業務時間中に仕事が終わらず、会社からは定時になったら退勤するように言われているため、家に持ち帰って残業をしているということはありませんか。
家に持ち帰って仕事をすると、プライベートまで仕事に侵食されることになるため辛いですよね。
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持ち帰り残業自体、労働者にとっては苦痛なのに、更に残業代も出ないとなったら納得できない方が多いはずです。
例えば、塾講師や教員、保育士、システムエンジニア、管理職の方の中には、このような持ち帰り残業の悩みを抱えている方が多くいます。さらに、近年、働き方改革の影響で、会社が社内で残業を行うことを禁止していることもあり、持ち帰り残業の相談は増加しています。
結論からいうと、持ち帰り残業については、残業代を請求するための準備をすることが非常に重要となります。
なぜなら、持ち帰り残業について、残業代を請求するには、①会社からの指示があることと、②プライベートと業務時間を区別していることが必要だからです。
私の経験では、持ち帰り残業について、相談に来てくださる方のお話を聞くと、多くは証拠があれば残業代を請求できる可能性が高い事件です。
しかし、実際には、会社の指示や家で仕事をした時間を裏付ける証拠がなく、残業代請求を断念するということがよくあります。
そのため、持ち帰り残業については、何の対策もなく請求しようとすると失敗に終わってしまう可能性が高いのです。
これは、私が日々弁護士として話をしている中で、もっと早く相談にきていただければよかったと残念に感じることです。
しかし、事前にちょっとした3つの準備をすることで、持ち帰り残業についての残業代請求が成功する可能性を格段に向上させることができます。
残業代は過去2年間分を請求することができますので、ちょっとした準備を重ねれば、最終的に請求できる金額にも大きな影響がでてきます。
例えば、月給30万円(基本給のみ)の方が、土日・祝日・年末年始が休みで夏休み5日の場合に、1日2時間の持ち帰り残業(法定時間外労働)を就労日に毎日していたとすると、2年分の残業代は、
となります。
※年間就労日を240日としています
この記事では、以下の流れで持ち帰り残業について説明していきます。
この記事を多くの人に読んでいただき、プライベートを捨てて仕事をしたのに残業代をもらえなかったという方を少しでも減らすことができれば幸いです。
目次
持ち帰り残業は違法となる場合がある!
持ち帰り残業は、以下のいずれかの場合には、違法となることがあります。
①会社が持ち帰り残業を指示しているのに残業代を支払わない場合
②会社が持ち帰り残業を指示したことにより残業の限度時間を超える場合
③労働条件通知書に自宅が就業場所として記載されていない場合
それでは、順にみていってみましょう。
会社が指示しているのに残業代を支払わない場合は違法
会社の指示により労働者が持ち帰り残業をプライベートと区別して行っている場合には、会社が残業代を支払わないことは違法です。
なぜなら、労働基準法は、労働者が時間外労働を行った場合には、残業代を支払う義務があるとしているためです。
会社が残業代の支払いを怠った場合には、以下の罰則が定められています。
会社が指示していて限度時間を超える場合は違法
会社が指示して労働者に持ち帰り残業をさせた結果、残業時間が1か月で45時間、1年で360時間を超えた場合には、原則として違法となります。
なぜなら、働き方改革により、労働基準法は、時間外労働の限度時間を1か月45時間、1年360時間としたためです。
会社が労働者に対して限度時間を超えて労働させて場合には、以下の罰則が定められています。
就業場所との関係で問題
入社時において、自宅が就業場所と明示されていないのに、自宅における業務を命じることは、労働条件と異なるのではないか問題となります。
なぜなら、就業場所については、労働条件通知書で明示すべき事項とされているためです。
持ち帰り残業を命じられた場合には、労働条件通知書や就業規則で、就業場所を確認してみましょう。
持ち帰り残業に対する残業代は請求できる!
