機材を解体撤去する、道路使用許可申請を作成するといった特段専門的な技量を要する内容のものではないこと
・それら業務の遂行に当たって、原告は、会社の指示の下に、集合し、道具を与えられ、具体的な作業に当たっていたこと
以上より、原告は、会社に対して、残業代請求権があることが認められるとされています。
(参照:東京地判平成28.11.24労判ジャーナル59号16頁[丸相建設工業事件])
みなし残業代を支払っているとの言い分
建設会社が残業代を支払わない言い分の2つ目は、
です。
みなし残業代とは、実際に残業をするかどうかにかかわらず、一定の金額を残業代として支給するものです。
建設業のみなし残業代については、以下の3つのポイントがあります。
・雇用契約書や就業規則等の根拠が必要
・みなし残業代の金額が明確であることが必要
・みなし残業代が想定する時間を超えて残業をした場合には差額の支払いが必要
みなし残業代については以下の記事で詳しく説明しています。
雇用契約書や就業規則等の根拠が必要
みなし残業代を支払っているといえるためには、
です。
会社は、労働者の労働条件を勝手に決めることはできないためです。
例えば、会社が基本給の中にみなし残業代が含まれているとの考えているだけで、労働者にはそれを伝えていないような場合には、みなし残業代の支払いがされているとは認められません。
みなし残業代の金額が明確であることが必要
みなし残業代を支払っているといえるためには、
です。
みなし残業代の金額が分からなければ、十分な残業代が支払われているかどうかを判断することができないためです。
例えば、雇用契約書に「基本給(みなし残業代含む)」と記載されているだけでは、基本給の内いくらがみなし残業代なのかが分からないため。みなし残業代の支払いをしているとはいえません。
みなし残業代が想定する時間を超えて残業をした場合には差額の支払いが必要
みなし残業代を支払っている場合でも、
です。
みなし残業代は、会社の事務処理を簡便化して、労働者の賃金額を安定化させることを目的とするものであり、「一定の金額で何時間でも残業を命じることができるという制度ではない」ためです。
例えば、会社が労働者に対して、残業30時間分のみなし残業代を支給している場合には、労働者が30時間を超えて残業をした場合には、その差額を支払う必要があります。
変形労働時間制を採用しているとの言い分
建設会社が残業代を支払わない言い分の3つ目は、
です。
変形労働時間制とは、あらかじめ法定労働時間を超えて労働させることができる日や週を定めておき、一定期間において平均して週の法定労働時間を超えなければ、残業代は発生しないとする制度です。
例えば、以下のように、8時間を超えて労働する日があっても、残業にならないことになります。
ただし、変形労働時間制でも、以下の場合に残業時間となります。
①あらかじめ法定労働時間を超えて労働させる旨を定めた日や週においては、その定めた時間を超えて労働した場合
②あらかじめ法定労働時間を超えて労働させる旨を定めていない日や週においては、法定労働時間を超えて労働した時間
③変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間
そのため、変形労働時間性の下でも、残業をすれば残業代をもらうことができるのです。
変形労働時間性の詳細については以下の記事で説明しています。
現場監督・施工管理技士は残業代を請求できないとの言い分
建設会社が残業代を支払わない言い分の4つ目は、
です。
つまり、これは「現場監督・施工管理技士」が労働基準法上の「管理監督者」に当たるため残業代を請求できないと主張するものです。
「管理監督者」の方は、時間外残業や休日残業をしても残業代を請求できません。
しかし、「現場監督・施工管理技士」であっても、当然に「管理監督者」に当たるわけではありません。
「管理監督者」に該当するのは、以下の条件を満たす方で、特に限定的に考えられています。
・経営者との一体性
・労働時間の裁量
・対価の正当性
会社から管理職と扱われている多くの方は、実際には「名ばかり管理職」であるというのが実情です。
管理職の残業代については詳しくは以下の記事で説明していますので読んでみてください。
建設業でよくある実は残業代を請求できる時間3つ
建設業において、始業時刻前や終業時刻後に行った業務についても、残業時間に含めてもらえていますか?
