能力不足なのだからサービス残業をするようにと言われて困っていませんか?
能力不足と言われると自分に落ち度があるようにも感じ、断っていいものか悩んでしまっている方もいるのではないでしょうか。
能力不足であってもサービス残業をさせることは違法です。
労働者は、能力不足であると感じる場合であっても、サービス残業に応じるべきではありません。
残業が発生する理由は、必ずしも能力不足だけではなく、責任感が強い労働者ほど、自分の能力に原因があると考えてしまいます。
能力不足を理由とするサービス残業を命じられた場合には、まずは残業の証拠を集めたうえで、弁護士に依頼し残業代を請求するか、又は、労働基準監督署に告発するという対処をするといいでしょう。
能力不足でサービス残業を命じられた場合に、解雇されるのではないか不安に感じるかもいるかもしれませんが、日本の法律では解雇についてはとても厳格な規制があります。
実は、私が多くの残業問題に取り組む中でも、能力不足にとどまらず、何らかの理由を付けて労働者にサービス残業を行わせる事例が少なくないのです。
この記事をとおして、少しでも多くの方に能力不足を理由にサービス残業を命じられても応じる必要がないことを知っていただければ幸いです。
今回は、能力不足を理由にサービス残業させるのは違法であることを説明したうえで、簡単な3つの対処法を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、能力不足を理由とするサービス残業についてよくわかるはずです。
目次
能力不足を理由にサービス残業させるのは違法!
能力不足を理由にサービス残業をさせるのは違法です。
労働基準法では労働者が時間外や休日、深夜に働いた場合には残業代(割増賃金)を支払わなければならないとされているためです。
これは残業の理由が能力不足であっても同様です。
当たり前ですが、従業員が能力不足である場合には残業代を支払わなくても良いとの規定はありません。
例えば、A氏とB氏がいて、A氏はB氏よりも1.5倍のスピードで業務をこなしているとしましょう。
A氏が8時間で終わる業務について、B氏が行う場合には12時間かかることになります。
つまり、B氏の場合には、1日でこの業務を行おうとすると、4時間の残業が発生してしまうことになります。
しかし、会社は、A氏8時間以内に業務が終わっていることやB氏の方がA氏よりも作業が遅いことを理由に残業代の支払いを拒むことはできません。
残業代は働いた時間について支払われるものであり、成果に対して支払われるものではないのです。
このように、会社は、従業員に対して、能力不足を理由にサービス残業をさせることはできません。
能力不足と感じてもサービス残業は行わない方がいい
従業員は能力不足と感じた場合でも、サービス残業は行わない方がいいです。
サービス残業は違法行為であり、会社側にもコンプライアンス上のリスクが生じることになります。
労働基準監督署から是正指導される可能性がありますし、上場審査に影響したり、刑事罰が科されたりすることもあります。
また、他の労働者からしても、サービス残業を行っている従業員がいると、残業の申告を行いにくくなってしまいます。
例えば、労働者がタイムカードを切って勝手に残業をしているというのが会社側の悩みの種になっていることもあります。
また、会社から命じられてサービス残業を行う場合でも1人が応じてしまうと、会社は他の労働者に対して、「●●さんは文句を言わずにおうじてくれてるよ」などと、サービス残業を正当化する口実に使われることになります。
このように労働者が自分自身に能力不足を感じる場合であっても、サービス残業を行うことは、会社や他の従業員に迷惑をかけることになるのです。
残業が発生する理由は能力不足だけではない
残業が発生する理由は、必ずしも能力不足だけではなく、責任感が強い労働者ほど、自分の能力に原因があると考えてしまいます。
残業が発生する原因には、能力不足以外にも、例えば以下の4つがあります。
原因1:人員不足
原因2:業務過多
原因3:業務内容
原因4:職場環境
それでは、各原因について説明します。
原因1:人員不足
能力不足以外で残業が発生する理由の1つ目は、人員不足です。
人が少ないと、一人が行う業務量が多くなってしまいます。
残業が必要な業務量がある場合であっても、他の従業員に割り振ることはできません。
そのため、人員不足の会社では残業が発生してしまいます。
原因2:業務過多
能力不足以外で残業が発生する理由の2つ目は、業務過多です。
人員が十分であっても、一人の従業員に仕事が集中してしまっていて、業務過多になっていることがあります。
会社の采配次第では残業が発生してしまうことになるのです。
そのため、割り振られている業務が過多の場合には、残業が発生してしまいます。
原因3:業務内容
能力不足以外で残業が発生する理由の3つ目は、業務内容です。
業務内容によっては労働時間が長時間にならざるを得ないことがあります。
とくに顧客の都合にあわせて、遅い時間にも働かなければいけないような場合には、労働者の能力にかかわらず、残業が発生してしまうことになるのです。
原因4:職場環境
能力不足以外で残業が発生する理由の4つ目は、職場環境です。
職場環境によっては、残業が当たり前となっていることがあります。
このような職場では、定時になっても帰りにくい環境となってしまっており、残業をせざるを得ないことがあるのです。
このような場合には労働者の能力にかかわらず残業をせざるを得ないことがあります。
能力不足を理由にサービス残業させられる場合の対処法
能力不足を理由とするサービス残業を命じられた場合には、労働者としても然るべき対応をしていく必要があります。
会社の言いなりになってしまっていては、働きやすい職場環境を守ることはできません。
具体的には、能力不足を理由にサービス残業を命じられた場合には、以下の対処をしていくことになります。
対処法1:働いた時間を証拠に残す【重要】
対処法2:弁護士に依頼し残業代を請求する
対処法3:労働基準監督署に告発する
それでは順番に説明していきます。
対処法1:働いた時間を証拠に残す【重要】
能力不足を理由にサービス残業を命じられた場合の対処法の1つ目は、働いた時間を証拠に示すことです。
証拠がないと、会社から残業はなかったと反論されてしまうためです。
