勤めている会社の管理職になりたくないと悩んでいませんか?
管理職になると責任は増すのに、残業代が支払われなくなってしまうこともありますので、昇格したくないと考えている方もいますよね。その気持ちわかります。
人には向き不向きがあり、マネジメント業務ではなく、現場業務(プレーヤー職)で居続けたいと考えることも、何もおかしいことではありません。
実際、アンケート調査の結果によると、8割超の方が管理職になりたくないと回答しています。しかし、結論から言うと、原則として、管理職になることを拒否することはできません。
なぜなら、人員配置については、会社に広い裁量が認められているためです。
ただし、管理職になりたくないと考えている場合には、いくつかの対処法があります。
例えば、代表的な方法としては、「名ばかり管理職」にすぎないとして、残業代の支払いを請求することにより、年収が減ることを回避する方法が考えられます。
また、他の会社への転職を考えるというのも一つの手段でしょう。管理職に昇格すればキャリアとなり、転職先も探しやすくなるはずです。
今回は、管理職になりたくない人の理由や昇進を拒否できるかどうか、残業代請求や退職等の対処法を解説していきます。
具体的には以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、管理職になりたくない場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
管理職になりたくない場合については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
管理職になりたくない!アンケート調査では8割超
マンパワーグループのアンケート調査結果によると、「今後、管理職になりたいか」との質問に対して、全体の8割超が「なりたくない」と回答しているとされています。
つまり、管理職になりたくない方が圧倒的多数ということになります。
より詳しく「性別ごとの割合」と「年齢ごとの割合」を見てみると以下のとおりです。
(出典:8割超の一般社員が「管理職になりたくない」と回答。その理由とは? | 人材派遣・人材紹介のマンパワーグループ (manpowergroup.jp))
性別で見てみると、管理職になることに積極的な人の割合は、40代では男性と女性で同等ですが、それ以外の年代だと男性の方が多くなっています。とくに、30代では男性と女性の間の差が大きくなっています。
年代で見ると、20代・30代と若い世代の方が、40代・50代と比べて、管理職になることに積極的であることがわかります。
管理職になりたくない理由2つ
管理職になりたくない理由は人それぞれであり、「調整業務が面倒」、「部下の育成業務をしたくない」、「今の地位が働きやすい」、「プレーヤー業務に専念したい」など色々あるでしょう。
そのような中でも、管理職になりたくない理由として、とくに多いのは以下の2つです。
理由1:年収が減る
理由2:責任が増える
以下では、それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
理由1:年収が減る
管理職になると、年収が減ってしまうことがあります。
通常は、管理職になると、基本給が上昇し、役職手当がつくなど、固定金額が上昇していくことになります。
これに対して、管理職になると、会社から残業代の支払いがされなくなることがあります。
そうすると、残業時間が長いような方の場合には、上昇した基本給や役職手当金額よりも、減少した残業代金額の方が大きくなってしまうのです。
例えば、非管理職だった頃には月30時間の残業をして20万円の基本給の他に月4万6875円の残業代が支給されて合計24万6875円の給料が支給されていたとします。
これに対して、例えば、管理職になった後は、基本給の金額が22万円に上昇し、役職手当が2万円支給されるようになり、代わり残業代が支給されなくなったとしましょう。
そうすると、30時間の残業をしても支給される金額は24万円となり、非管理職のときよりも少なくなってしまいます。
そのため、管理職になると年収が減ってしまうこともあるのです。
管理職の給与については、以下の記事で詳しく解説しています。
理由2:責任が増える
管理職になると責任が増えることになります。
ここでいう責任とは、例えば以下の3つです。
責任1:遂行責任(担当するプロジェクトを最後まで遂行する責任)
責任2:説明責任(問題が生じた場合の説明する責任)
責任3:賠償責任(減給や降格などの経済的な責任)
非管理職のときは、管理職の指示に従い自分の業務をしていれば、ミスをしても上司がカバーしてくれることもあります。
