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変形労働時間制が違法無効となるケース5つ!悪用された場合の対処法

変形労働時間制が違法無効となるケース5つ!悪用された場合の対処法
悩み

変形労働時間制が違法でないか悩んでいませんか

不規則なシフトになってしまい、1日長時間働いても、あまり残業代を支払ってもらえないと不満に思いますよね。

変形労働時間制には、厳格な条件がありますので、これらを満たしていない場合には違法無効となる可能性があります

例えば、変形労働時間制が違法無効となるケースとしては、以下の5つがあります。

ケース1:事前にシフトが決められていない
ケース2:労働パターン・組み合わせの法則・作成手続が規定されていない
ケース3:変形労働時間制の総枠を超えている
ケース4:業務の都合により任意にシフトが変更される
ケース5:就業規則や労使協定への定めがない

実は、変形労働時間制の制度は複雑であり、法律上の条件をすべて満たしたうえで、正しく運用できている会社は多くありません

私が日々たくさんの残業代の相談を受ける中でも、会社から変形労働時間制度だと言われてしまったとの話を聞く機会はありますが、条件を満たしておらず違法無効と感じることが多いです。

企業によっては、規則や契約書に変形労働時間制と記載するだけで、手続を守らずに、残業代を支払わない方便として、変形労働時間制という言葉を出してくることもあるのです。

もしも、変形労働時間制が違法無効である場合には、あなたは3年の時効にかかっていない範囲で遡って残業代を取り戻すことができる可能性があります

この記事をとおして、変形労働時間制がどのような場合に違法になるのかについて正しく知っていただき、変形労働時間制が悪用されることを防ぐことができれば幸いです。

今回は、変形労働時間制が違法無効となるケース5つを紹介したうえで、悪用された場合の対処法について、分かりやすく解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事で分かる事

この記事を読めば、違法な変形労働時間制がとられている場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。

 

 

 

目次

変形労働時間制が違法無効となる5つのケース

変形労働時間制には、一定の場合には、違法無効となる可能性があります

なぜなら、法律が厳格な条件を定めているためです。

例えば、変形労働時間制が違法無効となるケースとしては、以下の5つがあります。

ケース1:事前にシフトが決められていない
ケース2:労働パターン・組み合わせの法則・作成手続が規定されていない
ケース3:変形労働時間制の総枠を超えている
ケース4:会社から任意にシフトが変更される
ケース5:就業規則や労使協定への定めがない

変形労働時間制が違法無効となる5つのケース以下では、それぞれのケースについて順番に説明していきます。

ケース1:事前にシフトが決められていない

変形労働時間制が違法無効となるケースの1つ目は、事前(変形期間開始前)にシフトが決められていない場合です。

法律上、変形労働時間制のもとにおいて、法定労働時間を超えることができるのは、「特定された週」及び「特定された日」とされているためです。

例えば、変形期間中の各日の始業・終業時刻を就業規則に明示するなどして、所定労働時間を特定しておく必要があります。

ただし、業務の実態から就業規則作成段階で始業時刻と終業時刻を決めることが難しい場合には、変形期間開始前までに勤務割表を作成することでも足りるとされています

ケース2:労働パターン・組み合わせの法則・作成周知手続が規定されていない

変形労働時間制が違法無効となるケースの2つ目は、労働パターン・組み合わせの法則・作成周知手続が規定されていない場合です。

就業規則により事前に始業時刻と終業時刻を明示するのではなく、勤務割表によりシフトを決める場合には、労働者の予測可能性を担保する必要があります

具体的には、勤務割は、就業規則において、労働パターンを設定し、その勤務の組み合わせの考え方、勤務割表の作成手続や周知方法等を定め、これに従って決めなければなりません。

多くの会社では、労働パターンや組み合わせの考え方、勤務割の作成手続きや周知方法を定めることなく、会社の裁量のみでシフトが組まれる状況が横行しています

そのため、当該ケースに該当し変形労働時間制が無効となることも多いのです。

ケース3:変形労働時間制の法定労働時間の総枠を超えている

変形労働時間制が違法無効となるケースの3つ目は、変形労働時間制の総枠を超えている場合です。

変形労働時間制では、変形期間内を平均し1週間当たりの労働時間が週40時間の法定労働時間を超えないことが必要となります

具体的には、変形労働時間制における法定労働時間の総枠は以下のとおりとなります。

【1か月単位の変形労働時間制】
1ヶ月単位の変形労働時間制の総枠

【1年単位の変形労働時間制】
1年単位の変形労働時間制の総枠例えば、勤務割表において、上記の法定労働時間の総枠を超えるようなシフトが組まれていた場合には、違法無効となります