とくにサービス残業については、労働時間の証拠が残されていないことが多く、労働者が残業をしたことを証明できずに終わってしまうこともよくあります。
例えば、タイムカードや勤怠記録は正確につけておくべきです。
もし、タイムカードや勤怠記録が会社にない場合には、一日の最初と最後のメールやチャット、家族に帰宅する旨の連絡をするLINEやメールなども証拠となります。
その他、ノートなどに働いた時間をメモしておくことでも有用です。毎日、働き始めた時間と、仕事を終えた時間を1分単位で正確に記載しておきましょう。
労働時間の証拠については、以下の記事で詳しく解説しています。
対処法2:弁護士に依頼し残業代を請求する
能力不足を理由にサービス残業を命じられた場合の対処法の2つ目は、弁護士に依頼し残業代を請求することです。
残業代を請求するには、時効を止めたうえで、残業代金を計算し、交渉を行うことになり、場合によっては裁判所を用いることを検討することになります。
法的な交渉、手続になりますので、専門家である弁護士に依頼することがおすすめです。
残業代請求の方法・手順については、以下の動画でも詳しく解説しています。
対処法3:労働基準監督署に告発する
能力不足を理由にサービス残業を命じられた場合の対処法の3つ目は、労働基準監督署に告発することです。
労働基準法では、労働者が1日8時間・週40時間以上働いた場合、週1日の法定休日に働いた場合、深夜10時~深夜5時までの間に働いた場合には、残業代を支払わなければならないとされています。
つまり、労働者が残業をしているにもかかわらず、残業代を支払わないというのは、労働基準法違反となるのです。
そのため、未払いの残業代を払ってほしいというよりは、職場環境の是正の指導をしてほしいという目的の場合には、労働基準監督署への告発も考えられます。
サービス残業の労働基準監督署への告発については、以下の記事で詳しく解説しています。
能力不足でサービス残業を拒否したら解雇される?
能力不足でサービス残業を命じられた場合に、労働者がこれを拒否したとしても、会社側は簡単に解雇をすることはできません。
解雇されるのではないかと不安に感じている労働者もいるかもしれませんが、日本の法律では解雇についてはとても厳格な規制があります。
能力不足を理由としたサービス残業を拒否した場合には、会社が行ってくる解雇としては以下の2つが想定されます。
解雇1:サービス残業の拒否を理由とする解雇
解雇2:能力不足を理由とする解雇
それぞれの解雇について順番に説明します。
解雇1:サービス残業の拒否を理由とする解雇
サービス残業の拒否を理由とする解雇は、行うことができません。
なぜなら、サービス残業を命じることが違法であるため、このような業務命令は濫用として無効となるためです。
例えば、「今日は仕事が終わるまで帰るな!タイムカードは切っておくように。」と指示されたとしても、そのような業務命令は違法であり、効力は認められないのです。
そのため、サービス残業の拒否を理由として解雇を行うことはできません。
残業の拒否を理由とする解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇2:能力不足を理由とする解雇
能力不足を理由とする解雇については、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当である場合に限り、行うことができるとされています。
なぜなら、日本の法律(労働契約法)では、解雇権濫用法理が規定されており、解雇は最終手段とされているためです。
例えば、能力が期待を大きく下回るか、会社の業務に支障が生じているか、業務改善指導をしているか、異動等により雇用を継続することが可能かといったことから有効性が判断されます。
会社側が、どのような出来事や根拠から労働者の能力が不足していると言えるのか、具体的に説明できない場合には、解雇は認められない傾向にあります。
能力不足を理由とする解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
残業代請求はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
残業代請求については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
残業代請求については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきます。
リバティ・ベル法律事務所では、残業代請求について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しておりますので、あなたの最善の解決をサポートします。
リバティ・ベル法律事務所では、残業代問題に関して、「初回相談無料」「完全成功報酬制」を採用していますので、少ない負担で気軽にご相談できる環境を整えています。
残業代の未払いに悩んでいる方は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。
まとめ
以上のとおり、今回は、能力不足を理由にサービス残業させるのは違法であることを説明したうえで、簡単な3つの対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・能力不足を理由にサービス残業をさせるのは違法です。
・従業員は能力不足と感じた場合でも、サービス残業は行わない方がいいです。
・残業が発生する原因には、能力不足以外にも、例えば以下の4つがあります。
原因1:人員不足
原因2:業務過多
原因3:業務内容
原因4:職場環境
・能力不足を理由にサービス残業を命じられた場合には、以下の対処をしていくことになります。
対処法1:働いた時間を証拠に残す【重要】
対処法2:弁護士に依頼し残業代を請求する
対処法3:労働基準監督署に告発する
・能力不足でサービス残業を命じられた場合に、解雇されるのではないか不安に感じるかもいるかもしれませんが、日本の法律では解雇についてはとても厳格な規制があります。
この記事が能力不足を理由にサービス残業を命じられて困っている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。