しかし、管理職になると、自分がフォローする側になり、部下がミスをしてもプロジェクトが回るように尽くさなければいけません。
そして、仮に、プロジェクトが失敗してしまったような場合には、関係者にそれを説明しなければいけませんし、場合によっては減給や降格などの措置を受けることになります。
このように、管理職になると、求められる責任も重くなります。
管理職になりたくない人も多いですが、当然、管理職になることによるメリットもあります。
例えば、以下のとおりです。
メリット1:給料の固定金額が増えて安定する
まず、残業代がなくなっても、基本給や役職手当などの毎月の固定金額が上昇することが多いので、労働時間にかかわらずもらえる給与の金額が増えて、生活が安定します。
メリット2:キャリアを築くことができる
次に、昇進していくことでキャリアを築くことができます。今後、仕事を頑張れば、更に基本給や手当が上昇していく可能性があります。
メリット3:後輩や同期が上司になるのを避けられる
最後に、管理職になることを断ると、後輩や同期が昇進していき上司になってしまい、気まずくなってしまうこともあります。このような状況を避けることができるというメリットがあります。
管理職になることは拒否できない
管理職への昇格を言い渡された場合には、原則として、労働者はこれを拒否することはできません。
管理職への昇格が人事権の範囲内で行われている限りは、会社の裁量の範囲内であるためです。
これに対して、労働条件が不合理なほどに不利益に変更されるような場合には、昇格の命令が無効となる可能性があります。
また、これまで何らの役職にもついていなかった人に対して、嫌がらせの目的で高位の役職に就かせるような場合も濫用として無効となる可能性があります。
ただし、降格に比べて、昇格が人事権の範囲を超えていると言われたり、濫用とされたりすることはあまりないように感じます。
そのため、会社から昇格を言い渡された場合には、通常、これを拒否することはできません。
ただし、人事権の行使としての昇格ではなく、あくまでも労働者の意向次第では昇格させるという、昇格の申し込みの意味合いにすぎないような場合には、同意しないことも自由です。
つまり、管理職になることに同意することまで強制されるわけではありません。
管理職になりたくない場合の対処法3つ
管理職になることを拒否することはできませんが、管理職になりたくない場合にはいくつか対処法があります。
例えば、管理職になりたくない場合に取ることができるおすすめの方法は以下の3つです。
対処法1:管理職になりたくないとお願いしてみる
対処法2:名ばかり管理職の証拠を集めて残業代を請求する
対処法3:退職して他の会社に転職する
それでは各対処法について順番に説明していきます。
対処法1:管理職になりたくないとお願いしてみる
管理職になりたくない場合の対処法1つ目は、管理職になりたくないとお願いしてみることです。
管理職になることを拒否することはできませんが、お願いベースで現状の職にとどまらせてほしいと相談することは自由です。
例えば、「プロフェッショナルとしてこの仕事を極めていきたい」、「マネジメント業務より現場業務を行いたい」などの積極的な理由を伝えるのがいいでしょう。
対処法2:名ばかり管理職の証拠を集めて残業代を請求する
管理職になりたくない場合の対処法2つ目は、名ばかり管理職の証拠を集めて残業代を請求することです。
管理職には、「労働基準法上の管理監督者」と「名ばかり管理職」の2種類があります。
労働基準法上の管理監督者に対しては、時間外残業代と休日残業代の支払いは不要とされています。
これに対して、名ばかり管理職に対しては、非管理職と同様に残業代の支払いをする必要があります。
労働基準法上の管理監督者に該当するためには、以下の3つの条件を満たす必要があるとされています。
条件1:経営者との一体性
条件2:労働時間の裁量
条件3:対価の正当性
これらの条件を満たしていない場合には、労働基準法上の管理監督者ではなく、名ばかり管理職にすぎないことになり、残業代を請求することができます。
そのため、自分が名ばかり管理職にすぎない証拠を集めて残業代を請求することで、年収が下がってしまうことを避けることができます。
例えば、以下の証拠を集めましょう。
①始業時間や終業時間、休日を指示されている書面、メール、LINE、チャット
→始業時間や終業時間、休日を指示されていれば、労働時間の裁量があったとはいえないため重要な証拠となります。
②営業ノルマなどを課せられている書面、メール、LINE、チャット
→営業ノルマなどを課されている場合には、実際の職務内容が経営者とは異なることになるため重要な証拠となります。