また、勤務割表において、総枠を超える部分が残業となることを明示している場合であっても、同様です。

ケース4:会社から任意にシフトが変更される

変形労働時間制が違法無効となるケースの4つ目は、会社から任意にシフトが変更されることです。

会社が任意に勤務を変更しうると解釈されるような条項では、法定労働時間を超えることができる週及び日が特定されておらず、無効とされています

労働者から見てどのような場合に勤務変更されるかを予測できないためです。

例えば、「ただし、業務上の必要がある場合は、指定した勤務を変更する。」とだけの一般的抽象的な規定は、違法無効となる可能性があります。

ケース5:就業規則や労使協定への定めがない

変形労働時間制が違法無効となるケースの5つ目は、就業規則や労使協定の定めがない場合です。

1ヶ月単位の変形労働時間制については、労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより定めることが必要です。

1年単位の変形労働時間制については、労使協定で書面を作成し、これを締結する必要があるとされています。

1週間単位の変形労働時間制については、労使協定で書面を作成し、これを締結する必要があるとされています。

厳選!変形労働時間制を無効とした重要判例3つ

変形労働時間制については、その有効性が争いになり無効とされた判例があります。

重要なものを3つ厳選すると以下のとおりです。

判例1:盛岡地判平成13年2月16日労働判例810号15頁[岩手第一事件]
判例2:広島高裁平成14年6月25日労判835号43頁[JR西日本(広島支社事件)]
判例3:長崎地判令和3年2月26日労働判例1241号16頁[ダイレックス事件]

変形労働時間制を違法とした裁判例3つ

それでは各判例について順番に説明していきます。

判例1:盛岡地判平成13年2月16日労働判例810号15頁[岩手第一事件]

当該裁判例は、就業規則の定めが「特定された週」「特定された日」の要件を満たすためには、勤務割が労働パターンの組み合わせのみによって決まることとすることに加えて、その組み合わせの法則や勤務割表の作成手続についても定めておくことを要するとしました。

就業規則上、変形期間の法定労働時間を超えないように勤務割表を作成すること、季節や業務の都合により始業・終業時刻を変更し、一定期間内の特定の日・週の労働時間を延長、短縮することがある旨を定めた事案において、以下のとおり判示して違法無効としています。

「少なくとも就業規則上、始業時刻、終業時刻を異にするいくつかの労働パターンを設定し、勤務割がその組合せのみによって決まるようにし、またその組合せの法則、勤務割表の作成手続や周知方法等を定めておくことが求められているものというべきであって、法定労働時間を超える日及び週をいつとするのか、またその日、週に何時間の労働をさせるのかについて、使用者が全く無制限に決定できるような内容となっている就業規則の定めは、同条が求める『特定された週』又は『特定された日』の要件に欠ける違法、無効なものであるというべきである。」

判例2:広島高裁平成14年6月25日労判835号43頁[JR西日本(広島支社事件)]

当該裁判例は、使用者が任意に勤務変更しうると解釈しうるような条項では「特定」の要件を満たさないとしました。

以下のとおり判示されています。

「勤務変更が、勤務時間の延長、休養時間の短縮及びそれに伴う生活設計の変更等により労働者の生活利益に対して少なからぬ影響を与えることが多いのは確かであるから、使用者は、勤務変更をなし得る旨の変更条項を就業規則で定めるに際し、同条が『特定』を要求した趣旨を没却せぬよう、当該変更規定において、勤務変更が勤務指定前に予見できなかった業務の必要上やむを得ない事由に基づく場合のみに限定して認められる例外的措置であることを明示すべきであり、のみならず、労働者の生活利益に対する十分な配慮の必要性からすれば、労働者から見てどのような場合に勤務変更が行われるかを予測することが可能な程度に変更事由を具体的に定めることが必要であるというべきであって、使用者が任意に勤務変更しうると解釈しうるような条項では、同条の要求する『特定』の要件を充たさないものとして無効であるというべきである。」
「上記争いのない事実等のとおり、被告就業規則五五条一項ただし書は、『ただし、業務上の必要がある場合は、指定した勤務を変更する。』と規定するだけの一般的抽象的な規定となっているのであり、その解釈いかんによっては、被告が業務上の必要さえあればほとんど任意に勤務変更をなすことも許容される余地があり、労働者にとって、いかなる場合に勤務変更命令が発せられるかを同条項から予測することは、著しく困難であるといわざるを得ない。」
「よって、同条項の勤務変更規定は、労基法三二条の二で法が要求する勤務時間の『特定』の要件を充たさないものとして、その効力は認められないと解するのが相当である。」

