退職勧奨をされた際に退職条件を交渉することができないか悩んでいませんか?
退職の方向に心が傾きつつあっても、生活や再就職のことを考えると、すぐに退職に応じることには抵抗がありますよね。
結論としては、退職勧奨の際は退職条件を交渉することができます。
なぜなら、退職勧奨は、労働者が任意に退職することを促すものにすぎず、退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由だからです。
退職勧奨時に獲得すべき退職条件としては以下の5つがあります。
条件1:特別退職金
条件2:在籍期間延長(ガーデンリーブ)
条件3:会社都合退職
条件4:年次有給休暇の買取
条件5:再就職支援(アウトプレースメント)
退職時の特別退職金については、賃金の3か月分~6か月分程度が相場と言われています。
ただし、あくまでも相場であり、交渉力によっては、特別退職金を獲得できない場合もありますし、1年分以上になることもあります。
退職勧奨を受けた際には、いくつかのNG行動があり、これを行ってしまうと退職条件の交渉自体が困難となってしまうことがあります。
また、退職条件の交渉には「解雇」と「退職勧奨の撤回」という2つのリスクが伴いますので、これを踏まえて方針を検討する必要があります。
実は、私が、日々退職勧奨に関する多くの相談に接する中でも、納得できない条件で退職に応じてしまったことに後悔している人が後を絶ちません。
既に退職に応じてしまった後にご相談をいただいてもリカバリーが難しいことが多く、この記事をとおして少しでも多くの方が後悔することがなくなれば幸いです。
今回は、退職勧奨の際は退職条件を交渉できることを説明したうえで、獲得すべき5つの条件と相場を解説します。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、退職勧奨をされた際にどのように退職条件を交渉していけばいいかがよくわかるはずです。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
退職勧奨の際は退職条件を交渉できる!
退職勧奨の際は退職条件を交渉することができます。
なぜなら、退職勧奨は、労働者が任意に退職することを促すものにすぎず、退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由だからです。
会社から提案された退職に納得できない場合には、退職を断ることができます。
つまり、納得できる退職条件でなければ退職したくないとして、退職条件を交渉することができるのです。
例えば、あなたが会社から来月末で退職してほしいと言われたとしましょう。
しかし、本来、退職するかどうかやそのタイミングは労働者が自由に決めることができます。
そのため、来月末で退職に応じるという条件に納得できなければこれを拒否することができます。
また、その他一定の生活の補償があれば検討も可能である等の再提案を行うこともできます。
このように退職勧奨が行われた際には退職条件を交渉することができるのです。
退職勧奨の際に獲得するべき退職条件5つ
退職勧奨の際に交渉される条件については、いくつか典型的なものがございます。
例えば、よくある獲得すべき退職条件については以下の5つです。
条件1:特別退職金
条件2:在籍期間延長+就労免除(ガーデンリーブ)
条件3:会社都合退職
条件4:年次有給休暇の買取
条件5:再就職支援(アウトプレースメント)
それでは各退職条件について順番に説明していきます。
条件1:特別退職金
特別退職金とは、通常の退職金とは別に、退職勧奨に応じる場合に割り増して支払われる退職金です。外資系企業などではパッケージとも呼ばれます。
とくに退職金のような制度がない会社であっても支払われることがあります。
再就職までの生活の補償との意味合いで支払われることが多いですが、これまでの勤続の功に対しての意味合いで支払われることもあります。
ただし、会社は特別退職金について支払いの義務を負っているわけではなく、あくまでも任意の退職を促すための説得の材料とし提案してくるにすぎません。
そのため、会社からの提案がない場合には、裁判所を通じて特別退職金を請求することはできません。
特別退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
条件2:在籍期間延長+就労免除(ガーデンリーブ)
ガーデンリーブとは、在籍期間延長して就労を免除してもらうことです。
キャリアにブランクを空けることなく、転職活動に集中することができます。
当該期間について籍を残しておき、就労せずに、通常の賃金を支払ってもらうことができるとの扱いにすることが多いです。
特別退職金を一部減額してガーデンリーブに充ててもらうといった交渉も珍しくありません。
例えば、在籍期間が1年に満たないような方などは少しでも在籍期間を延ばしたいと考えるでしょうから、このような条件の交渉を行っていくことが多いです。
ガーデンリーブについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ガーデンリーブについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
条件3:会社都合退職
会社都合退職とは、退職勧奨など会社側の都合により雇用契約が終了する場合の事を言います。
失業保険との関係で特定受給資格者として、早期に受給を受けられたり、支給を受けることができる日数が長かったりといったメリットがあります。
退職時に退職理由を決めておかないと、離職票が届いた際に自己都合とチェックされていてトラブルになることもあります。
ただし、会社都合かどうかの交渉を行うのは、他の退職条件に納得できた後の方がいいでしょう。
会社都合退職にしてくださいなどというと、退職合意書にサインをしていなくても、会社側が退職手続きを進めてしまうこともあるためです。
