月70時間という残業時間がきついと感じるのは甘えではないか、悩んでいませんか?
残業70時間が続くと体調への悪影響が生じはじめますし、プライベートの時間も少なくなってしまいますよね。
結論から言うと、残業70時間がきついのは決して甘えではありません。
なぜなら、平均残業時間を大幅に上回っていますし、法律上許容される残業の原則的な限度時間である45時間も超えているためです。
残業70時間が常態化している場合には、労働基準法に反し、違法となる可能性があります。
また、月70時間の残業は過労死ラインぎりぎりであり、身体、精神にも大きなリスクがあります。
更に、そのような違法な残業をさせている会社は、法律上おかしな言い訳をして残業代をしっかりと払っていない場合が多く、高額の残業代を請求できる可能性があります。
例えば、基礎賃金が30万円の方の場合につき平均所定労働時間を160時間と仮定すると、3年間で、
590万0623円
もの残業代が発生することになります。
この記事をとおして、残業70時間が常態化している職場環境に置かれた場合にどのように対応していけばいいのかを知っていただければと思います。
今回は、残業70時間がきついのは甘えではないこと、及び、普通ではない一日の生活を説明したうえで、体調のリスクや残業代の金額、請求方法について解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、きつい残業の毎日を変えるためにどうすればいいのかがわかるはずです。
残業時間の平均や生活、健康への影響については、以下の動画で詳しく解説しています。
目次
残業70時間がきついのは甘え?普通ではない一日の生活
月に70時間の残業を続けることは、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
月22日出勤する方だと、月70時間の残業をする場合には、平均で毎日
70時間÷22日
=約3時間20分
の残業をすることになります。
ここでは、この1日の残業時間を、以下の2つに分けて説明していきます。
・平均残業時間
・1日の生活スケジュール
平均残業時間
昨年1月から12月までの日本の残業時間の平均は、約24時間になっています。
(データ出典:⽇本の残業時間 定点観測 OpenWork 働きがい研究所 (vorkers.com))
そのため、月の残業時間70時間は平均残業時間の約3倍であり、世間一般と比べても、非常に多いということが分かります。
1日の生活スケジュール
前述した通り、月の残業70時間というのは、1日に換算すると3時間20分程度です。
これを基に1日のタイムスケジュールの例を見てみると、以下の通りになります。
このように、残業を終えて帰宅するのは22時30分頃になります。
そこから食事、入浴としていると、それだけで23時を過ぎてしまうスケジュールになっています。
当然、このようなスケジュールでは家族と食事を取ることも難しいですし、睡眠時間を6時間としてもプライベートな時間を確保することはほとんどできません。
そのため、月70時間の残業は、労働者にとって大きな負担であり、対策をしていく必要があるのです。
残業70時間は違法?違法になる4つのケース
月70時間の残業を命じる行為は、違法になる可能性があります。
具体的に違法になる可能性があるのは、以下のケースです。
ケース1:36協定がない場合
ケース2:特別条項がない場合
ケース3:限度時間を超えて労働させる必要性がない場合
ケース4:残業代が支払われていない場合
それでは、順番に解説していきます。
ケース1:36協定がない場合
残業70時間が違法になるケースの1つ目は、36協定がない場合です。
そもそも、労働基準法において労働時間の上限は、1日8時間、週40時間までと定められています。
労働基準法32条(労働時間)
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」
そのため、この上限を超えて労働させようとする場合には、会社と労働者の間で事前に協定を結んでおく必要があるのです。
この協定のことを、36協定といいます。
この協定を結んでいない状態で労働者に残業をさせることは違法となります。
36協定は、労働組合などと会社が毎年結ぶことが通常です。
労働組合がない会社であっても、従業員の代表者などと結ぶことになります。
協定締結後は、締結した旨を労働基準監督署に届け出る必要があり、ここまで行って初めて1日8時間の上限を超えて残業をさせることができるのです。
ケース2:特別条項がない場合
残業70時間が違法になるケースの2つ目は、特別条項がない場合です。
特別条項とは、36協定における特別条項のことになります。
そもそも、36協定においても残業させることができる時間には上限があり、原則として45時間までとされています。
労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
4「……限度時間は、一箇月について四十五時間……とする。」
この原則を超えて残業をさせるには、特別条項というものを定める必要があります。
そのため、月に70時間の残業を命じながら特別条項を定めていないケースは違法になります。