持ち帰り残業に対する残業代は請求することができます。
ただし、持ち帰り残業については、残業代を請求するためには、以下の2つの条件を満たさなければなりません。
①会社からの指示があること
②プライベートと業務時間を区別していること
なぜなら、これらの条件を満たす場合には、自宅で業務を行う場合であっても、会社に指揮命令されているものとして、労働時間に該当するためです。
そのため、持ち帰り残業についても、条件を満たせば残業代を請求することはできるのです。
以下では、①会社からの指示があることと、②プライベートと業務時間を区別していることについて、順に説明します。
①会社からの指示があること
会社からの指示には、明らかな指示がある場合と暗黙の指示がある場合の2つがありますので、それぞれ説明します。
明らかな指示がある場合
会社が労働者に対して、明示的に持ち帰り残業をするように命じた場合には、会社による明らかな指示があるといえます。
例えば、上司が、労働者に対して、「後の仕事は家でやってくるように」と口頭で言うような場合です。また、メールで同様の指示を行う場合もこれに当たります。
これに対して、単に「後の仕事を明日までにやっておくように」と述べただけでは、「家で」やるようにとまでは述べていないため、持ち帰ることについて明らかな指示があったとはいえません。この場合には、暗黙の指示があるかの検討をする必要があります。
そのため、「後の仕事は家でやってくるように」との発言の録音やメールなどの証拠がある場合には、明らかな指示があるものとして、会社の指示が認められます。
暗黙の指示がある場合
明らかな指示がなされなくても、暗黙の指示がある場合にも、会社からの指示があるとされます
暗黙の指示については、会社が「家で仕事をするように」と明示するわけではありません。そのため、様々な周辺事情から会社が持ち帰り残業を暗黙に指示していたことを認定することになります。
以下の事項に当てはまらないかを確認してみてください。
☑ 業務量が過大である場合
☑ 期限の設定が不適切である場合
☑ 時間外等にメールが送信されている場合
☑ 時間外等に労働しなければ生み出し得ないような成果物が提供されている場合
例えば、上司が「この仕事を明日までにやっておくように」と言った場合に、その仕事の量が明らかに明日までに終わる量ではなかったとしましょう。この場合には、会社は、残業をするように暗黙に指示しているものと評価できます。
具体的には、1日の労働時間は法律上8時間と決められていますので、指示された時期や期限に照らして、労働時間を超えてしまう可能性が高い場合には、業務量が過大又は期限の設定が不適切と言えるでしょう。
平成23年7月26日に行われた実際の裁判。
従業員が心不全で死亡したため、当該従業員の妻が労災の申請をしたところ、これが認められなかったため争いとなりました。
この従業員の妻は、心不全は会社における業務や持ち帰り残業がいずれも加重であったことが原因との主張をしています。
これについて、裁判所は、持ち帰り残業の明示の指示をしたかどうかにかかわらず、業務を期限までに終えるため、自宅に持ち帰って作業せざるを得ない状況であったといわざるを得ず、自宅作業についても業務性を認めることができるから時間外労働として計算すべきとしました。
その結果、業務が原因で死亡したものと認められて、不支給処分は取り消されています。
(参照:甲府地判平23.7.26労判1040号43頁[潤工社事件])
②プライベートと業務時間を区別していること
持ち帰り残業について、残業代を請求するためには、プライベートと業務時間を区別していることが必要です。
なぜなら、自宅で業務を行うという状況からは、業務の開始時刻と終了時刻が分かっていても、その間に家事を行ったり、休憩したりするなどプライベートな時間が含まれる可能性があるためです。
例えば、30分程度で作成できる成果物につき2時間ほどの時間をかけていたとしたら、その時間の中には私生活上の行為が介在していた可能性が高いことになります。
これに対して、成果物が実際に2時間程度を要するものであり、どの作業にどのくらいの時間を要したかなど説明できるのであれば、その時間については業務に専念していたといえることになります。
そのため、プライベートと業務時間を区別していたといえるには、パソコンのログイン・ログアウトの記録やメール送受信記録だけではなく、成果物や変更履歴、どの作業にどの程度の時間がかかったかのメモ等により業務に専念した時間を立証できる必要があります。
平成30年6月29日に行われた実際の裁判。
労働者が、長時間の残業を伴う過重な業務を命じられたことによりうつ状態となったとして、未払い残業代や損害賠償を請求した事案について、持ち帰り残業の労働時間制が問題となりました。
裁判所は、各証拠について以下のような理由で、プライベートと業務時間を区別したうえで、労働時間を裏付けるには足らないとしています。
⑴ パソコンのログオン・ログオフデータ
いずれもその間パソコンが起動中であったことを裏付けるにすぎず、具体的作業の内容を裏付けるものではない。
