会社から解雇通知書を交付してもらえず悩んでいませんか。また、会社から解雇通知書を交付されたものの対処法が分からず困っていませんか。
会社が口頭で解雇すると述べるのみで解雇通知書をもらえない場合には、代わりに会社の主張する退職事由(解雇の事実・種類)や使用期間(解雇日)を記載した証明書を交付するように請求するべきです。
会社から解雇通知書を交付された場合には、以下の3つのことをやるべきです。
①解雇日と解雇事由を確認する
②解雇理由証明書を請求する
③解雇の撤回と業務指示を求める
会社から解雇通知書を交付されても、その
なことがあります。
むしろ、解雇が認められるには非常に高いハードルがあります。実際に、我が国で行われている解雇の多くは不当なものです。
そのため、解雇通知書を渡されても、すぐにあきらめる必要はありません。適切に対処することで、あなたの権利を認めてもらえる可能性があります。
解雇が不当な場合には、解雇された後の給料や慰謝料を請求できる可能性があり、和解が成立する場合には解決金を獲得できる可能性があります。
この記事では、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、解雇通知書の意味やあなたが今何をするべきかが分かるはずですよ。
目次
解雇通知書とは
解雇通知書とは、会社が労働者に対して解雇の意思表示を通知する書面をいいます。
解雇通知書は、会社が労働者を一方的に退職させる場合に交付されます。労働者の意思により退職する場合には、退職届や退職願、退職合意書が作成されることになります。
以下では、
・解雇通知書の種類
・解雇理由証明書との違い
について説明します。
解雇通知書の種類
解雇通知書は以下の2種類に分類できます。
・解雇予告通知書
・即時解雇通知書
順に説明します。
解雇予告通知書
解雇予告通知書とは、解雇日前に解雇をすることを予告する通知書をいいます。
会社は、解雇をする場合には、労働者に対して、30日以上前にその予告をしなければなりません。
即時解雇通知書
即時解雇通知書とは、解雇の予告をせずに即時に解雇を言い渡す通知書です。
会社は、以下のような場合には、解雇予告をせずに労働者を解雇することができます。
・解雇予告手当として30日以上の平均賃金を支払った場合
・やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合
・労働者の責めに帰すべき事由がある場合
そのため、このような場合には、即時解雇通知書を交付されることがあります。
例えば、即時解雇通知書として交付されるのは以下のような書面です。
解雇予告については以下の記事で詳しく説明しています。
解雇通知書と解雇理由証明書の違い
解雇通知書と解雇理由証明書は違う書面です。
具体的には、
・発行義務の有無
・記載事項
の点で異なります。
発行義務の有無
解雇通知書は、会社が労働者に対して解雇の意思表示を通知することを主な目的として交付する書面です。
法律上、解雇の意思表示を書面で行うことは義務づけられていないので、解雇の意思表示は口頭で行うことも可能です。そのため、会社に解雇通知書を発行する義務はありません。
これに対して、解雇理由証明書は、会社が労働者を解雇した理由が記載された書面です。
法律上、労働者が解雇の理由を記載した証明書を請求した場合には、会社は速やかにこれを交付する義務があります。
記載事項
解雇通知書には、一般的には、「解雇する旨」「解雇日」「解雇事由」等が記載されています。しかし、法律上、記載事項が定められているわけではありません。そのため、解雇通知書に十分に解雇理由が記載されていないこともあります。
これに対して、解雇理由証明書には、法律上、解雇理由を記載することが義務付けられています。そして、行政通達では、解雇理由を「具体的に記載する」必要があるとされています(平成11年1月29日基発45号、平成15年12月26日基発1226002号)。
また、解雇理由証明書には労働者が請求しない事項を記入することは許されません。
解雇通知書をもらえない場合の対処法
解雇通知書をもらえない場合の対処法につき、以下の順序で説明します。
・解雇通知書をもらえない場合には証明書を請求
・証明書を請求すべき理由
・会社が解雇通知書を出さない理由
解雇通知書をもらえない場合には証明書を請求【ひな型付き】
解雇と口頭で言われたものの、解雇通知書をもらえない場合には、
を代わりに請求しましょう。
会社は、解雇通知書を交付する義務はありませんが、労働者が請求したら「退職事由」と「使用期間」を記載した書面を速やかに交付する義務があるためです。
労働基準法22条1項
「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」