ただし、特別条項があっても、月100時間以内であることや、45時間を超えていいのは1年で6か月までなどといったような、守らなければならない厳格な条件があります。
特別条項があれば無制限に残業をさせることができるというわけではないのです。
そのため、70時間の残業が常態化するのは、違法の可能性が高いということになります
残業時間の上限などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ケース3:限度時間を超えて労働させる必要性がない場合
残業70時間が違法になるケースの3つ目は、限度時間を超えて労働させる必要性がない場合です。
特別条項があっても、月に45時間を超えて残業させることができるのは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に上限を超えて労働をさせる必要がある場合に限定されます。
つまり、予測もできなかったような急激な仕事量の増加などといったような、一時的かつ突発的な事情があって初めて、45時間以上の残業が許容されるのです。
労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
5「…当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間…を定めることができる。」
そのため、毎年ある繁忙期などのような、通常予見できるような業務量の増加であれば、月70時間の残業を命じることは、違法の可能性が高くなります。
ケース4:残業代が支払われていない場合
残業70時間が違法になるケースの4つ目は、残業代が支払われていない場合です。
残業の上限時間等を守っていたとしても、労働者に対してその残業に応じた対価は支払う必要があります。
労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1「使用者が、…労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
そのため、残業をさせていながら残業代を支払っていない場合は、違法の可能性が高くなるのです。
サービス残業の違法性に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
残業70時間と体調への影響|過労死のリスク
月に70時間といったような長時間の残業をする場合、健康被害のリスクがあります。
主な健康被害のリスクは以下の通りです。
・脳・心臓疾患
・うつ病等の精神疾患
それでは、順番に解説していきます。
脳・心臓疾患のリスク
月に70時間の残業をする場合、脳・心臓疾患のリスクが高まっている状況にあります。
所謂過労死ラインと呼ばれる基準も、この脳・心臓疾患の労災認定基準をもとにされています。
もともとは発症前の1か月間に100時間、または2~6か月平均で月80時間を超える時間外労働は関連性が強いとされていました。
しかし、この基準が令和3年に改正されて、「上記の水準には至らないが、これに近い時間外労働」であることに加えて、「一定の労働時間以外の負荷」があると、業務と発症の関連が強いと評価することを明示されました。
脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
このように、残業が80時間に満たなくても、脳・血管疾患を発症するリスクは高いのです。
そのため、残業を70時間もしている状況では、自身の変化に注意を払っておく必要があります。
下記のような症状がある場合には、脳・心臓疾患の可能性があるため、受診を検討するとともに、すぐに残業を減らすための対策を講じましょう。
・手足が動かしづらい
・呂律が回らない
・急なめまい
・運動後に動悸がする
・胸の圧迫感、痛み
うつ病等の精神疾患のリスク
月70時間の残業をする場合には、うつ病等の精神疾患のリスクがあります。
ただし、月70時間の残業は、行政通達における、「1か月に80時間未満の時間外労働を行った」ことにあてはまるのみで、心理的負荷の強度は「弱」に該当します。
そのため、リスクが高いとまでは言えなくなってしまいます。
ただし、心理的負荷「中」の項目として、「仕事内容、仕事量に大きな変化を生じさせる出来事があった」が挙げられています。
その中で、「時間外労働数としてはおおむね20時間以上増加し、1月あたりおおむね45時間以上となるなど」とした項目もあるため、状況次第ではリスクも高くなります。
以下のような症状がある場合には、うつ病等のサインの可能性があるため、受診を検討するとともに、残業時間を減らすための対策を講じましょう。
・気分が落ち込む、考えが悪い方向に向いてしまう(抑うつ)
・イライラして落ち着かない
・死にたいと考えてしまう(希死念慮:消えてなくなりたい、楽になりたいといった感情)
・様々なことに対する興味の喪失、意欲の低下
・眠れない
・食欲がない
・周囲の人から体調を心配されることが増えた
・動機、息苦しさがある
残業70時間の残業代と手取りはいくら?大まかな月給ごとに紹介
月に70時間の残業をした場合の手取りと残業代がいくらになるかについて、月収別に紹介していきます。
残業代については、以下の方法で計算します。