退職勧奨と会社都合退職については、以下の記事で詳しく解説しています。
会社都合退職については、以下の動画でも詳しく解説しています。
条件4:年次有給休暇の買取
年次有給休暇の買取とは、退職時点における残有給日数に相当する手当を支給することをいいます。
年次有給休暇については原則として買い取ることは許されませんが、例外的に退職時に残日数に相当する手当を支給することは許容されています。
仮に退職時に年次有給休暇の買取をしてもらえないとなると、労働者としては年次有給休暇をすべて消化するまでは退職に応じないとの対応を行うことになります。
そのため、会社側としても、支払金額が変わらないのであれば、年次有給休暇を買い取ってしまい、早期に退職に応じてもらうという対応になりやすいのです。
有給の買取については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職時の有給休暇の買い取りについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
条件5:再就職支援(アウトプレースメント)
再就職支援(アウトプレースメント)とは、従業員が会社の都合により退職する際に、会社が外部企業に委託し再就職を支援することです
会社が人材紹介会社と契約をしている場合には、このような提案がされる場合もあります。
もっとも、あくまでも再就職の支援であり、そのサービスの中心はコンサルティングになりますので、過度な期待はしない方がいいでしょう。
転職活動に慣れている方の場合にはとくに必要を感じないとの声も聞きます。
例えば、会社は、再就職支援会社に1人あたり50万円程度の費用を負担することが通常であるため、再就職支援を付けない代わりに特別退職金を増やしてほしいなどの交渉もできることがあります。
再就職支援(アウトプレースメント)については、以下の記事で詳しく解説しています。
再就職支援(アウトプレースメント)については、以下の動画でも詳しく解説しています。
退職勧奨時の退職条件の相場|賃金の3か月分~6か月分
退職勧奨時の退職条件の相場について、特別退職金については賃金の3か月分~6か月分程度とされることが多いです。
なぜなら、再就職に必要な期間の生活の補償として交渉されることが多いためです。
ガーデンリーブの期間についても同様であり、在籍期間延長する場合には長くても6か月程度として議論されることが多いです。
ただし、あくまでも相場であり交渉力によっては、特別退職金を全く獲得できない場合もありますし、1年分以上になることもあります。
とくに外資系企業などでは、勤続年数の長い労働者に対して、1年半分など高額の特別退職金を支給するような場合もあります。
外資系企業のパッケージの相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨の際の退職条件の交渉手順
退職勧奨の際に退職条件を交渉するには手順があります。
あなたが交渉を行わなければ退職条件については、良いものにはなりません。また、誤った手順で交渉をすると状況が悪化してしまう場合もあります。
そのため、退職勧奨際の退職条件の交渉については手順を守って行うことが大切です。
具体的には、退職勧奨の際の退職条件の交渉は、以下の手順により行います。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
手順4:退職合意書に署名押印を行う
それでは各手順について順番に説明していきます。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
退職条件の交渉手順の1つ目は、提案された条件では退職に納得できないことを示すことです。
労働者側が退職に納得した後は、会社はそれ以上の条件を提案する理由がなくなり、交渉は難しくなるためです。
例えば、自分としては長い間この会社で働き続けたいと考えていて、生活もあるので突然辞めるように言われても納得できない等、応じられない理由を説明します。
これに対して、自分としてもこの会社で働き続けたいとは思わないが、退職金はもっと払ってほしい等の回答は、逆効果となります。働き続けたくないと言っている以上、割増退職金を支払わなくても自ら退職することが明らかであるためです。
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
退職条件の交渉手順の2つ目は、特別退職金の金額につき交渉を行うことです。
交渉する際にはまず金額の大枠を先に協議することとなります。
ただし、金額の交渉をする際には、そのニュアンスの伝え方には慎重に配慮する必要があります。
先に退職日等を決めてしまうと、金額の折り合いがつかなかった場合に、退職自体には納得していた等の指摘を受けることがあるためです。
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
退職条件の交渉手順の3つ目は、退職日や退職理由につき交渉を行うことです。
特別退職金の金額についてまとまったら、退職日や退職理由等の条件についても、協議していきます。
手順4:退職合意書に署名押印を行う
退職条件の交渉手順の4つ目は、退職合意書に署名押印を行うことです。
退職条件につき双方で折り合いがついたら、合意の内容を明確にするために退職合意書に署名押印を行うことになります。
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表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
退職勧奨の際のNG行動3つ
退職勧奨の際に退職条件を交渉する場合には、行ってはいけないNG行動があります。
