会社からの解雇を拒否したいと悩んでいませんか?
結論から言うと、あなたは、解雇が不当であると感じた場合には、
と主張して、自分がまだ従業員であることを確認していくことができます。
解雇には、厳格な条件がありこれが許されるのは限定的な場合です。
解雇は、これが条件を満たしておらず濫用にあたるなどの不当な場合には、効力が生じないのです。
なお、解雇の場合、退職勧奨と異なり、労働者が承諾することは条件とされていません。そのため、解雇を争う場合に、「解雇を拒否する」というのは、少しニュアンスが異なります。
解雇が無効になるのは、以下のようなケースです。
・合理性や相当性がないケース
・解雇の手続きが守られていないケース
・解雇が禁止される場合に当たるケース
ただし、実際には解雇が無効な場合でも、あなたが具体的に行動していかなければ、会社は解雇の効力が生じていることを前提に手続きを進めてしまいます。
今回は、不当な解雇を拒否したいと考えている方が会社で働き続ける方法を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、解雇を拒否したい場合にどのように行動すればいいかがわかるはずです。
解雇された場合に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」は、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
解雇は拒否できる?退職勧奨との違い
結論から言うと、あなたは、解雇が不当であると感じた場合には、
と主張して、自分がまだ従業員であることを確認していくことができます。
解雇には、厳格な条件がありこれが許されるのは限定的な場合です。
解雇は、これが条件を満たしておらず濫用にあたるなどの不当な場合には、効力が生じないのです。
ただし、解雇の場合、退職勧奨と異なり、労働者が承諾することは条件とされていません。そのため、解雇を争う場合に、「解雇を拒否する」というのは、少しニュアンスが異なります。
労働者が退職する事由については複数ありますが、「辞職」「合意退職」「解雇」の3種類を比較すると、それぞれの意味が分かりやすくなります。
辞職とは、会社が承諾するかどうかにかかわらず、労働者が一方的に会社を退職するものです。
合意退職とは、労働者が会社との合意により退職するものです。
解雇とは、労働者が承諾するかどうかにかかわらず、会社が一方的に労働者を退職させるものです。
例えば、会社があなたに対して辞めるように促す退職勧奨は、合意退職の申し込みをするものであるため、あなたがこれを承諾しなければ、退職したことにはなりません。
つまり、退職勧奨の場合には、これを拒否することができます。退職勧奨の拒否については、以下の記事で詳しく解説しています。
これに対して、解雇は、「あなたが承諾するかどうかにかかわらず」、一方的に退職させるものであるため、あなたの意思は関係ありません。そのため、労働者がこれを拒否するということは予定されていません。その代わり、解雇は労働者の意思を無視するものである以上、これが有効となるには厳格な条件があるのです。
そのため、解雇を争う場合であっても、「解雇を拒否する」というのは少しニュアンスが異なり、実際には「解雇は濫用にあたり無効です」などと主張していくことが多いことになります。
会社側の発言が解雇なのか、退職勧奨なのか、不明確な場合があります。
例えば、「明日から来なくていい」と言われたり、「君には会社を辞めてもらう」と言われたりする場合です。
このような場合には、会社があなたに退職するように促しているのか、それともあなたの意思とは関係なく一方的に辞めさせるつもりなのかが、分かりにくくなっています。
つまり、このような場合には、「あなたは単に拒否をすればそれでいいのか」、「解雇の条件を満たしていないことを指摘して無効であること主張しなければいけないのか」の悩みが生じることになります。
そのため、解雇なのか、退職勧奨なのかが不明確な場合には、会社に対して、書面でその趣旨を明らかにするように求めるべきでしょう。
具体的には、「解雇通知書」か「退職勧奨通知書」をもらうべきでしょう。
解雇通知書のもらい方は以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨通知書のもらい方は以下の記事で詳しく解説しています。
解雇の無効を主張して働き続けることができる3つのケース
あなたが解雇の無効を主張して働き続けることができるのは、以下のような3つのケースです。
①合理性や相当性がないケース
②解雇の手続きが守られていないケース
③解雇が禁止される場合に当たるケース
①解雇は合理性と相当性がない場合には、濫用として無効となります。
例えば、能力不足を理由とする解雇であれば、数回ミスをした程度で会社に大きな損害が生じていない場合や会社から業務改善の指導をされていない場合には、合理性や相当性がないものとして濫用となる可能性があります。
②解雇の手続きが守られていない場合には、解雇が無効となることがあります。
例えば、懲戒解雇をする場合には、就業規則に懲戒事由と種別を規定していなければなりません。また、会社は、懲戒解雇をする前に、労働者に対して弁明の機会を付与する必要があります。