⑵ 電子ファイルのプロパティ上の総編集時間
ファイルを新規作成又はパソコン上で開いた時刻から名前を付けて保存ないし上書保存する時刻までの時間を意味するものであって、実際に作業していた時間を意味するものではない。
⑶ 業務日報
労働者が自らのために作成していたにすぎず、会社から作成を指示されたものではなく、これを会社に示して承認を得ていたものでもない。
(参照:東京地判平30.6.29[ツナガルホールディングス事件]労判ジャーナル81号42頁)
持ち帰り残業を制限されている場合でも残業代は請求できることがある
持ち帰り残業を制限されている場合であっても、それが形だけのものである場合には、残業代を請求することができます。
以下では、残業について事前申告制・事後報告制がとられている場合と、持ち帰り残業が禁止されている場合について、それぞれ説明していきます。
事前申告制・事後報告制が形だけのものである場合には残業代を請求できる
残業について事前申告制や事後報告が定められている会社でも、以下の場合には残業代を請求できる可能性があります。
・事前の申告や事後の報告に上限時間が設けられている場合(ex報告できるのは30時間まで等)
・実績どおりに申告や報告をしないように働きかけや圧力がある場合
・事前申告制や事後報告制が実質的に機能していない場合
なぜなら、形式的にこれらの制度がとられていたとしても、重要なのは会社の指揮命令があったかどうかだからです。
これらの制度が形だけのものである場合には、会社の指揮命令を否定する根拠にはなりません。
持ち帰り残業の禁止が形だけのものである場合には残業代を請求できる
職場において禁止されている場合には、持ち帰り残業は、会社の指揮命令下のものとはいえないので、労働時間に該当しないのが原則です。
しかし、持ち帰り残業の禁止が形式的なものにすぎず、実際には会社がこれを奨励していたり、黙認していたりする場合には、労働時間に当たる可能性があります。
サービス残業の黙認については、以下の記事で詳しく解説しています。
持ち帰り残業をしても残業代をもらうためにするべき3つの準備
持ち帰り残業について残業代を請求するためには、以下の3つの準備を行うことが重要です。
①会社の指示を裏付ける明確な証拠を集める
②業務に専念した時間を記録する
③成果物と業務時間・業務内容を会社に報告する
なぜなら、これらの準備を行うことで、会社からの指示及び業務時間とプライベートの区別を立証できる可能性が高まるためです。
冒頭でも説明しましたが、これらの準備をしていないために、持ち帰り残業について残業代の請求をすることができない方が多くいます。
それでは、順に確認していきましょう。
会社の指示を裏付ける明確な証拠を集める
まず、持ち帰り残業につき残業代を請求するには、会社の指示を裏付ける明確な証拠を集めることが大切です。
なぜなら、暗黙の指示にすぎない場合には、業務量や期限の不適切さをとおして、会社の認識を裏付けなければならず、明らかな指示がある場合に比して立証が大変だからです。
例えば、会社からの指示はメールでしてもらうのがおすすめですが、口頭の場合には録音などをすることにより証拠にします。
どうしても会社が指示を明らかにしない場合には、やむなく持ち帰り残業を行うことを会社にメールしましょう。
なぜなら、持ち帰り残業を申告したのに会社がこれを止めなかったことを暗黙の指示を裏付ける証拠とすることが考えられるためです。
さらに、暗黙の指示しか得られない場合には、業務日報により業務量を、指示書やメールにより社内残業が禁止されていることを裏付けましょう。また、業務が間に合わなくて会社から注意されたことなどがあれば、それも黙示の指示をうかがわせる証拠となります。
その業務に専念した時間を記録する
持ち帰り残業をするときは、その業務をした時間と業務内容を記録するようにしましょう。
業務をした時間については、開始時間と終了時間を記録するだけでは足りません。
なぜなら、開始時間と終了時間までの間に私生活上の行為が介在する可能性があるためです。
例えば、仕事の区切りごとに業務内容とかかった時間をメモしておきましょう。1つの区切りが数時間に及んでしまうようですと、本当にその時間業務に専念したのかが分かりにくくなります。そのため、メモはこまめにとるべきでしょう。また、休憩した時間などもメモしておきます。
そこで、開始時間と終了時間を記録するだけではなく、①作業の間にプライベートの行為が介在した場合にはこれを除外すること、②業務内容の具体的な作業ごとに要した時間を記録することが重要となります。
成果物と業務時間・業務内容を会社に報告する
持ち帰り残業が終了した場合には、会社に成果物と業務時間・業務内容を報告しましょう。
なぜなら、会社がこのような報告を受けて、承認した場合や特に異議を出さない場合には、持ち帰り残業が会社の指揮命令のもとに行われていたことが推認されるためです。
例えば、仕事が終わった時点で成果物を添付して、本文に業務時間と業務内容を記載して、メールするのがいいでしょう。
持ち帰り残業に対して残業代請求をする際に気になる2つの悩みを解消!
