会社から渡された離職票に「重責解雇」と記載されていていたとの悩みを抱えていませんか?
解雇には色々な種類がありますので混乱してしまいますよね。
重責解雇は、雇用保険法上の概念であり、失業保険の受給の可否・受給までの期間・給付日数において不利に扱われることがあります。
懲戒解雇と重責解雇はイコールではなく、懲戒解雇には重責解雇に該当するものとそうでないものがあります。
ただし、会社によっては、懲戒解雇をする場合、実際にはこれに該当しないのに重責解雇として届け出を行うことがあります。
会社は、重責解雇以外の「その他の解雇」として届け出ると、会社都合退職として、助成金において不利益を受けることになるためです。
労働者は、離職票を慎重に確認して、重責解雇にチェックされていることに不満がある場合には、ハローワークに異議を出す必要があります。
しかし、実際には、解雇された方も、「重責解雇」の意味をよく理解しておらず、異議を出さずに放置してしまうケースが多いのです。
また、そもそも、日本では、解雇の条件自体がとても厳格なので、少しのミスや成績不良があっても、容易には行うことができません。
実は、弁護士に相談してみたら、解雇が条件を満たしていない不当なものであり、解雇後の賃金や慰謝料を請求できると発覚するケースが非常に多いのです。
少しでも多くの方に、解雇についての正確な知識を知っていただき、不当な解雇を防止できれば幸いです。
今回は、重責解雇とは何かを説明したうえで、失業保険や再就職への影響と対処法を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、重責解雇された場合でも適切に対処できるようになるはずです。
解雇された場合に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」は、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
重責解雇とは|重責解雇と懲戒解雇の違い
重責解雇とは、労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇をいいます。
重責解雇は、雇用保険法上の概念であり、これに該当するかどうかは失業保険を受給する際に影響が出てくることになります。
これに対して、懲戒解雇は、解雇の条件・手続等に関わる一般的な区分における概念です。
つまり、「重責解雇に該当するかどうかの問題」と「懲戒解雇に該当するかどうかの問題」は、区分する目的が異なります。
懲戒解雇が重責解雇になることもありますが、懲戒解雇だからと言って当然に重責解雇となるわけではありません。
懲戒解雇の場合であっても、重責解雇に該当しない可能性があります。
裁判例では、「離職票において被控訴人が重責解雇と記載したからといって直ちにこれが懲戒解雇を意味するものとはいえず」と判示したものがあり、重責解雇と懲戒解雇が異なるものであることが裏付けられています(東京高判令和元年5月8日労働判例1216号52頁[協同組合つばさほか事件])。
【事案】
懲戒事由が就業規則で定められていない会社において、懲戒解雇と称する意思表示をされた労働者が懲戒解雇の無効を主張して訴訟提起した事案です。
【判旨】
「確かに、一般に、使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ労働契約又は就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するところ、前提事実のとおり、E雇用契約に懲戒事由の定めはなく、被控訴人が就業規則を定めていないことから、控訴人が主張するとおり、被控訴人は、控訴人に対して懲戒解雇をすることはできない。」
「しかしながら、このような場合に、仮に使用者が懲戒解雇と称する意思表示をしたとしても、使用者が懲戒権の行使としての解雇であることに固執せず、かつ、労働者の地位を不当に不安定にすることのない限り、使用者のした解雇の意思表示は、普通解雇の意思表示と解することができるというべきである(東京高等裁判所昭和61年5月29日判決労働関係民事裁判例集37巻2・3号257頁参照)。」
「これを本件についてみるに、控訴人の離職票において被控訴人が重責解雇と記載したからといって直ちにこれが懲戒解雇を意味するものとはいえず、他に本件解雇について懲戒解雇であると明示されたことはなく、本件訴訟においても、被控訴人は、本件解雇は普通解雇であると主張しているのであるから、本件解雇を普通解雇と解するとしても、これによって労働者である控訴人の地位を不当に不安定にするとは認め難い。」
重責解雇された場合の失業保険上のデメリット3つ
会社から重責解雇された場合には、失業保険受給の際に以下の3つのデメリットがあります。
デメリット1:失業保険を受給するために必要な加入期間が長くなる