判例3:長崎地判令和3年2月26日労働判例1241号16頁[ダイレックス事件]

当該裁判例は、所定労働時間に加えて残業時間も加算されて勤務割が作成されていた事案において、変形労働時間制の総枠を超えるとしました。

稼働計画表上、あらかじめ1か月の所定労働時間に加えて、月30時間分の残業時間が加算されて定められていた事案について、以下のとおり判示して、変形労働時間制の総枠を超えるものとして違法無効としています

「変形労働時間制が有効であるためには、変形期間である1か月の平均労働時間が1週間当たり40時間以内でなければならない(労働基準法32条の2第1項、32条1項)。1か月の暦日数が31日の場合の労働時間は177.1時間である。…」
「そうであるのに、被告の稼働計画表では、原告の労働時間は、1か月の所定労働時間(1か月の暦日数が31日の場合は177時間などとされる。)にあらかじめ30時間が加算(1か月の暦日数が31日の場合は207時間など)されて定められているのであるから…、1か月の平均労働時間が1週間当たり40時間以内でなければならないとする法の定めを満たさない。」
「したがって、被告の定める変形労働時間制は無効であるから、本件において適用されない。」

 

 

 

違法な変形労働時間制の罰則

変形労働時間制が違法無効となる場合には、それに伴い、会社側に罰則が科される可能性があります

例えば、以下の2つの罰則が想定されます。

罰則1:36協定がない又は36協定に違反する場合
罰則2:残業代が未払いの場合

それではこれらの罰則について順番に説明していきます。

罰則1:36協定がない又は36協定に違反する場合

36協定がない又は36協定に違反する場合には、変形労働時間制が違法無効となると、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されることになります。

労働基準法32条の法定労働時間に関する規制に違反することになるためです。

36協定があれば例外的に法定労働時間を越せて労働を命じても違法とはなりませんが、36協定がなかったり、36協定に違反したりした場合には、違法となります。

労働基準法第32条(労働時間)
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」

労働基準法第109条
「次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」
一「…第三十二条…の規定に違反した者」

罰則2:残業代が未払いの場合

変形労働時間制が違法無効となった場合において、残業代の未払いがあると、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されることになります。

労働基準法37条の割増賃金に関する規制に違反することになるためです。

変形労働時間制が違法無効となる場合には、法定労働時間を超える時間も変わることになるため、支払わなければならない残業代も増えることが多いです。

そのため、従前支払っていた残業代では不足することになり、残業代の未払いが生じることになるのです。

労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1「使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」

労働基準法第109条
「次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」
一「…第三十七条…の規定に違反した者」

会社が変形労働時間制を悪用する手口

会社によっては、変形労働時間制を、残業代を支払わないための方便として悪用するケースがあります

変形労働時間制とは、あらかじめ法定労働時間を超えて労働させることができる日や週を定めておき、一定期間において平均して週の法定労働時間を超えなければ、残業代は発生しないとする制度です。

会社には、業務が忙しい時期と忙しくない時期の差が大きい場合があります。このような業務の忙しさに応じて、労働時間を配分することを可能にしているのです。

変形労働時間制の例

変形労働時間制とはどのような制度かについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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もっとも、変形労働時間制を採用することにより、労働者の生活設計が不安定になるため、このような悪影響を防止するために法律上は厳格な条件が定められています。

変形労働時間制を悪用する会社は、残業代を節約するという観点だけを強調し、労働者の生活設計へ悪影響が生じないようにとの配慮を怠るケースが散見されます

例えば、就業規則や雇用契約書に「変形労働時間制」との記載をしているだけで、実際は何ら法律上の手続きを履践していないのに、残業代の支払いを拒まれることがあります。

このような手口については、毅然とした態度で対応していく必要があります。

 

 

 

変形労働時間制が違法無効な場合の対処法

変形労働時間制が違法無効な場合には、3年の時効にかかっていない範囲で遡って残業代を取り戻すことができる可能性があります

なぜなら、変形労働時間制が違法無効となれば、法定労働時間を超えることができるものと特定していた週及び日についても、法定労働時間を超えていれば残業をしていたことになるためです。