③経営会議に出席している場合にはその発言内容や会議内容の議事録又は議事録がない場合はメモ
→経営会議でどの程度発言力があるかは、経営に関与しているかどうかを示す重要な証拠となります。
④新人の採用や従業員の人事がどのように決まっているかが分かる書面、メール、LINE、チャット
→採用や人事に関与しておらず、社長が独断で決めているような場合には、経営者との一体性がないことを示す重要な証拠となります。
⑤店舗の経営方針、業務内容等を指示されている書面、メール、LINE、チャット
→経営方針や業務内容の決定に関与しておらず、社長が独断で決めているような場合には、経営者との一体性を示す重要な証拠となります。
名ばかり管理職については以下の記事で詳しく解説しています。
管理監督者とは何かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
残業代の時効については、令和2年4月1日以降が支払日のものは3年となっていますので、この期間内であれば後から遡って請求できます。退職してしまった後でも請求可能です。
以下の残業代チェッカーを利用することにより、無料で簡単に未払い残業代金額の目安を確認することができますので利用してみてください。
管理職の残業代については、以下の動画でも分かりやすく解説しています。
対処法3:退職して他の会社に転職する
管理職になりたくない場合の対処法3つ目は、退職して他の会社に転職することです。
期間の定めのない雇用契約に場合には、2週間前に予告することにより、会社の同意がなくても退職することができます。
管理職になることによりキャリアを築くことができ、転職も行いやすくなります。
そのため、管理職になることにより年収が下がってしまうようなケースでは、転職エージェントなどに登録してみることもおすすめです。
現在の労働条件よりも高待遇で迎えてもらえる可能性があります。
管理職の退職の仕方は以下の記事で詳しく解説しています。
ただし、退職する前に必ず「内定通知書」や「オファーレター」などの書面で入社を認める旨と労働条件を明示してもらうようにしましょう。
退職届を出した後に採用を取り消されてトラブルになるという事案の相談がたくさんあります。
証拠があれば一定の請求をできることが多いですが、口約束にすぎない場合には内々定にすぎないとして請求できる金額は僅かとなります。
内定取り消しについては、以下の記事で詳しく解説しています。
管理職の残業代請求はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
管理職の方の残業代請求については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
管理職の残業代請求については、経営者との一体性や労働時間の裁量、対価の正当性について適切に主張を行っていく必要があります。
また、残業代請求については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきます。
リバティ・ベル法律事務所では、管理職の残業代請求について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しておりますので、あなたの最善の解決をサポートします。
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残業に悩んでいる管理職の方は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、管理職になりたくない人の理由や昇進を拒否できるかどうか、残業代請求や退職等の対処法を解説しました。
以下の記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・「今後、管理職になりたいか」との質問に対して、全体の8割超が「なりたくない」と回答しているとされています。
・管理職になりたくない理由として、とくに多いのは以下の2つです。
理由1:年収が減る
理由2:責任が増える
・管理職への昇格を言い渡された場合には、原則として、労働者はこれを拒否することはできません。
・管理職になりたくない場合に取ることができるおすすめの方法は以下の3つです。
対処法1:管理職になりたくないとお願いしてみる
対処法2:名ばかり管理職の証拠を集めて残業代を請求する
対処法3:退職して他の会社に転職する
この記事が管理職になりたくないと考えている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
以下の動画も参考になるはずですので、是非見てください。