労働災害

労働災害における障害(補償)給付-うつ病と後遺症の判断方法-

 労働災害におけるうつ病について、後遺症は認められるのでしょうか。また、どのような症状につきどのような給付がされるのでしょうか。今回は、労働災害における障害(補償)給付について解説します。

障害(補償)給付とは

 障害(補償)給付とは、業務または通勤が原因となった負傷や疾病が治ったとき、身体に一定の障害が残った場合に支給されるものです。給付の種類は以下のとおりです。

【障害等級第1級から第7級に該当するとき】
→障害(補償)年金、障害特別支給年金、障害特別年金
【障害等級第8級から第14級に該当するとき】
→障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金

労働者災害補償保険法15条(障害補償給付)
1項「障害補償給付は、厚生労働省令で定める障害等級に応じ、障害補償年金又は障害補償一時金とする。」
2項「障害補償年金又は障害補償一時金の額は、それぞれ、別表第一又は別表第二に規定する額とする。」
労働者災害補償保険法15条の2(障害補償年金)
「障害補償年金を受ける労働者の当該障害の程度に変更があつたため、新たに別表第一又は別表第二中の他の障害等級に該当するに至つた場合には、政府は、厚生労働省令で定めるところにより、新たに該当するに至つた障害等級に応ずる障害補償年金又は障害補償一時金を支給するものとし、その後は、従前の障害補償年金は、支給しない。」
労働者災害補償保険法22条の3(障害給付)
1項「障害給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかり、なおつたとき身体に障害が存する場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。」
2項「障害給付は、第15条第1項の厚生労働省令で定める障害等級に応じ、障害年金又は障害一時金とする。」
3項「第15条第2項及び第15条の2並びに別表第1(障害補償年金に係る部分に限る。)及び別表第2(障害補償一時金に係る部分に限る、)の規定は、障害給付について準用する。この場合において、これらの規定中『障害補償年金』とあるのは『障害年金』と、『障害補償一時金』とあるのは『障害一時金』と読み替えるものとする。」

うつ病と後遺障害

 「抑うつ状態」等の精神症状が認められるものについて、日常生活や通勤・勤務時間の遵守、対人関係・協調性等の8つの能力の障害の程度に応じ、原則として9級、12級、14級の3段階で障害等級が認定されることがあります。
 各等級の例については、以下のとおりです。

9級の例
・「対人業務につけないもの」
・「出勤することはできるが、家族等が促さなければ始業時刻に送れることが常態的である場合」
12級の例
・「職種制限は認められないが、就労に当たりかなりの配慮が必要であるもの」
14級の例
・「職種制限は認められないが、就労に当たり多少の配慮が必要であるもの」
・「通常は出勤時間に遅れることなく自発的に出勤できるが、時には遅れることがある場合」

厚生労働省:神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について

厚生労働省:神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について リーフレット

給付の内容・金額

第1級~第7級

第8級~第14級

 給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、傷病発生日の直前の賃金締切日)の直前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金です。
 算定基礎日額」とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間に、その労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った額です。特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。

受給方法

 障害(補償)給付を請求するときは、所轄の労働基準監督署に「障害補償給付支給請求書(様式第10号)」をまたは「障害給付支給請求書(様式第16号の7)」を提出する必要があります。
 診断書料を請求する場合は、「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」または「療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)」を、併せて提出する必要があります。
 特別支給金の支給申請は、原則として障害(補償)給付の請求と同時に行うこととなっており、様式も同一です。

厚生労働省:障害(補償)給付の請求手続 リーフレット

請求に関する時効

 「障害(補償)給付」は、傷病が治った日の翌日から5年を経過すると、時効により請求権が消滅します。

労働者災害補償保険42条(時効)
「療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、2年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、5年を経過したときは、時効によって消滅する。」

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日
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