デメリット2:失業保険をもらえるまで待つ期間が長くなる
デメリット3:失業保険をもらえる給付日数が短い
それでは順番に説明していきます。
デメリット1:失業保険を受給するために必要な加入期間が長くなる
まず、重責解雇された場合には、失業保険を受給するために必要な加入期間が長くなります。
なぜなら、一般に解雇の場合には会社都合退職として扱ってもらえますが、重責解雇については自己都合退職として扱われることになるためです。
雇用保険法23条
2「前項の特定受給資格者とは、次の各号のいずれかに該当する受給資格者(前条第二項に規定する受給資格者を除く。)をいう。」
一 …
二「前号に定めるもののほか、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く。第五十七条第二項第二号において同じ。)その他の厚生労働省令で定める理由により離職した者」
重責解雇の場合には、失業保険の受給要件は、原則として、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上あることが必要となります。
これに対して、それ以外の解雇の場合には、失業保険の受給要件は、離職前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば足ります。
つまり、重責解雇とされる場合には、失業保険を受給するために必要な被保険者期間が長くなりますので、その点で不利益と言えます。
デメリット2:失業保険をもらえるまで待つ期間が長くなる
また、重責解雇された場合には、失業保険をもらえるまで待つ期間が長くなります。
重責解雇には、給付制限が定められているためです。
雇用保険法33条
1「被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合には、第二十一条の規定による期間の満了後一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。ただし、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける期間及び当該公共職業訓練等を受け終わつた日後の期間については、この限りでない。」
具体的には、重責解雇の場合には、7日の待期期間の後に、3か月間の給付制限期間があります。そのため、受給を開始できるのは、これらの期間の後になります。
それ以外の解雇の場合には、7日の待期期間の後に、給付制限期間はありません。そのため、7日の待期期間満了後に失業の認定がされれば、すぐに失業保険をもらうことができます。
つまり、重責解雇の場合には、失業保険を受給できるまでの期間が長くなりますので、その点で不利益といえます。
デメリット3:失業保険をもらえる給付日数が短い
更に、重責解雇では、失業保険をもらえる給付日数が短くなります。
先ほど説明したように、重責解雇は会社都合退職ではなく、自己都合退職として扱われることになるためです。
具体的には、重責解雇の場合には、給付日数は、雇用保険の加入期間により、以下のとおり90日~150日です。
それ以外の解雇の場合には、給付日数は、年齢と雇用保険の加入期間により90日~330日です。
重責解雇は再就職に悪影響?
重責解雇が再就職に悪影響を与えないか不安に感じている方もいますよね。
前提として、就職活動中に重責解雇されたことを知られた場合には、採用してもらえない可能性があります。
重責解雇は、労働者側に大きな原因があり解雇されたものですので、入社後に問題を起こすのではないかと警戒されてしまうためです。
しかし、重責解雇されたことが再就職先に知られることは通常ありません。
離職票又は雇用保険受給資格者証を見られてしまうと、重責解雇されたことがわかってしまいますが、これらは失業保険を受給する際にハローワークに提出するものです。
そのため、提出を求められても、これを拒めるケースが多いでしょう。
採用の面接でも、重責解雇かどうかということまで質問をされることは通常ありません。
ただし、採用面接で退職の理由を聞かれることがあり、解雇されたと答えれば、「普通解雇か懲戒解雇か」「解雇の理由」などを聞かれることがあります。
この場合には、懲戒解雇されたということについては、再就職先にも知られてしまう可能性があります。
懲戒解雇が知られた場合に採用してもらえる可能性が低くなるのは、重責解雇の場合と同様です。
また、再就職の際に、懲戒解雇されたのに、自主退職したなどの虚偽の事実を告げて入社した場合には、経歴詐称として、再就職先からも懲戒解雇されるリスクがあります。
そのため、重責解雇ということまで再就職先に知られることは少ないですが、懲戒解雇ということが発覚すれば再就職に不利益が生じる可能性があります。
懲戒解雇と再就職については、以下の記事で詳しく解説しています。
重責解雇だと解雇予告手当はもらえない?