また、証明書を請求する際には、後述するように以下の事項も併せて記載しておくといいでしょう。
・解雇理由の記載も求めること
・(解雇を争う場合には)解雇の撤回と業務指示を求めること
具体的には、以下のような請求書を送付することが考えられます。
※御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
証明書を請求すべき理由
解雇事由や解雇日が記載された証明書を請求すべき理由は、会社の主張を明確にしておくためです。
会社は、口頭では解雇と述べても、後から、解雇はしていないなどと主張してくる場合があります。そもそも会社が解雇をしていない場合には、労働者としてもどのように対応するかが変わってきます。
また、給料請求をするにしても、解雇予告の手続きが守られているかを判断するにしても、解雇日が基準となってきます。
そのため、労働者は、解雇通知書をもらえない場合には、どのように対応すべきかや解雇の正当性を判断するために、解雇についての証明書を請求することにより、会社の主張を明確にしておくべきなのです。
会社が解雇通知書を出さない理由
会社が解雇通知書を出さない理由としては、例えば以下の3つが考えられます。
・解雇をする正当な理由がないため
・労働者に退職届を書かせようとしているため
・解雇したつもりがないため
解雇をする正当な理由がないため
会社が解雇通知書を出さない理由の1つ目は、「解雇をする正当な理由がないため」です。
つまり、労働者に対して、解雇と言ったものの、その事案では解雇が難しいことを知り、解雇通知書を出さずにいる場合です。
このような理由で解雇通知書がもらえない場合には、会社から解雇が撤回される可能性があります。
解雇を撤回された場合の対処法については以下の記事で詳しく説明しています。
労働者に退職届を書かせようとしているため
会社が解雇通知書を出さない理由の2つ目は、「労働者に退職届を書かせようとしているため」です。
つまり、解雇してしまうと労働者から争われるリスクが高いと考え、労働者に対して、「退職届」を書くように説得しようとしている場合です。
このような場合には、会社は、労働者に対して、「退職届を書かなければ解雇する。」「解雇されたら経歴に残ってしまう。」「懲戒解雇では退職金が支給されない。」などと述べて、説得しようとします。
この場合には、本当に解雇が許される事案なのかを弁護士に相談するべきです。安易に退職届に同意しないように注意しましょう。
解雇したつもりがないため
会社が解雇通知書を出さない理由の3つ目は、「解雇したつもりがないため」です。
これは、会社が労働者に対して「明日から来なくていい」など、不明確な発言をした場合に起こり得るケースです。
また、「解雇」と述べていること自体は認めても、本意ではなかったなどと説明してくる場合もあります。
「明日から来なくていい」と言われた場合の意味や対処法については、以下の記事で詳しく説明しています。
解雇通知書もらったらどう対処すればいいのか
会社から解雇通知書をもらったら以下の順で対処しましょう。
・解雇事由と解雇日を確認する
・解雇理由証明書の請求する
・撤回と業務指示を求める
解雇された場合に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」は、以下の動画でも詳しく解説しています。
それでは、説明していきます。
解雇事由と解雇日を確認する
解雇通知書をもらったらするべきことの1つ目は、
ことです。
解雇通知書には、「解雇事由」として何故解雇されたのかが簡単に書かれている場合があります。その解雇事由を見て、自分に心あたりがあるものであるかどうか、それが本当に解雇に値する事由なのかどうかを確認しましょう。
また、解雇通知書には、「解雇日」の記載もあるはずです。自分がいつ解雇されるのかを確認しましょう。会社は、労働者を解雇するには、原則として30日以上前に予告しなければならないとされており、この予告がない場合には解雇予告手当を支払うなどの手続きが必要となることがあります。
解雇理由証明書を請求する【ひな型付き】
次に、解雇通知書をもらったらやるべきことの2つ目は、
ことです。
解雇通知書に解雇事由が記載されていない場合や解雇事由が記載されていてもその記載が不明確である場合などには、解雇理由証明書を請求することで具体的な解雇理由を知ることができます。
また、会社は、解雇理由証明書に記載していない事実については後から主張しにくくなるという事実上の意味もあります。
具体的には、以下のような書面により会社に請求することが多いです。併せて、後述する解雇の撤回と業務指示を求める旨も記載しておいた方がいいでしょう。