持ち帰り残業について残業代を請求しようとしている方の悩みとしてよく聞くのが、以下の2つの悩みです。
・情報の持ち出しが禁止されている場合にリスクはないかとの悩み
・会社から嫌がらせをされないかとの悩み
それでは見ていきましょう。
情報の持ち出しが禁止されている場合にリスクはないかとの悩み
情報の持ち出しが禁止されている会社において、これに違反した場合のリスクについては、以下の2つがあります。
①解雇されるリスク
②会社から損害賠償請求をされるリスク
それぞれについて説明します。
会社に害を与える目的がない場合には解雇は認められない傾向にある
情報の持ち出しを理由とする解雇は、労働者が会社に害を与える目的によらずに行った場合や会社の情報管理体制が不十分な場合には、無効とされる傾向にあります。
このような場合には、悪質性が高いとはいえないため、解雇は合理性、相当性を欠き濫用となるためです。
例えば、以下のような場合に解雇は認められないでしょう。
・会社の業務を遂行するためにやむなく行った場合
・会社に実害が生じていない場合
・会社の備品等を持ち帰ったわけではなく自己のUSB等に入れて持ち帰っていた場合
・会社において情報の管理が徹底されていない場合
これについては、以下の裁判例があります。
平成24年8月28日に行われた実際の裁判。
会社が労働者の顧客リストの送信行為を理由として懲戒解雇をした事案につき、
裁判所は、その動機が会社の営業を推進するためであって不正なものではないこと、会社に実害が生じていないことを理由に懲戒解雇を無効としています。
(参照:東京地判平24.8.28労判1060号63頁[ブランドダイアログ事件])
平成25年6月21日に行われた実際の裁判。
会社が労働者のハードディスク自宅持ち帰り行為をを理由として解雇した事案について、
裁判所は、当該ハードディスクが労働者の私物であること、会社において情報の管理が徹底されていないこと、持ち帰りによる情報漏えいの事実は認められないこと等を理由に解雇を無効としています。
(参照:大阪地判平25.6.21労判1081号19頁[丸井商会事件])
損害賠償請求は制限されている
持ち帰り残業のために資料やデータを持ち出したとしても、これにより会社に損害が生じていないのであれば、会社は労働者に対して損害賠償請求をすることはできません。
万が一、会社に損害が生じた場合であっても、会社の労働者に対する損害賠償請求が認められるのは、労働者に故意若しくは重大な過失が認められる場合に限定される傾向にあります。
また、仮に、重大な過失が認められる場合であっても、会社が請求できる金額は2分の1や4分の1に限定される傾向にあります。
なぜなら、会社は労働者が働くことにより利益を得ている以上は、損害を全て労働者に負担させるというのは公平とは言えないためです。
会社から嫌がらせをされないかとの悩み
労働者が持ち帰り残業につき残業代請求をしたことを理由に会社が嫌がらせをすることは許されません。
残業代請求をすることは労働者の権利ですので躊躇する必要はありません。
もしも、嫌がらせが不安な場合や人間関係から気まずいと感じる場合には、退職してから残業代を請求する方法もあります。
持ち帰り残業を無くすための対処法6つ
持ち帰り残業をなくすための対処法としては、以下の6つがあります。
①持ち帰り残業を拒否する
②明確な指示を仰ぐ
③残業代を請求する
④残業が辛いことを伝える
⑤労基署に相談する
⑥転職する
確かに、業務の効率を上げることができれば、一時的な解決にはなるかもしれません。しかし、そもそも、持ち帰り残業が必要となっているのは、本当に自分自身の能力の問題なのでしょうか。
持ち帰り残業の原因がその環境にある場合には、業務を効率化したところで、更に多くの業務を割り当てられるだけの場合もあります。
以下では、持ち帰り残業を根本的になくすための対処法を順に紹介していきます。
対処法1:持ち帰り残業を拒否する
最も分かりやすい対処法は、持ち帰り残業を拒否することです。
裁判例は、「使用者から持ち帰り残業の業務命令があっても労働者がこれに応じる義務はない」としています(東京地判平30.6.29[ツナガルホールディングス事件]労判ジャーナル81号42頁)。