具体的には、以下のような手順により残業代を請求していきます。

STEP1:通知の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判
STEP5:訴訟

STEP1:通知の送付

残業代を請求するためには、内容証明郵便により、会社に通知書を送付することになります。

理由は以下の2つです。

・時効を一時的に止めるため
・資料の開示を請求するため

具体的には、以下のような通知書を送付することが多いです。

御通知(残業代請求:時効3年)※御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。

STEP2:残業代の計算

会社から資料が開示されたら、それをもとに残業代を計算することになります。

残業代の計算方法については、先ほど説明したとおりです。

STEP3:交渉

残業代の金額を計算したら、その金額を支払うように会社との間で交渉することになります。

交渉を行う方法については、文書でやり取りする方法、電話でやり取りする方法、直接会って話をする方法など様々です。相手方の対応等を踏まえて、どの方法が適切かを判断することになります。

残業代の計算方法や金額を会社に伝えると、会社から回答があり、争点が明確になりますので、折り合いがつくかどうかを協議することになります。

STEP4:労働審判

話し合いでの解決が難しい場合には、労働審判などの裁判所を用いた手続きを検討することになります。

労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。

労働審判を経ずに訴訟を申し立てることもできます。

労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

STEP5:訴訟

交渉や労働審判での解決が難しい場合には、最終的に、訴訟を申し立てることになります。

訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。

残業代の請求方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

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【補足】よくある変形労働時間制と違法性に関する疑問3つ

変形労働時間制の違法性については、以下のような質問がされることがあります。

疑問1:変形労働時間制が有効な場合に残業代支払わないのは違法?
疑問2:変形労働時間制で7連勤(週休)は違法?
疑問3:残業のある会社が変形労働時間制を導入しないのは違法?

これらの疑問をについて順番に解消していきましょう。

質問1:変形労働時間制が有効な場合に残業代支払わないのは違法?

変形労働時間制が有効でも、以下の場合には残業代は発生します。

①法定労働時間を超える時間が定められた日や週においてその時間を超えた場合
②法定労働時間を超えない時間が定められた日や週において法定労働時間を超えた場合
③変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した場合

そのため、これらの場合には残業代を支払う必要があります。

質問2:変形労働時間制で7連勤(週休)は違法?

変形労働時間制のもとにおいては、1週に1日の休日を与えなければならないという法定休日の規定は適用されます。

そのため、変形労働時間制のもとにおいても、以下のいずれかに該当しない限り7連勤は違法となります。

例外1:4週4休の変形休日制度を採用している場合
例外2:36協定により休日労働を可能にしている場合[休日残業代は発生します]

質問3:残業のある会社が変形労働時間制を導入しないのは違法?

残業のある会社が変形労働時間制を導入していなくても、直ちに違法とはなりません

なぜなら、36協定を締結することで、法定の労働時間を超えて労働を命じることが可能となるためです。

 

 

 

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まとめ

以上のとおり、今回は、変形労働時間制が違法無効となるケース5つを紹介したうえで、悪用された場合の対処法について、分かりやすく解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・変形労働時間制が違法無効となるケースとしては、以下の5つがあります。
ケース1:事前にシフトが決められていない
ケース2:労働パターン・組み合わせの法則・作成手続が規定されていない
ケース3:変形労働時間制の総枠を超えている
ケース4:会社から任意にシフトが変更される
ケース5:就業規則や労使協定への定めがない

・変形労働時間制を無効とした判例を3つ厳選すると以下のとおりです。
年月日 概要 結論
1 盛岡地判平成13年2月16日労働判例810号15頁[岩手第一事件] 勤務割が労働パターンの組み合わせのみによって決まることとすることに加えて、その組み合わせの法則や勤務割表の作成手続についても定めておかなければ「特定」の要件を満たさないとしている。 無効
2 広島高裁平成14年6月25日労判835号43頁[JR西日本(広島支社事件)] 使用者が任意に勤務変更しうると解釈しうるような条項では「特定」の要件を満たさないとしている。 (勤務変更規定は)
無効
3 長崎地判令和3年2月26日労働判例1241号16頁[ダイレックス事件] 所定労働時間に加えて残業時間も加算されて勤務割が作成されていた事案において、変形労働時間制の総枠を超えるとしました。 無効

・変形労働時間制が違法無効となり、36協定がなかったり、残業代の未払いが生じたりする場合には、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される可能性があります。

・会社によっては、変形労働時間制を、残業代を支払わないための方便として悪用するケースがあります。

・変形労働時間制が違法無効な場合には、3年の時効にかかっていない範囲で遡って残業代を取り戻すことができる可能性があります。

この記事が変形労働時間制が違法ではないか悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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