※御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
撤回と業務指示を求める
最後に、解雇通知書をもらったらやるべきことの3つ目は、解雇を争う場合には、
ことです。
後述するように、労働者は、解雇が不当な場合には、解雇された後の給料を請求することができます。しかし、この請求をするには、労働者が「就労の意思」を持っていることが条件となります。
「就労の意思」を持っていることを書面で示すことまでは条件ではありませんが、これを記載しておくことにより争点を減らすことができます。
そのため、解雇を争う場合には、撤回と業務指示を求める旨を書面により会社に通知しておくべきなのです。
会社から解雇通知書の受領書の提出を求められたとしても、労働者としてはこれを提出する義務はありません。
解雇を争う場合には、以下のような懸念があるため、解雇通知書の受領書を提出することは拒否した方がいいでしょう。
⑴ 解雇に同意したと言われるリスク
⑵ 受領書に「解雇を争わない」などの不利な文字が記載されているリスク
万が一、解雇通知書の受領書を会社に提出するであれば、以下の2点に気を付けて慎重に行うべきです。
⑴ 解雇を争う場合には、解雇に同意したわけではなく争う意思があることを付記しておく
⑵ 会社の書式で受領書を提出する場合には、一度持ち帰り不利益な記載がないかを弁護士に確認してもらう
あなたの解雇は不当?確認事項3つ
解雇理由が不当かどうかは、以下の3つの事項を確認して判断します。
①合理性と相当性があること
②解雇の手続きが守られていること
③解雇が禁止される場合に当たらないこと
①解雇は合理性と相当性がない場合には、濫用として無効となります。
例えば、能力不足を理由とする解雇であれば、数回ミスをした程度で会社に大きな損害が生じていない場合や会社から業務改善の指導をされていない場合には、合理性や相当性がないものとして濫用となる可能性があります。
②解雇の手続きが守られていない場合には、解雇が無効となることがあります。
例えば、懲戒解雇をする場合には、就業規則に懲戒事由と種別を規定していなければなりません。また、会社は、懲戒解雇をする前に、労働者に対して弁明の機会を付与する必要があります。
③解雇が禁止されている場合には、解雇は無効となります。
例えば、業務上の負傷・疾病の休業期間及びそのあと30日間に解雇される場合、産前産後の休業期間及びその後30日間に解雇される場合です。
解雇が不当となる場合については、詳しくは以下の記事で説明していますので読んでみてください。
不当な解雇をされた場合の権利
解雇が不当な場合に認められる可能性がある権利としては、以下の3つがあります。
・解雇後も会社で働き続ける地位
・解雇後の給料
・慰謝料
順に説明していきます。
解雇後も会社で働き続ける地位
解雇が濫用である場合には、労働者は、会社に対して、
を持っています。
なぜなら、解雇が濫用である場合には、その解雇は無効となるためです。
そして、解雇後も会社で働き続ける地位を確認することにより、今後の労働者と会社の法律関係を明確にすることができます。
そのため、解雇を争う場合には、このような権利を確認していくことが一般的です。
解雇後の給料
解雇が濫用である場合には、労働者は、会社に対して、
を請求することができます。
解雇された後は、通常、会社から出勤することを拒否されます。そうすると、労働者は、働いていない以上、その分の給料は請求できないのではないか疑問に感じますよね。
しかし、解雇が無効である場合には、労働者が勤務することができなかった原因は会社にあります。
そのため、労働者は、解雇が不当である場合には、その後出勤していなくても、解雇された後の給料を請求することができるのです。
そして、解雇後の給料は、解雇されてから解決するまでの給料が支払われることになります。
そのため、労働者が解雇を争う場合、この解雇された後の給料の請求が最も大きな請求になることが多いのです。
例えば、月給30万円の方が解雇を争い解決までに1年間かかった場合には、その間の
=360万円
を支払ってもらえる可能性があります。
ただし、解雇後に、他の会社で働いて収入を得ている場合には、他の会社で得た収入金額が平均賃金の6割を超える部分から控除されることに注意が必要です。
慰謝料
解雇の悪質性が高い場合には、労働者は、会社に対して、
を請求できる可能性があります。
不当解雇の慰謝料の相場は、
とされています。
不当解雇の場合の慰謝料については、以下の記事で詳しく説明しています。
解雇されたらすぐに弁護士に相談すべき
解雇されたらすぐに弁護士に相談することを強くおすすめします。
その理由は以下の4つです。
・あなたが何をするべきで何をしない方がいいのかを教えてもらえる!