そのため、労働者としては、会社から持ち帰り残業を命じられた場合でも、これに応じることはできない旨を伝えることが考えられます。
対処法2:残業が必要な場合には会社に明確な指示を仰ぐ
持ち帰り残業を拒否することに抵抗がある場合には、会社に対して、持ち帰り残業の指示を明確に行うように仰ぎましょう。
なぜなら、会社は、明確な持ち帰り残業の指示をすることに抵抗を感じ、持ち帰り残業の業務命令を撤回することがあるためです。
例えば、会社から明日までにやるようになどとの指示を受けたものの、持ち帰り残業をしなければ指示を達成できないような場合には、「家で残業した方がいいですか?」など尋ねてみるのがいいでしょう。
対処法3:これまでの残業代を請求する
会社から持ち帰り残業の指示をされ、労働者が実際に持ち帰り残業をプライベ―トと区別して行った場合には、その分の残業代を請求することが考えられます。
なぜなら、過去の残業代を請求するというのは、これからの残業代をなくすうえでは効果的なためです。
会社は、持ち帰り残業であっても労働時間に該当することを理解すれば、残業時間を減らすように努力するでしょう。また、残業を命じるにしても通常どおり社内における残業に切り替える可能性が高いでしょう。
例えば、残業代を払ってくださいと直接会社に相談する方法や残業代を請求したいことを弁護士に相談する方法があります。
対処法4:会社に残業が辛いことを伝える
会社に持ち帰り残業が辛いことを素直に伝えることも考えられます。
なぜなら、会社は、労働者の職場環境や安全に配慮する義務を負っているためです。このように残業で苦しんでいることを伝えられた場合には、会社としても配慮する必要が出てきます。
残業が辛いことを伝える場合には、可能な限り具体的に、現状を伝えるようにしましょう。
現状、どの程度の業務量があり、持ち帰り残業にどの程度の時間をかけており、業務内容は何であるか、持ち帰り残業のストレスが原因で何らかの症状が出ているのであればそのエピソードを伝えることで、会社としても、どのような配慮するべきかについての判断が可能となります。
対処法5:労基署に相談する
上記のような会社への働きかけで環境が改善しない場合には、労働基準監督署を利用することが考えられます。
先ほど説明したように、会社からの指示により持ち帰り残業をしているにもかかわらず残業代が支払われていない場合や限度時間を超える場合には、労働基準法上違法となります。
そして、労働基準法違反については、労働基準監督署に申告することで、調査や指導をしてもらうことができる場合があります。
そこで、労働基準監督署に持ち帰り残業について相談してみることも考えられるでしょう。
対処法6:転職する
これらの手段をとおしても、持ち帰り残業の現状が改善しない場合には、今の会社を辞めて他の会社に転職することも考えられます。
確かに、今の会社を辞めることに不安はあるでしょう。
しかし、本当に、そのような会社で働き続けていくことができるかについて、今一度考え直してみるべきです。
なお、会社を辞めた後でも、会社に対して残業代請求をすることができます。そのため、会社を辞めても、今まで働いた時間がなかったことになるわけではありませんので、この点については心配をする必要はありません。
平成31年4月1日の働き方改革以降、会社で残業ができず家に持ち帰って仕事をする人が増えています。
なぜなら、労基法上、時間外労働の上限が定められた結果、会社で残業しないように促す会社が増えたためです。
特に、以下のような職業では持ち帰り残業が多くなっています。
・ 塾講師・教員
塾講師や教員は、試験問題の作成や採点、生徒のノートチェック授業の準備などについて持ち帰り残業が多い傾向にあります。
・ 保育士
保育士は、たよりなどの書類や小道具の作成について、持ち帰り残業が多い傾向にあります。
・ システムエンジニア
システムエンジニアも、業務量が多く場所を問わず一人で業務をできるため持ち帰り残業が多い職業です。
・ 管理職
管理職も、通常の従業員に残業をさせることが難しい場合に、そのしわ寄せがいくため、持ち帰り残業が多い傾向にあります。
持ち帰り残業に対して残業代を請求したい場合は弁護士に相談をしましょう!