重責解雇の場合には、会社から解雇予告手当を支給してもらえない可能性があります。
労働基準法20条1項が「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」には解雇予告手当の支払いを不要としているためです。
労働基準法第20条(解雇の予告)
1「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、…労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」
ただし、解雇予告手当の「労働者の責めに帰すべき事由」とは、労働者が予告期間なしで解雇されてもやむを得ないと認められるほどに重大な規律違反や背信行為をいいます。
そのため、失業保険の「自己の責めに帰すべき重大な理由」(重責解雇)と、完全に同じ意味というわけではありません。
もっとも、これらの「労働者の責めに帰すべき事由」と「自己の責めに帰すべき重大な理由」(重責解雇)には、関連性もあります。
つまり、「労働者の責めに帰すべき事由」によることを理由に解雇予告手当を不支給とする場合には、労働基準監督署の除外認定を得る必要があります。
労働基準法20条(解雇の予告)
3「前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。」
労働基準法19条(解雇制限)
2「前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。」
そして、失業保険の受給に関して「自己の責めに帰すべき重大な理由」(重責解雇)に当たるには、労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したケースに関して、「会社が解雇予告除外認定を受け解雇予告及び解雇予告手当の支払い義務を免れるとき」に該当することが条件とされています。
実際、重責解雇の場合のハローワークの持参資料にも、解雇予告除外申請の写しが含まれています。
北海道ハローワーク
また、実際上の運用として、懲戒解雇に該当する場合には、解雇予告手当の支払いをせず、重責解雇として届け出るとの対応をしている会社が多いのが現状です。
そのため、重責解雇の場合には、解雇予告手当を支払ってもらえないことがあります。
懲戒解雇と解雇予告手当については、以下の記事で詳しく解説しています。
会社が重責解雇として処理しているかは離職票で確認!
会社があなたのことを重責解雇として届け出ているかどうかについては、離職票で確認します。
離職票とは、雇用保険被保険者離職票のことをいい、離職年月日や離職理由が記載された書面です。
通常、退職してから2週間程度で会社から届きます。
離職票には「離職理由」という欄があるので、事業主が離職理由のどこにチェックをしているかを確認します。
(出典:ハローワークインタネットサービスを加工して作成)
「4 事業主からの働きかけによるもの」の「重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)」にチェックされている場合は、あなたは重責解雇として届け出られていることになります。
もしも会社から離職票が届かない場合には、以下の記事をご参照ください。
あなたの解雇は本当に重責解雇?|重責解雇に当たる例7つ
会社は、あなたが本当は重責解雇に該当しない場合にも重責解雇として届け出ていることがあります。
重責解雇に該当する例を挙げると以下の7つです。
例1:刑法や職務に関連する法令に違反して処罰を受けたケース
例2:故意又は重過失により設備又は器具を破壊したケース
例3:故意又は重過失により会社の信用を失墜させ又は損害を与えたケース
例4:労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したケース
例5:会社の機密を漏らしたケース
例6:会社の名をかたり、利益を得又は得ようとしたケース
例7:他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職したケース
それぞれの例について順番に説明していきますので、あなたが本当に重責解雇に当たるのかを一緒に確認していきましょう。
例1:刑法や職務に関連する法令に違反して処罰を受けたケース
刑法に規定する犯罪又は行政罰の対象となる行為を行ったことによって解雇された場合には、重責解雇に該当します。
行政罰の対象となる行為とは、例えば自動車運転手が交通取締規則に違反する場合等とされています。
ただし、この基準は、「処罰を受けたことによって解雇された場合」であるため、単に訴追を受け、又は取り調べを受けている場合、控訴又は上告中で刑の確定しない場合は、これに包含されません。
また、執行猶予中の者は、これに該当します。単に刑の執行を猶予されているにとどまり刑は確定しているためです。
起訴猶予の処分を受けた者は、これに該当しません。刑が確定していないためです。
例2:故意又は重過失により設備又は器具を破壊したケース
会社に損害を与え、しかもそれが故意又は重過失に基づくものである場合には、当然自己の責めに帰すべき重大な理由に該当するとされています。
例3:故意又は重過失により会社の信用を失墜させ又は損害を与えたケース
