会社から退職した場合の特別退職金の提案をされて悩んでいませんか?
普通の退職金との違いがよくわからず、会社からの提案に応じるべきなのか、応じるとどうなるのかもよく分かりませんよね。
特別退職金とは、退職に応じる代わりに通常の退職金に割り増して支給される退職金のことです。
特別退職金がもらえるのはリストラや能力不足等により会社側から退職勧奨がされるケースです。
特別退職金の相場は、賃金の3か月分~6ヶ月分程度ですが、あくまでも相場であり法律上の決まりはありません。外資系企業などでは1年~1年半分の特別退職金が提案されることもあります。
特別退職金を増額したい場合には正しい手順で交渉を行う必要があり、誤った方法で交渉をしても増額してもらうことはできません。
特別退職金の交渉を行う場合には、「解雇」や「退職勧奨の撤回」のリスクを見据えたうえで、行っていく必要があります。
特別退職金については、税務上は退職所得して扱われ、会計上は特別損失として処理されることになります。
実は、私が多くの退職勧奨の相談を受ける中でも、特別退職金のことをよくわからずに誤った理解や交渉を行ってしまっている方が非常に多いのです。
この記事をとおして、多くの方に特別退職金について正しい知識を身に着けていただければと思います。
今回は、特別退職金とは何かその意味を説明したうえで、相場や交渉手順、税金・会計処理の取り扱いを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、特別退職金についてよくわかるはずです。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
特別退職金とは?特別退職金の意味や定義
特別退職金とは、退職に応じる代わりに通常の退職金に割り増して支給される退職金のことです。英語で言うとseverance payです。
通常の退職金は会社に退職金規程がある場合に、これに基づいて支給されます。
これに対して、特別退職金は、退職金規程の有無にかかわらず、会社が労働者に退職に応じてもらうために任意に支給するものです。つまり、退職金制度がない会社でも支払われる可能性があるものです。
会社は、法律上、特別退職金の支給義務を負っているわけではありません。労働者は会社から特別退職金の提案があった場合には、これを支給してもらえることがあります。
労働者としても、再就職までの生活に不安を抱えている方が多いですが、特別退職金の提案があれば退職に応じることを検討しやすくなります。
そのため、会社は、退職に納得してもらうため、労働者に対して、本来は支払義務や支払いの規定がない場合でも、特別退職金を支払うことがあるのです。
severance payについては以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金がもらえるのは退職勧奨のケース
会社から特別退職金がもらえるのは退職勧奨のケースです。
会社は特別退職金を退職するように説得する材料として提案するためです。
例えば、以下の2つのケースでは特別退職金がもらえることがあります。
ケース1:リストラによる退職勧奨
ケース2:能力不足等による退職勧奨
それでは、それぞれのケースについて説明します。
リストラによる退職勧奨
特別退職金がもらえるケースの1つ目は、リストラによる退職勧奨の場合です。
リストラとは、事業の再構築や事業構造の変革のために人員を削減することです。
例えば、ある日、あなたのポジションないし職種を維持することが難しくなり、削減の対象となった旨を告げられます。
その際に、会社から退職合意書を示され、退職に応じてくれれば、この特別退職金を支給するなどと言われます。
リストラについては、以下の記事で詳しく解説しています。
リストラについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
能力不足等による退職勧奨
特別退職金がもらえるケースの2つ目は、能力不足等による退職勧奨です。
会社は、労働者のパフォーマンスが芳しくない場合に退職を求めてくることがあります。
例えば、業務改善指導を繰り返され、ある日、このままあなたを雇用し続けることは難しいと告げられます。
その際に、解雇することもできるが、解雇となると再就職の際に印象が悪いので、自ら退職するようにと言われます。
同やり取りの中で、労働者が退職に応じることに難色を示しているような場合には、特別退職金が提案されることがあります。
能力不足を理由とする解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
~早期退職制度・希望退職制度等~
会社内で、早期退職制度・希望退職制度が設けられ、特別退職金が設定されることがあります。
早期退職制度とは、定年前に有利な条件により退職する方を募るものです。
希望退職とは、企業が人員削減のため有利な条件により退職する方を募るものです。
これらの場合には、個別に特別退職金の金額が決められるのではなく、制度として特別退職金の金額が決められていることがあります。
特別退職金の相場は賃金の3か月分~6か月分
特別退職金の相場は、賃金の3か月分~6か月分です。
もっとも、特別退職金の金額について法律上の決まりなどがあるわけではありません。
会社から最初に提案される金額は勤続年数に応じて決められることが多いです。
通常勤続1年×1か月分程度が基準とされる傾向にあります。労働者に落ち度のないリストラの場合にはこれにいくらか割増して提案されることが多く、パフォーマンス不足などの労働者側の事情の場合にはいくらか減額して提案されることが多いです。
会社から提案された金額を増額できるかどうかについては、交渉力次第となります。
具体的には交渉力については以下のような要素で決まってきます。
視点1:解雇するだけの理由があるか
視点2:勤続年数がどの程度か
視点3:残業代等の未払い賃金があるか
視点4:外資系企業本土の慣習
視点5:外国本社の意思が強固か
視点6:業務に応じることが可能か
視点7:貯金がどの程度あるか
視点8:今後の再就職等が決まっているか
外資系企業の特別退職金の金額の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金の増額交渉手順
特別退職金の金額を増額したいと考えた場合には交渉を行う必要があります。
もっとも、特別退職金の交渉は非常に繊細で1つ1つの発言に注意する必要があります。
特別退職金の増額は正しい手順で交渉を行う必要があり、誤った方法で交渉をしても増額してもらうことはできません。
具体的には、特別退職金の増額交渉手順は以下のとおりです。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
手順4:退職合意書に署名押印を行う