・解雇が不当かどうか見通しを確認してもらえる!
・依頼した場合には会社との交渉を丸投げできる!
・初回無料相談であれば相談費用はかからない!
あなたが何をするべきで何をしない方がいいのかを教えてもらえる!
弁護士に相談すれば、あなたが何をするべきで何をしない方がいいのかを教えてもらうことができます。
解雇された場合には、あなたが何を求めているかにより、やるべきことと、やってはいけないことがあります。
例えば、解雇を争う場合には、労働者がこれを矛盾するような行動をとると、その後、会社から「解雇を認めていたではないか」と反論されることになります。
そのため、解雇をされたら、まずは弁護士にどのように行動していくべきかについて相談しておくことがおすすめです。
解雇が不当かどうか見通しを確認してもらえる!
弁護士に相談すれば、解雇が不当かどうか見通しを確認してもらうことができます。
解雇通知書や解雇理由証明書を見ても、解雇が不当かどうかを自分で判断しようとすると悩むことがありますよね。
解雇が不当かどうかは法的判断を伴う事項です。解雇に注力している弁護士であれば、これまでの経験からその解雇が不当かどうかについて助言をしてくれます。
そのため、解雇された場合には、その解雇が不当ではないかを弁護士に確認してみましょう。
依頼した場合には会社との交渉を丸投げできる!
労働者が解雇を争いたいと考えた場合には、弁護士に依頼すれば、会社との交渉を丸投げすることができます。
例えば、会社に対して解雇理由証明書の請求をすることや、その解雇が不当であることを説明すること、会社が解雇の不当性を認めない場合に法的手続きを行うことなどを、弁護士に任せてしまうことができるのです。
そのため、不当解雇を争う場合には、弁護士に依頼してしまうことがおすすめです。
初回無料相談であれば相談費用はかからない!
初回無料相談を利用すれば、費用をかけずに弁護士に相談することができます。
相談する段階で弁護士に依頼するか悩んでいても問題ありません。まずは、弁護士に見通しや費用を確認してから依頼するかを決めればいいのです。
初回無料相談を利用するデメリットは特にありません。
そのため、解雇されたらすぐに弁護士に相談することがおすすめなのです。
まとめ
以上のように、今回は、解雇通知書をもらえない場合や解雇通知書をもらった場合の対処法について解説しました。
この記事の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。
・解雇と口頭で言われたものの、解雇通知書をもらえない場合には、解雇の事実・種類と解雇日が記載された証明書を代わりに請求しましょう。
・解雇通知書をもらった場合には、①解雇事由と解雇日の確認、②解雇理由証明書の請求、③(解雇を争う場合には)撤回と業務指示の要求を行いましょう。
・不当な解雇がされた場合に認められる可能性のある権利は、①解雇後も会社で働き続ける地位、②解雇後の給料、③慰謝料の3つがあります。
この記事が解雇に悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。