③解雇が禁止されている場合に当たる場合には、解雇は無効となります。
例えば、業務上の負傷・疾病の休業期間及びそのあと30日間に解雇される場合、産前産後休業期間及びその後30日間に解雇される場合です。
解雇が無効となる場合については、詳しくは以下の記事で説明していますので読んでみてください。
解雇が不当な場合のあなたの権利
解雇が不当な場合に、あなたが持っている権利としては、以下の3つがあります。
・解雇後も会社で働き続ける地位
・解雇後の給料
・慰謝料
順に説明していきます。
解雇後も会社で働き続ける地位
解雇が濫用である場合には、労働者は、会社に対して、
を持っています。
なぜなら、解雇が濫用である場合には、その解雇は無効となるためです。
そして、解雇後も会社で働き続ける地位を確認することにより、今後の労働者と会社の法律関係を明確にすることができます。
そのため、解雇を争う場合には、このような権利を確認していくことが一般的です。
解雇後の給料
解雇が濫用である場合には、労働者は、会社に対して、
を請求することができます。
解雇された後は、通常、会社から出勤することを拒否されます。そうすると、労働者は、働いていない以上、その分の給料は請求できないのではないか疑問に感じますよね。
しかし、解雇が無効である場合には、労働者が勤務することができなかった原因は会社にあります。
そのため、労働者は、解雇が不当である場合には、その後出勤していなくても、解雇された後の給料を請求することができるのです。
そして、解雇後の給料は、解雇されてから解決するまでの給料が支払われることになります。
そのため、労働者が解雇を争う場合、この解雇された後の給料の請求が最も大きな請求になることが多いのです。
ただし、解雇後に、他の会社で働いて収入を得ている場合には、他の会社で得た収入金額が平均賃金の6割を超える部分から控除されることに注意が必要です。
解雇後の給料については以下の記事で詳しく解説しています。
バックペイ(解雇後の賃金)については、以下の動画でも詳しく解説しています。
慰謝料
解雇の悪質性が高い場合には、労働者は、会社に対して、
を請求することができます。
不当解雇の慰謝料の相場は、
とされています。
不当解雇の慰謝料については、以下の動画でも詳しく解説しています。
働き続けるために今すぐやるべき4つの手順
解雇が無効な場合でも、あなたが具体的に行動していかなければ、会社は解雇の効力を生じていることを前提に手続きを進めてしまいます。
そのため、あなたが、解雇が不当なのではないかと感じたらすぐに行動に移すべきです。
具体的には、以下の4つ手順を行いましょう。
手順1:解雇理由証明書の請求
手順2:解雇の撤回要求
手順3:交渉
手順4:労働審判・訴訟
手順1:解雇理由証明書の請求
働き続けるためにするべき手順の1つ目は、解雇理由証明書の請求です。
解雇理由証明書とは、あなたが解雇された理由や根拠となる就業規則が具体的に記載された書面です。
あなたは、解雇理由証明書を請求することで自分が解雇された理由を知ることができますので、解雇が不当かどうか、解雇を争う場合にはどのような証拠を集めればいいのかを判断することができます。
会社は、労働者からの請求があった場合には、労働基準法上、解雇理由証明書を交付する義務があります。
解雇理由証明書を請求する方法については以下の記事で詳しく解説しています。
手順2:解雇の撤回要求
働き続けるためにするべき手順の2つ目は、解雇の撤回要求です。
解雇理由を確認し、解雇通告に合理的な理由や相当性がない場合には、解雇の撤回を要求しましょう。
また、併せて、解雇日以降の業務を指示するように求めておきましょう。あなたが解雇日よりも後の賃金を請求するには、会社から業務を命じられればこれに応じる意思を持っていることが必要となるためです。
手順3:交渉
働き続けるためにするべき手順の3つ目は、交渉です。
会社との間で、双方の主張につき折り合いがつくかどうかを協議することになります。
手順4:労働審判・訴訟
働き続けるためにするべき手順の4つ目は、労働審判や訴訟です。
話し合いでの解決が難しい場合には、裁判所を用いた手続きを検討することになります。
労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。労働審判を経ずに訴訟を申し立てることもできます。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
解雇の有効性を認める行動はとらないように注意
あなたが解雇を争いたいと考えている場合には、解雇を承諾するような行動はとるべきではありません。
先ほど説明したように、解雇をする際に、あなたの「承諾」は条件となっていません。
そのため、あなたが解雇を拒否する意思を示したとしても、それは直ちに解雇の効力を否定することにはなりません。
ただし、あなたが解雇の有効性を認める行動をとってしまうと、あなたに不利益に考慮されてしまう可能性があります。
具体的には、会社側から以下のような反論をされてしまうリスクがあります。