基礎賃金÷所定労働時間×割増率×残業時間数
基礎賃金は、家族手当や通勤手当、住宅手当などの各種手当や臨時に支払われた賃金などを除いたものになります。
基礎賃金=基本給というわけではないため注意が必要です。
所定労働時間は、会社において決められた労働時間になります。
割増率は、法定時間外労働は1.25倍、22時~5時の深夜労働は0.25倍をさらに追加、法定休日労働は1.35倍です。
残業時間は、法定時間外労働や法定休日、深夜に働いた時間の合計です。
残業代の詳しい計算に関しては、以下の記事で詳しく説明しています。
それでは、以下の月収における手取りと残業代を計算していきます。
※手取りについては、具体的事案によって異なります。
・月給25万円の場合
・月給30万円の場合
・月給40万円の場合
なお、所定労働時間を160時間と仮定し、手取りに関しては額面の75%~85%で計算していきます。
月給25万円の場合
月収25万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下の通りとなります。
25万円÷160時間×1.25×70時間
=
13万6718円
そして、残業代の時効は3年のため、これを基準に3年分の残業代を計算すると以下の通りとなります。
13万6718円×3年(36か月)分
=
492万1848円
そして、1か月の額面を35万9375円(25万円+13万6718円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下の通りとなります。
38万6718円×75%~85%
=
29万0038円~32万8710円
月給30万円の場合
月収30万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下の通りとなります。
30万円÷160時間×1.25×70時間
=
16万4062円
そして、残業代の時効は3年のため、これを基準に3年分の残業代を計算すると以下の通りとなります。
16万4062円×3年(36か月)分
=
590万0623円
そして、1か月の額面を46万4062円(30万円+16万4062円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下の通りとなります。
46万4062円×75%~85%
=
34万8046円~39万4452円
月給40万円の場合
月収40万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下の通りとなります。
40万円÷160時間×1.25×70時間
=
21万8750円
そして、残業代の時効は3年のため、これを基準に3年分の残業代を計算すると以下の通りとなります。
21万8750円×3年(36か月)分
=
787万5000円
そして、1か月の額面を61万8750円(40万円+21万8750円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下の通りとなります。
61万8750円×75%~85%
=
46万4062円~52万5937円
70時間分の固定残業代って違法?
稀ではありますが、会社から月に70時間分の固定残業代が支払われていることがあります。
ここまで、常態的な70時間の残業が違法の可能性が高いことは説明してきました。
そうなると、70時間分の固定残業代を支払うことは違法なのではないかと考える方もいるかもしれません。
結論からいうと、70時間分の固定残業代を支払っているというだけでは違法ということはできません。
固定残業代とは、実際に残業するかどうかに関わらず、定額の残業代を支給するものです。
そのため、70時間の固定残業代とはいっても、それは常に70時間の残業を指示するものではないため、その残業代を支払うことそれ自体は違法ではないためです。
ただし、固定残業代を支払ったからといって労働基準法や36協定を無視していいわけではありません。
70時間の固定残業代が支払われていたとしても、36協定等の上限やルールに則っていなければ、違法となる可能性が高くなります。
つまり、70時間分の固定残業代を支払うこと自体は違法性がなくても、70時間の残業が常態化することは許されないということです。
東京高判平成28年1月27日労判1171号76頁【コロワイドMD事件]
「被控訴人は、36協定において、月45時間を超える特別条項を定めており、その特別条項を無効とすべき事情は認められないから、業務手当が月45時間を超える70時間の時間外労働を目安としていたとしても、それによって業務手当が違法になるとは認められない。……業務手当が常に36協定の特別条項の要件を充足しない時間外労働を予定するものであるということはできないし、また、仮に36協定の特別条項の要件を充足しない時間外労働が行われたとしても、割増賃金支払業務は当然に発生するから、そのような場合の割増賃金の支払も含めて業務手当として給与規程において定めたとしても、それが当然に無効になると解することはできない。……」
残業70時間の方が残業代を請求する4つのステップ
未払いの残業代を請求するためには、手順を踏む必要があります。