労働者の言動によって会社に金銭その他物質的損害を与え、又は信用の失墜あるいは顧客の減少等の無形の損害を与えた場合がこれに該当します。
例4:労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したケース
労働協約又は就業規則に違反したことによって解雇された場合には、重責解雇となる可能性があります。
労働協約又は就業規則に定められた事項は、労働者が守るべきものだからです。
ただし、労働協約又は就業規則違反の程度が軽微な場合には、重責解雇にはならないとされています。
具体的には、重責解雇となるのは、以下の①~④の行為のいずれかがあった場合であって、会社が解雇予告除外認定を受け解雇予告及び解雇予告手当の支払い義務を免れるときです。
①極めて軽微なものを除き、事業所内において窃盗、横領、傷害等刑事犯に該当する行為があった場合
②賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす行為があった場合
③長期間正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
④出勤不良又は出欠常ならず、数回の注意を受けたが改めない場合
例5:会社の機密を漏らしたケース
従業員として当然守らなければいけない機密を他に漏らしたケースでは、これに該当することになります。
具体的には、事業所の機密とは、事業所の機械器具、製品、原料、技術等の機密、事業所の経営状態、資産等事業経営上の機密に関する事項等を包含するとされています。
例6:会社の名をかたり、利益を得又は得ようとしたケース
会社の名を悪用し、自己の利益を得又は得ようとした場合には、これに該当します。
事業主に有形無形の損害を与える場合もあり、事業主に積極的損害を与えない場合でも詐欺罪又は背任罪が成立する場合もあるためです。
例7:他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職したケース
会社に雇用される際に、就職条件を有利にするため他人の履歴を盗用し、あるいは技術、経験、学歴等について自己の就職に有利なように虚偽の陳述をして採用され、後に発覚した場合です。
重責解雇されたことに不満な場合はハローワークに異議を!
あなたが重責解雇されてしまった場合でこれに不満がある場合には、ハローワークに異議を出すようにしましょう。
ハローワークは、会社と労働者で離職理由が異なる場合には、客観的な資料の確認、両者で主張が異なる事情についての聴取を行ってくれます。
そして、会社が記載する離職理由に誤りがあることが確認された場合には、会社に対して、訂正をするように指導してもらえます。
それでは、具体的にハローワークに異議を申し立てる方法を説明していきます。
具体的には、以下の4つの手順により進めていきます。
手順1:離職票への必要事項の記載
手順2:住居又は居所を管轄のハローワークに離職票を提出
手順3:離職票-2⑦欄に係る離職理由申立書の作成・提出
手順4:調査に協力
手順1:離職票への必要事項の記載
まずは、離職票-2に必要事項を記載していきましょう。
具体的には、以下の箇所を記載していきます。
⑴「⑦離職理由欄」の正しい離職理由にチェックをする
⑵「⑦具体的事情(離職者用)欄」に正しい離職理由を記載する
⑶「⑯離職者本人の判断欄」の異議ありに〇をつける
⑷「⑰⑦欄の自ら記載した事項に間違いがないことを認めます欄」に署名押印をする
以下のリーフレットも参考になりますので見てみてください。
離職された方へ-離職票-2の離職理由欄等(⑦欄及び⑰欄)の記載方法について―
手順2:住居又は居所を管轄のハローワークに離職票を提出
離職票に必要事項を記載したら、あなたの住居又は居所を管轄するハローワークに離職票を提出しましょう。
ハローワークの管轄は以下のリンクから調べてください。
ハローワーク等所在地情報
以下の書類が必要ですので持参してください。
①雇用保険被保険者離職票(-1、2)
②個人番号確認書類(いずれか1種類)
③マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
④身元(実在)確認書類((1)のうちいずれか1種類((1)の書類をお持ちでない方は、(2)のうち異なる2種類(コピー不可))
(1)運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
(2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
⑤写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
⑥印鑑
⑦本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(一部指定できない金融機関があります。ゆうちょ銀行は可能です。)
受給資格の決定を行う際に、併せて、離職理由の判定も行われることになります。
離職票を提出する際に、会社がチェックしている離職理由に異議がある旨も担当の方に伝えておくといいでしょう。
手順3:離職票-2⑦欄に係る離職理由申立書の作成・提出
離職票-2⑦の具体的事情記載欄では枠が小さすぎるので、ハローワークから「離職票-2⑦欄に係る離職理由申立書」の交付を受けて、これを記載しましょう
