未払残業代・給料請求

賞与を請求することができる場合-ボーナスが支給されないときの確認事項-

 皆さんは、期待していた賞与が支払われなかった経験や、その金額が思ったよりも低かった経験をしたことはありませんか。賞与とは、どのような権利なのでしょうか、また、全く支給しないことや少ない金額しか支給しないことは許されるのでしょうか。今回は、賞与について、解説していきます。

賞与とは

 賞与とは、ボーナスとも呼ばれるもので、定期的に支払われる賃金以外に夏季、年末・年度末、決算期などに支払われる一時金です。
 通常は、夏と冬の年2回支給されることが多いですが、任意的恩恵的給付として使用者の裁量に委ねられている場合や、賃金として就業規則・合意等により定められている場合など、その性質は会社によって異なります

賞与を請求できる場合[=要件]

使用者による決定の要否

⑴ 会社の業績を勘案して定める場合
 就業規則において、「会社の業績等を勘案して定める」旨が記載されている場合には、賞与請求権は、各時期の賞与ごとに、使用者が会社の業績等に基づき算定基準を決定して労働者に対する成績査定をしたとき、又は、労使で会社の業績等に基づき金額を合意したときに、初めて具体的な権利として発生するものと解されます。
 そのため、賞与について、このような就業規則しかない場合には、使用者による算定基準の決定及び成績査定がされない限り、賞与を請求できないことになります(東京地判平12.2.14労判780号9頁[須賀工業事件]等)。
 もっとも、裁判例の中には、以下のような理由付けにより賞与請求権を認めたものがあります。

【大阪地判昭47.3.17判タ279号347頁[富士輸送機工業事件]】
 原告の属する組合と被告との間の一時金協定に定められた平均査定配分割合により計算された一時金の支払を認めています。

【大阪地判昭49.3.6判時745号97頁[吉田鉄工所事件]】
 申請人らが属する分会の組合員以外の従業員に対して行われた査定の最低点により計算した一時金の支払を認めています

【東京高決昭60.2.26判タ554号171頁[いずみの会みぎわ保育園事件]】
 期末手当及び勤勉手当の一部が使用者の査定に服すべきものであるとしても、使用者は慣行的に上記査定権を行使しないこととしていたとして、労働者側に就業規則所定の支給率による上記各手当請求権を認めています。

⑵ 支給金額が具体的に算定できる場合
 就業規則又は労働契約書等において、支給金額が具体的に算定できる程度に算定基準が定められている場合、賞与請求権は使用者の決定を待たずに具体的な権利として発生します。
 例えば、「賞与として夏季・冬季それぞれ50万円ずつ支払う」とされている場合や「賞与として月ごとの基本給の2か月分を支払う」とされている場合には、支給金額が具体的に算定できる程度に算定基準が定められているといえます。

支給日に在籍していることの要否

 賞与について、「支給日に在籍していない者には支給しない」という規定が置かれている場合があります。
 このような支給日在籍要件を設けること自体は合理性があり有効とされています。
 もっとも、賞与が賃金の後払的性格も有する以上、支給日在籍が賞与の発生要件となっているとの認定は慎重に行う必要があり(東京地判昭52.3.30判タ364号231頁[大島園事件]、東京地判昭53.3.22労判297号48頁[ビクター計算機事件])、具体的な権利の発生要件として使用者の決定又は労使の合意を必要としない類型の賞与については、別段の考慮が必要とされています。

【最一小昭57.10.7集民137号297頁[大和銀行事件]】
 「賞与は決算期毎の業績により支給日に在籍している者に対し各決算時期につき1回支給する」と規定している就業規則について、従業員組合の要請によって慣行を明文化したにとどまるものであって、その内容においても合理性があるため、有効としています。

【東京地判昭63.6.27労経速1334号3頁[エジス事件]参照】
 賞与は、賃金の後払のみならず、企業の利益配分、過去の貢献に対する功労報償、将来の勤務へ期待・奨励、生活費補填といった多様な性格を有するため、支給日在籍要件は、実質的に労働基準法24条に反せず、公序に違反するとはいえないとされています。

90%以上の出勤

 賞与について、①「賞与支給対象者は出勤率90%の者」である旨、②出勤率を算定する際には、出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し、出勤した日数に産前産後休業の日数及び育児による時短勤務の時間は含めない旨を規定している場合があります。このような規定は有効なのでしょうか。
 最一小判平15.12.4集民212号[学校法人東朋学園事件]は、従業員の出勤率低下防止等の観点から、出勤率の低い者が経済的利益を得られないこととする措置は一応の経済的合理性を有するから、労基法等の趣旨に照らすと、その措置により労基法等による権利の行使を抑制し、ひいては法が権利を保障した趣旨を実質的に失わせると認められる場合に限り、公序に反するものとして無効としています。そして、当該事案においては、従業員の年間収入額に占める賞与の比重が相当大きいこと及び90%という数値からして、90%条項は、従業員に産後休暇ないし時短勤務の権利行使抑制をもたらすものと認められるから、90%条項のうち、出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し、出勤した日数に産前産後休業の日数及び育児による時短勤務の時間を含めないとした部分は無効となるとしました

解雇が無効の場合

 就業規則において、「賞与は、会社の業績等を勘案して定める」とされている場合、解雇された労働者について、使用者が成績査定をすることは考えがたいため、具体的な権利として発生することはなく、請求することはできないことになります(東京地判平7.12.25労判689号31頁[三和機材事件])。
 就業規則又は労働契約書等において、賞与の支給金額が具体的に算定できる程度に算定基準が定められている場合、使用者の成績査定等を要することなく、具体的な権利として発生するから、解雇が無効の場合には、これを請求できるとされています。

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賞与の減額の可否

産前産後休業及び育児による時短勤務時間

 賞与の具体的金額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式及びその適用において、産前産後休業及び育児による時短勤務時間を欠勤日数に含めることは、その措置により労基法等の権利の行使を抑制し、法が権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められず、直ちに公序に反するとはいえないとされています(最一小判平15.12.4集民212号87頁[学校法人東朋学園事件])。

支給日以降に退職する者

 支給日以降の一定期間を在籍した労働者と、その満了以前の退職を予定する労働者との間で支給額に差を設ける就業規則が定められている場合があります。
 裁判例は、賞与に従業員の将来に対する期待も含まれていることを理由に、退職予定者と非退職予定者との間で支給額に差を設けること自体については容認する姿勢を示しています。もっとも、賞与の趣旨が従業員の実績の評価にあり、賃金としての性格を有する場合に、退職予定者の賞与額を僅少な額にとどめることは、将来への期待が小さいことを名目に従業員の賃金を実質的に奪うことになるとして、退職予定者の受給する賞与額が非退職予定者の17%となる同条項の有効性を否定し、80%をあるべき支給額と認定しています。

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