働いていた会社を突如として退職することになった場合、仕事が見つかるまでの生活はどのようにすればよいのでしょうか。今回は、雇用保険の種類や受給の方法、離職理由と給付日数の関係などを解説します。
目次
雇用保険とは
「雇用保険」とは、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする保険です(雇用保険法1条)。
給付の種類
総論
「失業等給付」は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付をいいます(雇用保険法10条1項柱書)。
求職者給付
「求職者給付」は、次のとおりとされています(雇用保険法10条2項)。
①基本手当
一般被保険者が失業し、一定の受給要件を満たした場合に、失業している日について支給される手当です。一般的に、失業手当、失業保険などと呼ばれるものです。
②技能習得手当
公共職業安定所の指示により職業訓練を受けたときに、その期間支給される手当です。
③寄宿舎手当
職業訓練を受けるために、同居家族と別居して寄宿する場合に支給される手当です。
④傷病手当
受給資格者が、求職の申し込み後、15日以上引き続いて傷病のために就労できない場合、基本手当の支給を受けることができない日について、基本手当の日額に相当する額が、所定給付日数の範囲内で支給される手当です。
就業促進給付
就業促進給付とは、基本手当を受給している場合、再就職が決まり一定の要件を満たしたときに、支給されるもので、①就業手当、②再就職手当、③常用就職支度手当、④就業促進定着手当があります。
教育訓練給付金
教育訓練給付金とは、一定の雇用保険の被保険者又は被保険者であったものが厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を終了した場合には、その受講料の一定の割合が支給されるものです。
雇用継続給付
雇用継続給付とは、雇用を継続している被保険者に、一定の理由がある場合、支給されるもので、①高年齢雇用継続給付、②育児休業給付、③介護休業給付があります。
失業手当の受給の手続
失業手当の受給は、以下の流れで手続きが進んでいきます。
①離職
「離職」とは、被保険者について、事業主との雇用関係が終了することをいいます(雇用保険法4条2項)。
②事業主による離職手続
事業主は、雇用保険被保険者資格喪失届や離職証明書などを被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に、会社の所在地を管轄するハローワークに提出しなければならないとされています(雇用保険法7条、雇用保険法施行規則7条)。
③離職票の交付
ハローワークが離職票を作成し、事業主に交付し、事業主が離職者に渡します。
④休職の申込み及び受給資格決定
離職者が、自己の居住地を管轄するハローワークに、求職の申し込みをして、離職票を提出すると、受給資格の決定がなされます(雇用保険法15条2項、3項、同法施行規則19条)。
⑤待機期間及び雇用保険説明会
失業手当は、受給資格者が、ハローワークに求職の申込みをした日以後において、失業している日が通算して7日に満たない間は支給しないとされてます(雇用保険法21条、待期期間)。
求職申込後2~3週間後に雇用保険説明会が行われます。
⑥給付制限
正当な理由がなく自己の都合により退職した場合、又は自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合は、待機期間終了後、3か月間の給付制限があります(雇用保険法33条1項)。
⑦失業の認定
ハローワークの長は、離職票の提出を受けたときは、受給資格の規定に該当すると認めたときは、失業の認定日を定めその者に知らせるとともに、雇用保険受給資格者証に必要な事項を記載した上、交付しなければなりません(雇用保険法施行規則19条3項)。
⑧失業手当の支給
1回目の失業認定日から5~7日後に、指定口座に基本手当が振り込まれます。その後は、4週間に1度ハローワークへ行き、失業の認定を受け、その度、5~7日後に基本手当が振り込まれることになります。
失業手当の受給資格
失業手当は、離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上ある場合に受給できます(雇用保険法13条1項)。
ただし、後述する特定理由職者及び特定受給資格者については、離職日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算6か月以上であることが必要とされています(雇用保険法13条2項)。
なお、離職日以前2年間(特定の場合には1年間)に疾病、負傷、事業所の休業、出産、事業所の命による外国における勤務等により、引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかった期間があるときは、その期間が、2年間(特定の場合には1年間)に加算されます。もっとも、加算により4年を超えるときは4年が上限となります(雇用保険法13条1項)。
失業手当の金額
失業手当は日額で支給されます。
失業手当は、以下のように算定されます(雇用保険法16条、17条1項)。
賃金日額は、最後の6か月間に支払われた賃金総額(臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)÷180日により求められます。
給付率は、60歳未満の場合には50%~80%、60歳以上65歳未満の場合には45%~80%です。
ただし、次の例外があります。
1 最低保証額
失業手当が、雇用保険法17条2項が定める最低保証額に満たない場合には、最低保証額が賃金日額になります。
2 賃金日額の特例
賃金日額を算定することが困難であるとき、又はこれらの規定により算定した額を賃金日額とすることが適当でないと認められるときは、厚生労働大臣が定めるところにより算定した額が賃金日額となります(雇用保険法17条3項)。
失業手当給付日数
一般の離職者
一般の離職者とは、自己都合や定年で退職した場合です。
これらの者は、雇用保険の加入期間により、失業手当の給付日数が決まります(雇用保険法22条1項)。
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
90日 | 120日 | 150日 |
なお、障害者等の就職困難者については、例外が定められています(雇用保険法22条2項)。
特定受給資格者・一部の特定理由離職者
特定受給資格者とは、会社の倒産、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)等により退職した場合です(雇用保険法23条2項)。
特定理由離職者とは、期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと、その他やむを得ない理由により退職した場合です(雇用保険法13条3項)。
特定受給資格者と一部の特定理由離職者は、雇用保険の加入期間と退職した時の年齢により、失業手当の給付日数が判断されることになり、一般の離職者に比して優遇されています(雇用保険法23条1項)。
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
限度日数
失業手当については、原則として離職日の翌日から1年以内の失業している日が受給期間となります(雇用保険法20条1項1号)。そのため、受給期間が経過した場合には、それ以降は、給付日数が残っていても、失業手当は支給されません。退職した場合は、この限度日数を意識した上で早めに失業手当の申請をすることが重要となります。
ただし、病気やケガ等により職業に就くことができない期間がある場合、離職が60歳以上の定年に達したこと等の理由によるものである場合には、受給期間が延長されることがあります(雇用保険法20条)。