それでは、各手順について順番に説明していきます。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
特別退職金の増額交渉手順の1つ目は、提案された条件では退職に納得できないことを示すことになります。
特別退職金については退職したくない労働者を説得するために提案されるものです。
既に退職に納得した労働者に対しては増額する必要はありません。
そのため、特別退職金を増額したいと考えた場合には、提案された条件では退職したくない旨を明確にすることになります。
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
特別退職金の増額交渉手順の2つ目は、特別退職金の金額につき交渉を行うことです。
詳細な条件を詰める前に、まずは大まかな特別退職金の金額を交渉することになります。
特別退職金の金額が決まる前に退職日や退職理由を決めてしまうと、金額の交渉が決裂した場合にリスクとなります。
そのため、退職勧奨の際に特別退職金の増額交渉を行う場合には、他の条件を協議する前に金額を協議するべきです。
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
特別退職金の増額交渉手順の3つ目は、退職日や退職理由につき交渉を行うことです。
特別退職金の金額が決まったら、その後に退職日や退職理由を協議していくことになります。
退職条件の交渉については以下の記事で詳しく解説しています。
手順4:退職合意書に署名押印を行う
特別退職金の増額交渉手順の4つ目は、退職合意書に署名押印を行うことです。
退職の条件がまとまったらその内容を退職合意書にします。
退職条件を書面にしておかないと、後から「言った言わない」の水掛け論になり得ます。
例えば、退職条件を書面にせずに、退職届だけを出してしまうと、特別退職金を支給してもらえなかったり、異なる退職日で処理されたりした場合にリスクとなります。
退職合意書については、以下の記事で詳しく解説しています。
外資系企業における英文の退職合意書については、以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金を交渉する場合の2つのリスク
特別退職金を交渉する場合には、労働者にとってもリスクがあります。
なぜなら、特別退職金の交渉が膠着状態になった場合に会社側が次のアクションに出てくることが想定されるためです。
具体的には、特別退職金を交渉する場合のリスクは以下の2つです。
リスク1:解雇
リスク2:退職勧奨の撤回
それでは、それぞれのリスクについて説明します。
リスク1:解雇
特別退職金を交渉する場合のリスクの1つ目は、解雇です。
解雇とは、労働者の意思とは関係なく、会社が一方的に労働者を辞めさせることです。
もっとも、解雇は労働者の合意がない分、法律上、厳格な労働条件が必要とされています。
解雇の条件が満たされていない場合には解雇は無効となり、会社は解雇後の賃金を遡って支払わなければなりません。
バックペイ(解雇後の賃金)については、以下の動画でも詳しく解説しています。
特別退職金の増額交渉を行う場合には、解雇リスクについて適切に分析する必要があります。
解雇の条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
リスク2:退職勧奨の撤回
特別退職金を交渉する場合のリスクの2つ目は、退職勧奨の撤回です。
退職勧奨の撤回とは、会社が退職勧奨を取りやめて、そのまま働き続けても構わないと述べるような場合です。
退職勧奨が撤回された後は、労働者が特別退職金をもらいたいと考えてももらうことはできません。
もしも、労働者が会社を退職したいと考えた場合には、自分で退職届を出して、特別退職金をもらわずに退職することになります。
特別退職金と税金・会計処理
特別退職金については、税務上、退職所得として処理されることになります。会計上は、通常の退職金とは異なる臨時の支出として特別損失として処理されます。
労働者は、特別退職金の支給を受ける場合には、会社に対して、退職日までに退職所得の受給に関する申告書を提出することになります。
会社は、特別退職金の税金を源泉徴収することになります。
課税の対象は、退職金額から勤続年数に応じた退職所得控除額を差し引いた残りの2分の1の金額部分に限られます。
そのため、特別退職金は、給与に比べて、節税効果が高いと言われています。
勤続年数に応じて計算されますので、具体的な計算方法は以下の国税庁のページをご覧ください。
No.2732 退職手当等に対する源泉徴収|国税庁 (nta.go.jp)
ただし、退職所得の受給に関する申告書の提出を怠ると一律に20.42%の源泉がされてしまいますので、注意しましょう。
なお、最終的には実態に即して判断されることに留意が必要です。
退職勧奨の際の特別退職金の交渉はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
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この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇された場合の見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、会社の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
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まとめ
以上のとおり、今回は、特別退職金とは何かその意味を説明したうえで、相場や交渉手順、税金・会計処理の取り扱いを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・特別退職金とは、退職に応じる代わりに通常の退職金に割り増して支給される退職金のことです。
・特別退職金がもらえるケースの例としては以下の2つがあります。
ケース1:リストラによる退職勧奨
ケース2:能力不足等による退職勧奨
・特別退職金の相場は、賃金の3か月分~6か月分です。
・特別退職金の増額交渉手順は以下のとおりです。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
手順4:退職合意書に署名押印を行う
・特別退職金を交渉する場合のリスクは以下の2つです。
リスク1:解雇
リスク2:退職勧奨の撤回
・特別退職金については、税務上、退職所得として処理されることになります。会計上は、通常の退職金とは異なる臨時の支出として特別損失として処理されます。
この記事が特別退職金について知りたいと考えている労働者の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。