あなたがとった行動によっては退職条件の交渉が困難となってしまう場合があるのです。
例えば、退職勧奨際のNG行動としては以下の3つがあります。
NG行動1:退職届又は退職合意書にその場でサインをする
NG行動2:納得していないのに退職を認める発言や態様をする
NG行動3:転職活動の状況等を会社に報告する
それではこれらのNG行動について1つずつ順番に説明していきます。
NG行動1:退職届又は退職合意書にその場でサインをする
退職届又は退職合意書にその場でサインすることはNGです。
短時間で冷静な判断を行うことは難しいためです。
一度、退職届又は退職合意書にサインしてしまうと、会社は目的を達成してしまいますので、それ以降退職条件を交渉することはできなくなります。
また、一度サインした退職届又は退職合意書を撤回するハードルはとても高いです。
退職届の撤回については、以下の記事で詳しく解説しています。
加えて、退職合意書については、複数の条項が記載されていて、その記載ぶりも専門的ですので、その場で正確に理解することは困難です。
そのため、退職届又は退職合意書にサインするように言われた場合には、断るか又は一度持ち帰るようにしましょう。
NG行動2:納得していないのに退職を認める発言や態様をする
納得していないのに退職を認める発言や態様をすることはNGです。
退職条件の交渉を行う際には、退職合意書に署名押印せずとも、口頭や態様によっても退職が成立し得るためです。
例えば、納得していないのに以下のような発言や態様をすると、会社から退職を認めていた等の主張をされることがあります。
・退職自体はわかりましたが特別退職金がほしいですとの発言
・この会社で働き続けるつもりはないですとの発言
・離職票を送ってくださいとの発言
・異議を唱えず貸与物等を返還や引継ぎ等する態様
・残りの有給休暇の消化
上記の発言や態様を行わなければならない場合には、退職を認めたことにならないように慎重に行うことになります。
NG行動3:転職活動の状況等を会社に報告する
転職活動の状況等を会社に報告することはNGです。
まず、転職活動を行っていること自体を捉えて退職を認めていたと言われることがあります。
また、会社側は、転職活動を行っている人については、とくに退職条件を提案せずとも待っていれば退職するものと判断する可能性が高く、退職条件の交渉が困難となります。
そのため、会社から定期的に転職活動の状況について尋ねられても、一々報告しない方がいいでしょう。
退職勧奨の際に退職条件交渉をした場合の2つのリスク
退職勧奨の際に退職条件交渉を行う際には、リスクがあります。
退職条件の交渉を行う際には、このようなリスクがあることを踏まえて方針を検討することになります。
具体的には、退職勧奨の際に退職条件を交渉した場合のリスクは以下の2つです。
リスク1:解雇
リスク2:退職勧奨の撤回
それでは、各リスクについて順番に説明していきます。
リスク1:解雇
まず、退職勧奨の際に退職条件を交渉するリスクの1つ目は、解雇を言い渡される可能性があることです。
会社は、紛争となるリスクを避けるために、解雇を行う前に一度退職勧奨を行うことが通常です。
会社はあなたに退職を同意してもらうことが困難であると判断した場合には、あなたの同意なく行うことが可能な解雇に踏み切る可能性があります。
ただし、法律上、解雇には厳格な規制があります。
そのため、あなたが解雇をされた場合にどの程度のリスクがあるのかということについて、事前に見通しを立てておく必要があります。
解雇の条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
リスク2:退職勧奨の撤回
次に、退職勧奨の際に退職条件を交渉するリスクの2つ目は、退職勧奨を撤回される可能性があることです。
退職勧奨の際に会社側から提案されている条件は、あくまでもあなたが退職勧奨に応じるように説得するためのものにすぎません。
会社側が退職勧奨を撤回した後になって、やはりその条件で退職したかったと思っても難しい可能性があるのです。
会社からの退職勧奨に応じるのではなく、自分から退職届を出す場合には、会社から特別退職金等の支給は行われません。
そのため、退職勧奨が撤回された場合に直ぐに自分から退職届を出すことになるような方にとっては、リスクがあることになります。
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まとめ
以上のとおり、今回は、退職勧奨の際は退職条件を交渉できることを説明したうえで、獲得すべき5つの条件と相場を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・退職勧奨の際は退職条件を交渉することができます。
・よくある獲得すべき退職条件については以下の5つです。
条件1:特別退職金
条件2:在籍期間延長+就労免除(ガーデンリーブ)
条件3:会社都合退職
条件4:年次有給休暇の買取
条件5:再就職支援(アウトプレースメント)
・退職勧奨時の退職条件の相場について、特別退職金については賃金の3か月分~6か月分程度とされることが多いです。
・退職勧奨の際の退職条件の交渉は、以下の手順により行います。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
手順4:退職合意書に署名押印を行う
・退職勧奨際のNG行動としては以下の3つがあります。
NG行動1:退職届又は退職合意書にその場でサインをする
NG行動2:納得していないのに退職を認める発言や態様をする
NG行動3:転職活動の状況等を会社に報告する
・退職勧奨の際に退職条件を交渉した場合のリスクは以下の2つです。
リスク1:解雇
リスク2:退職勧奨の撤回
この記事が退職勧奨の際の退職条件に悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。