離職理由申立書を提出する際に、解雇に至る経緯を具体的に記載して、客観的な資料と併せて提出できるといいでしょう。
手順4:調査に協力
離職理由申立書をハローワークに提出して、事情聴取などが行われたり、資料の提出を求められたりした場合には、これに協力しましょう。
会社が重責解雇にチェックする理由の一つは助成金
会社が離職票の「解雇(重責解雇を除く。)」ではなく、「重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)」にチェックをしたがる理由の一つは助成金です。
会社の助成金の中には、会社都合退職にしてしまうと受給することができなくなってしまうものがあります。
そして、「解雇(重責解雇を除く。)」にチェックすると会社都合退職となってしまいます。
実際、厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)のリーフレットにも以下のとおり記載されています。
・1人以上の被保険者を事業主都合により解雇(勧奨退職、解雇予告を含む。)をさせた事業主
・事業所の被保険者の一定割合以上の特定受給資格者(一部のものを除く。)を発生させた事業主
のいずれかには、雇入れ関係助成金が支給されないこととなります。
出典:離職された方へ-離職票-2の離職理由欄等(⑦欄及び⑰欄)の記載方法について―
そのため、会社は、助成金が受給できなくなるのを防ぐために重責解雇にチェックしようとすることがあるのです。
実は解雇自体が無効なことが非常に多い
ここまでは、重責解雇の意味や影響・対処法を説明してきました。
しかし、解雇されてしまった方には、そもそも解雇自体が無効なことが非常に多いということも知っていただければと思います。
解雇をするには客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当とはいえないことが必要とされています。
そして、これを満たしていない解雇は濫用として無効となります。
実際に行われている多くの解雇は濫用に該当する可能性があるのに、労働者がこれに気付かずに放置されてしまっているというのが現状です。
解雇が無効となれば、あなたは引き続き会社の従業員でいることができますし、あなたに働く意思があったのであれば解雇された後の賃金を後から請求することもできます。
例えば、解雇されてから実際に解雇の無効が認められるまで、1年程度かかってしまったとしても、1年分の賃金を後から支払ってもらうことができるのです。
バックペイ(解雇後の賃金)については、以下の動画でも詳しく解説しています。
また、解雇の無効が認められれば、解雇の経歴もつきませんので再就職への悪影響も心配せずに済みます。
ただし、あなたが解雇自体を認めるような行動をしてしまうと、解雇を争う難易度は上がってしまいます。
解雇後の何気ない行動や発言が記録されていて、後から、不利な証拠として提出されることがよくあります。
そのため、あなたが少しでも解雇を争いたいと考えている場合には、離職理由に関して、会社とやり取りしたり、ハローワークに異議を述べたりする前に、一度弁護士に相談することを強くおすすめします。
解雇の無効については、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
以上のとおり、今回は、重責解雇とは何かを説明したうえで、失業保険や再就職への影響と対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・重責解雇とは、労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇をいいます。
・懲戒解雇が重責解雇になることもありますが、懲戒解雇だからと言って当然に重責解雇となるわけではありません。
・重責解雇ということまで再就職先に知られることは少ないですが、懲戒解雇ということが発覚することはあり、この場合には再就職に不利益が生じる可能性があります。
・重責解雇の場合には、解雇予告手当を支払ってもらえないことがあります。
・重責解雇に該当する例を挙げると以下の7つです。
例1:刑法や職務に関連する法令に違反して処罰を受けたケース
例2:故意又は重過失により設備又は器具を破壊したケース
例3:故意又は重過失により会社の信用を失墜させ又は損害を与えたケース
例4:労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したケース
例5:会社の機密を漏らしたケース
例6:会社の名をかたり、利益を得又は得ようとしたケース
例7:他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職したケース
・重責解雇に不満がある場合は、以下の4つの手順によりハローワークに異議を出しましょう。
手順1:離職票への必要事項の記載
手順2:住居又は居所を管轄のハローワークに離職票を提出
手順3:離職票-2⑦欄に係る離職理由申立書の作成・提出
手順4:調査に協力
・解雇自体が無効なことが非常に多いので、重責解雇に異議を出す前に、一度弁護士に相談することがおすすめです。
この記事が重責解雇されたことに悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。