・解雇が有効であると信頼させる行動をしておきながら、それと矛盾する主張を行うことは信義則に反し許されないとの反論
・あなた自身が解雇の合理性や相当性を認めていたのだから、解雇は濫用に当たらないとの反論
そのため、解雇が不当であり、これを争う意思がある場合には、以下のような行動は控えておきましょう。
①解雇予告手当や退職金を受け取る
②解雇を争う意思があることを示さずに、離職票の請求や健康保険証の返還、私物の引き取りをする
③失業保険の本受給をする
④再就職先が決まっていることを会社に伝える
①解雇予告手当や退職金は、解雇が有効であることを前提とするものです。そのため、これを受領することは、解雇を争うことと矛盾してしまいます。一方的に、解雇予告手当や退職金が振り込まれてしまった場合には、解雇後の賃金として受領する旨を会社に伝えましょう。
②離職票の請求や健康保険証の返還、私物の引き取りについても、あなたが会社を退職することを前提とするものです。ただし、これらについては、受領や返還に応じないと、生活に困ったり、トラブルの原因になったりします。そのため、解雇を争う意思があることを示したうえで、受領や返還を行うことになります。
③失業保険については、退職した場合に受給できるものです。しかし、あなたが解雇を争う場合には、あなたの認識としては未だ退職していないことになります。そこで、失業保険の本受給をしてしまうと矛盾してしまいます。このような場合のために、失業保険の仮給付と言う制度がありますので、これを活用しましょう。
失業保険の仮給付については以下の記事で詳しく解説しています。
④再就職先が決まっている場合でも、これをあえて会社に伝えることは退職を前提とするものとされるリスクがありますのでやめておきましょう。
解雇が不当である場合の復職以外の選択肢
解雇が不当であると感じた場合であっても、選択肢は復職だけではありません。
実際、解雇を争っている事案であっても、退職を前提とした金銭的な和解が成立するケースも多いのです。
退職を前提とした金銭解決が成立する場合の解決金の相場は、賃金3か月分~6か月分程度と言われています。
ただし、事案により異なりますので、賃金の1年分以上の解決金が認められる事案もあります。
解雇の解決金については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、当初より、復職を前提とせずに、再就職までの賃金相当額の逸失利益と慰謝料のみを損害賠償として請求することもできます。
そのため、あなたは、解雇を争う場合であっても、必ずしも復職することになるわけではないのです。
不当解雇の相談先3つ
不当解雇の相談先には、主に以下の3つがあります。
・弁護士
・労働組合
・労働局|総合労働相談センター
これらの相談窓口は、それぞれ以下のような方におすすめです。
各相談先の特徴は、以下のとおりです。
不当解雇の相談先については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇の疑問についてまずは弁護士に相談してみよう
あなたが解雇に疑問を感じた場合にはまずは弁護士に相談してみましょう。
解雇が有効かどうかは法的な評価を含む問題ですので、法律の専門家、特に解雇問題に力を入れている弁護士に相談するのがいいでしょう。
弁護士に相談すれば、あなたの解雇が法的に有効なのかどうか、あなたにどのような権利があるのか、その見通しを教えてもらうことができます。
また、あなたが解雇を争う場合に、具体的にどのようなことをすべきで、どのようなことに注意するべきなのかについても、助言してもらうことができます。
初回無料相談をしている弁護士であれば、費用をかけずに相談することができますので、これを利用するデメリットは特にありません。
そのため、解雇に疑問を感じた場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめなのです。
まとめ
以上のとおり、不当な解雇を拒否したいと考えている方が会社で働き続ける方法を解説しました。
この記事の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。
・あなたは、解雇が不当であると感じた場合には、「解雇は濫用にあたり無効です」などと主張して、自分がまだ従業員であることを確認していくことができます。ただし、労働者の承諾は解雇の条件ではないので、「解雇を拒否する」というのは少しニュアンスが異なります。
・あなたが解雇の無効を主張して働き続けることができるのは、①合理性や相当性がないケース、②解雇の手続きが守られていないケース、③解雇が禁止される場合に当たるケースです。
・解雇が不当な場合に、あなたが持っている権利としては、①解雇後も会社で働き続ける地位、②解雇後の給料、③慰謝料の3つがあります。
・解雇が不当だと感じた場合に働き続けるためにやるべきこととしては、①解雇理由証明書の請求、②解雇の撤回要求、③交渉、④労働審判・訴訟の4つがあります。
この記事が解雇を拒否したいと考えている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。