必要な手順は以下の通りです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟
それでは、順番に解説していきます。
残業代請求の方法・手順については、以下の動画でも詳しく解説しています。
STEP1:通知書の送付
残業代を請求するためのSTEPの1つ目は、通知書の送付です。
まず、最初に内容証明郵便を利用し、会社に通知書を送付することになります。
理由は以下の2つです。
・時効を一時的に止めるため
・資料の開示を請求するため
具体的には、以下のような通知書を送付することが多いです。※御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
STEP2:残業代の計算
残業代を請求するためのSTEPの2つ目は、残業代の計算です。
会社から開示された資料をもとに、残業代を計算することになります。
もしも開示してもらえないなどの場合は、自分で記録しておいたタイムカードの写真等の出退勤の時刻が分かるものをもとに計算することになります。
STEP3:交渉
残業代を請求するためのSTEPの3つ目は、交渉です。
まずは、計算した具体的な金額を会社に対して請求しましょう。
そうすると、会社からも計算方法について、何らかの反論があるのが通常です。
会社との間で争いになっている箇所については、裁判例や法律に照らして、説得的に主張を行っていくことになります。
STEP4:労働審判・訴訟
残業代を請求するためのSTEPの4つ目は、労働審判・訴訟です。
交渉をしても話がまとまらない場合は、労働審判や訴訟の申し立てを行っていくことになります。
労働審判とは、3回以内の期日(裁判官を交えた話し合い)で調停による解決を目指すものであり、調停が成立しない場合には、裁判所により一時的な判断が出されます。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数に制限は特になく、1か月に1回程度期日が入り、交互に主張を行うことになります。
訴訟に関しては、解決まで1年程度かかることもあります。
残業を減らす4つの対処法
残業70時間は大きな負担となるため、体調への影響等が出ている場合には早期に対処していく必要があります。
具体的な対処法は以下の4つです。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:労働基準監督署に相談する
対処法4:転職する
それでは、順番に解説していきます。
対処法1:上司に相談する
残業を減らすための対処法の1つ目は、上司に相談することです。
長時間の残業が辛いと感じたら、まずは上司に残業を減らして欲しいと素直に相談しましょう。
その際には、どの程度残業をしているのか、どのような悪影響が生じているのかなどを具体的に説明することが重要です。
例えば、以下のような内容です。
・先月の残業が何時間だったか
・体調不良がある場合にはどのような症状が出ているか(医師の診断書はあるか)
・睡眠時間やプライベートへの支障
これは、状況を具体的に説明することで、上司もどのような配慮を必要としているか、どの程度の緊急性があるかなどを判断しやすくなるためです。
会社は労働者の健康や安全に配慮する義務を負っています。
そのため、このような相談をされれば、何らかの配慮をしてくれる可能性があります。
対処法2:残業を拒否する
残業代を減らすための対処法の2つ目は、残業を拒否することです。
先程説明したとおり、月70時間の残業は36協定の特別条項があっても1年で6か月までが上限のため、1年間とおして常態化していることは違法となります。
そのため、労働者はそのような長時間の残業は、拒否することを検討しましょう。
また、サービス残業を強要されている場合も同様です。
サービス残業の強要は違法になるため、サービス残業はしたくない旨を明確に伝えましょう。
残業を拒否する方法については、以下の記事で詳しく説明しています。
対処法3:労働基準監督署に相談する
残業を減らすための対処法の3つ目は、労働基準監督署に相談することです。
労働基準監督署に相談することで、その会社に対して労働基準法違反の事実があるか調査を行い、その結果に応じて指導してくれます。
先程説明したように、月70時間の残業が常態化するような状況は違法ですし、労働基準法の上限規制にも違反した明確な違法行為のため、労働基準監督署に相談することを考えられます。
しかし、労働基準監督署は人手不足なため、全ての事案に対して対応することは、難しい現状があります。
相談されたものの中から、緊急性の高い事案を優先して調査する傾向にあるため、匿名による相談や電話のみの相談だと、緊急性の低い事案として扱われてしまう可能性もあるのです。
そのため、労働基準監督署に動いてもらえる可能性が高くするために、実際に労働基準監督署に行き、自分の名前と会社を告げた上で相談することをおすすめします。
もし自分の名前が会社に伝わらないようにしたければ、労働基準監督署に対して相談者名前が会社に伝わらないように配慮してもらうことができます。
伝わらないようにしたい場合は、その旨をはっきりと伝えておきましょう。
対処法4:転職する
残業を減らすための対処法の4つ目は、転職することです。