実は、以下の時間についても、残業代を請求できる可能性があります。
・始業時刻前の早出時間
・終業時刻後に顧客から急な要望があり対応した時間
・終業時刻後に事務書類を作成した時間
これらの時間についても、しっかり残業時間に含めてもらえているかどうか確認してみましょう。
始業時刻前の早出時間
実は残業代を請求できる時間の1つ目は、
です。
早出時間については、会社からの指示により始業時刻前に出勤している場合には、労働時間に該当します。
そのため、始業時刻前から業務を始めたことにより1日の労働時間が8時間又は会社で決められた所定労働時間のいずれかを超えた場合には、残業代をもらえることになります。
ただし、会社からの指示がなく、遅刻しないように早く出勤しただけで、始業時刻まで特に業務を行っていないような場合には労働時間に該当しないで注意が必要です。
早出残業については以下の記事で詳しく説明しています。
終業時刻後に顧客から急な要望があり対応した時間
実は残業代を請求できる時間の2つ目は、
です。
突発的に生じた業務についても労働時間に該当します。
そのため、終業時刻後に対応した時間などについても、労働時間に含めてもらいましょう。
終業時刻後に事務書類を作成した時間
実は残業代を請求できる時間の3つ目は、
です。
建設業の方の業務は現場業務だけではありません。
事務書類の作成や報告書の作成も、当然労働時間に当たります。
会社によっては、書類の作成は業務時間外に行うようになどの指示をすることがありますが、これを労働時間に含めないことは許されません。
そのため、終業時刻後に事務書類を作成した時間についても、労働時間に含めてもらいましょう。
建設業の残業代の計算方法
建設業の残業代は以下の方法により計算します。
基礎賃金とは、残業代の計算の基礎となる賃金です。家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く賃金の合計額です。
所定労働時間とは、会社が決めた労働時間のことで、基礎賃金を1時間あたりの賃金に引き直すものです。
割増率は、法定時間外残業は1.25倍、法定休日残業は1.35倍、深夜残業は0.25倍です。
残業時間は、法定時間外や法定休日、深夜に働いた時間です。
例えば、1か月の法定時間外残業が100時間、所定労働時間が160時間、月給が30万円の方ですと、1か月あたり、
=23万4375円
の残業代が発生することになります。
残業代の時効期間は2年ですから(2020年4月1日以降に発生するものは3年)、2年分を基準にすると、
=562万5000円
となります。
残業代の計算方法については以下の記事で詳しく説明しています。
建設業の方の残業代請求は弁護士に依頼すべき
残業代請求をする場合には、弁護士に依頼することを強くおすすめします。
その理由は、以下の3つです。
①煩雑な手続きを丸投げできる!
②正当な残業代を回収できる可能性が高まる!
③会社と直接やりとりをせずに済む!
煩雑な手続きを丸投げできる!
弁護士に依頼すれば、
することができます。
残業代を請求する場合には、以下の作業が必要になります。
・証拠の収集
・残業代の計算
・交渉や裁判手続
例えば、残業代請求については、2年分を請求しようとすると700日以上の残業時間を計算したうえで、その他の労働条件についても正確に把握する必要があり、慣れていないと大きな負担となります。
交渉や裁判も専門性の高い手続きであり、自分自身で行う場合の負担は大きなものです。
そのため、残業代を請求する場合には、弁護士に依頼して、これらの手続き丸投げしてしまうことがおすすめなのです。
正当な残業代を回収できる可能性が高まる
弁護士に依頼すれば、
というメリットがあります。
建設業の残業代請求については、先ほど見たように、以下のような言い分が会社から主張されます。
・下請けは残業代を請求できないとの言い分
・みなし残業代を支払っているとの言い分
・変形労働時間制を採用しているとの言い分
・現場監督・施工管理技士は残業代を請求できないとの言い分
このような場合に、正当な残業代を取り戻すためには、法律や裁判例に基づいて、説得的に主張を行う必要があります。
また、場合によっては、裁判手続きなどの法的な手続きを進める必要が出る場合もあります。
そのため、より正当な残業代を回収できる可能性を高めるためには、法律の専門家である弁護士に依頼することがおすすめです。
会社と直接やりとりをせずに済む!
弁護士に依頼すれば、あなたは
残業代の請求をすることができます。
会社の上司や社長との間で、残業を払ってほしいと直接やりとりをすることに心理的な抵抗やストレスとを感じてしまう方もいますよね。
弁護士に依頼すれば、このようなやり取りは全て弁護士が行いますので、あなたは会社と直接残業代についてやり取りをする必要はありません。
労働審判などの手続きを取れば、場合によっては、数時間程度、会社との方と同席する必要が生じる可能性もありますが、その場合でも、裁判官や弁護士が同席しています。
そのため、会社とのやり取りに抵抗やストレスを感じる場合には、弁護士に依頼してしまうことがおすすめです。
まとめ
以上のとおり、今回は、建設業で働いている方が知っておくべき残業規制に関するルールや正しい残業代の計算方法を簡単に解説しました。
この記事の要点をまとめると以下のとおりです。
・建設業において残業を命じる場合には36協定が必要です。
・建設業については、2024年3月31日まで残業上限の適用は猶予されています。2024年4月1日以降は、建設業にも残業上限が適用されますが、災害の復旧・復興の事業の例外があります。
・建設業の場合でも、残業をすれば残業代をもらうことができます。
・建設会社は、残業代を支払わないことについて、①下請けは残業代が請求できないとの言い分、②みなし残業代を支払っているとの言い分、③変形労働時間制を採用しているとの言い分、④現場監督・施工管理技士は残業代を請求できないとの言い分等を述べることがありますが、これらの言い分は、認められない場合も多いので鵜吞みにせず正当性を確認しましょう。
この記事が残業に悩んでいる建設業に従事している方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。