もしも、この記事を読んで、持ち帰り残業についてもっと知りたいと感じた場合や不安を解消したいと考えた場合には、弁護士に相談してみるのがおすすめです。
その理由は以下の4つです。
①持ち帰り残業について集めるべき証拠を指導してもらえる!
②持ち帰り残業以外の未払い残業代がないかも確認してもらえる!
③持ち帰り残業について会社から反撃されるリスクをについて分析してもらえる!
④初回無料相談を利用すれば費用がかからない!
それでは順に説明していきます。
持ち帰り残業について集めるべき証拠を指導してもらえる!
弁護士に相談すれば、持ち帰り残業について、どのような証拠を集めればいいのかを指導してもらうことができます。
持ち帰り残業については、プライベートの場で行われるものですので、会社が強く反論してくることが予想されます。
実際、持ち帰り残業については、事前に適切な助言を受け、残業代請求の準備をしていたかどうかが勝負の分かれ目となります。
そのため、持ち帰り残業について、残業代を請求した場合には、まずは弁護士に相談してどのような証拠を集める必要があるのかについて指導してもらうべきです。
持ち帰り残業以外の未払い残業代がないかも確認してもらえる!
弁護士に持ち帰り残業について相談すると持ち帰り残業以外の未払い残業代がないかについても確認してもらうことができます。
例えば、以下のような方は、持ち帰り残業以外にも未払い残業代が見つかる可能性があります。
☑ 社内残業もしていた方
☑ 会社から支払われる残業代が働いた時間よりも少ないと感じている方
☑ 会社が独自ルールにより残業代を支払わなかったり、カットしたりしている方
持ち帰り残業について会社から反撃されるリスクをについて分析してもらえる!
弁護士に相談すれば、持ち帰り残業について会社から反撃されるリスクについても分析してもらうことができます。
先ほどまでに見たように、情報の持ち出しが禁止されているような会社で、仕事を持ち帰っていた場合には、会社から反撃されるリスクがあります。
もしも、このようなリスクが気になり残業代を請求することに躊躇している場合には、弁護士に相談してみるのがいいでしょう。
初回無料相談を利用すれば費用がかからない!
弁護士の初回無料相談を利用すれば、費用をかけずに相談することができます。
そして、初回無料相談では、今ある証拠から持ち帰り残業について残業代を請求できる見通しなどもアドバイスしてもらうことができます。
初回無料相談を利用するデメリットは特にありません。
そのため、費用をかけて弁護士に依頼するかどうかは、初回無料相談で見通しを聞いてからら判断すればいいのです。
まとめ
以上のように、今回は、持ち帰り残業についての基本的な考え方と残業代請求を成功させるための準備と持ち帰り残業をなくすための対処法を解説しました。
簡単に要点をおさらいしてみましょう。
【持ち帰り残業について残業代請求をするために準備すべきこと】
・会社の指示を裏付ける明確な証拠を集める
・その業務に専念した時間を記録する
・成果物と業務時間・業務内容を会社に報告する
【持ち帰り残業をなくすための対処法】
・持ち帰り残業を拒否する
・残業が必要な場合に会社に明確な指示を仰ぐ
・残業代を請求する
・会社に残業辛いことを伝える
・労基署に相談する
・転職する
この記事に書いてあることを実践していただくことで、持ち帰り残業についての残業代請求が成功する可能性は大きく上昇するはずです。
この記事が少しでも持ち帰り残業に悩んでいる皆さまのお役に立つことができれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので気になるものがあれば読んでみてください。