これは、残業を減らすうえでは最も有効な手段になります。
具体的な転職するための手順は、以下の3つです。
手順1:証拠を集める
手順2:退職届を出す
手順3:残業の少ない会社に転職する
それでは、順番に解説していきます。
手順1:証拠を集める
転職する手順の1つ目は、証拠を集めることです。
残業代を請求する場合はもちろんですが、失業保険を受給する際、何らかの健康被害が生じてしまった際に備えて、長時間の残業をしていたことを、証明できるようにしておく必要があります。
ですが、そもそも70時間の残業が常態化するのは違法です。
違法行為をしている上に、残業代を支払っていないような会社ならば、証拠が残らないようにしている可能性もあります。
そのため、退職前に残業時間が分かる証拠を、可能な範囲で残しておきましょう。
最も明確な証拠になるのは、タイムカードです。
しかし、もしもタイムカードがなかったり、定時で打刻するように指示されていた場合には、入退館記録や業務メール、日報等の営業記録などの、第三者が見ても会社にいたことが分かるものがないかを確認しましょう。
それらもなければ、自分で各日の業務開始時間、休憩時間、業務終了時間、業務内容などを細かくメモしておきましょう。
残業の証拠については、以下の記事で詳しく解説しています。
手順2:退職届を出す
転職する手順の2つ目は、退職届を出すことです。
退職届は、退職日よりも2週間は前に提出しておく必要があります。
提出する方法は、手渡しでも内容証明郵便でも構いません。
ですが、手渡しする場合は、コピーを取っておくべきです。
退職届には、以下の内容を記載するようにしましょう。
・退職する意思と退職の日付
・離職票の交付請求
・退職する理由(必須ではありません)
・有給休暇の取得申請(必須ではありません)
例えば以下のような内容を記載します。
退職届
〇〇会社代表取締役 〇〇 〇〇殿
令和〇年〇月〇日
この度、私は、貴社において●●時間を超えて残業を行う月が続いたため、令和〇年〇月〇日をもって、貴社を退職させていただきます。
つきましては、令和〇年〇月〇日より令和〇年〇月〇迄の、貴社所定就労日〇〇日間について年次有給休暇を取得させていただきます。
なお、失業保険を受給するのに必要となりますので、退職後は速やかに下記住所まで離職票を送付してくださいますようお願い申し上げます。
住 所
署 名 印
※退職届御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、退職届御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
手順3:残業の少ない会社に転職する
転職する手順の3つ目は、残業の少ない会社に転職することです。
残業の少ない会社に転職するために確認すべきポイントは、以下の4つです。
・長時間分の固定残業代がないか
・タイムカードがあるか
・業務量と比較して人員が少なすぎないか
・写真数に対して採用人数が多すぎないか
これらのポイントを見ることで、長時間の残業やサービス残業を前提とした会社に気付くことが出来る可能性が高くなります。
そのため、これらの点に注意して転職先を探しましょう。
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まとめ
今回は、残業70時間が違法になるケースを説明した上で、対処法について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると、以下の通りです。
・平均残業時間は約24時間であり、月70時間の残業は平均を大幅に超えています。
・月70時間の残業をしていると、帰宅は22時頃となり、プライベートや家族との時間を取ることは困難となります。
・残業70時間が違法になるケースは、以下の4つです。
ケース1:36協定がない場合
ケース2:特別条項がない場合
ケース3:限度時間を超えて労働させる必要性がない場合
ケース4:残業代が支払われていない場合
残業70時間が常態化している場合の手取りと請求できる残業代は、月給別で以下の通りです。
・月給25万円の場合
手取り:29万0038円~32万8710円 残業代:492万1848円
・月給30万円の場合
手取り:34万8046円~39万4452円 残業代:590万0623円
・月給40万円の場合
手取り:46万4062円~52万5937円 残業代:787万5000円
・70時間分の固定残業代は違法ではありません。
・残業70時間の方が残業代を請求するステップは、以下の4つです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟
・残業を減らす対処法は、以下の4つです。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:労働基準監督署に相談する
対処法4:転職する
・転職する手順は、以下の3つです。
方法1:証拠を集める
方法2:退職届を出す
方法3:残業の少ない会社に転職する
この記事が70時間を超える長時間残業に悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。