労働一般

働き方改革関連法-働き方改革により何が変わるのか-

 2018年に働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(以下、「働き方改革関連法」といいます。)が成立し、改正後の労働基準法等が2019年4月から順次施行されています。
 今回は、働き方改革による改正の概要を分かりやすく解説します。

働き方改革関連法とは

 働き方改革関連法とは、8本の労働法の改正を行うための法律です。改正される法律は、以下のとおりです。

1 労働基準法
2 じん肺法
3 雇用対策法
4 労働安全衛生法
5 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
6 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
7 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
8 労働契約法

 働き方改革関連法は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進することを目的として、①長時間労働の是正、②多様で柔軟な働き方の実現、③雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等のための措置を講じています。
※下記では、経過措置についても適宜触れますが、主要なものにとどめていますので、正確には働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則等をご確認ください。

労働基準法の改正

フレックスタイム制の拡充

 フレックスタイム制とは、労働者が、1カ月などの単位期間のなかで一定時間数(契約期間)労働することを条件として、1日の労働時間を自己の選択する時に開始し、かつ終了できる制度です。
 働き方改革による改正により、労働時間調整を行うことのできる清算期間の上限が1か月から3か月に延長となります
 これまでは、1か月以内の清算期間における実労働時間があらかじめ定めた総労働時間を超過した場合には時間外労働となり、実労働時間が総労働時間に足りない場合には欠勤扱いとされていました。清算期間を1か月よりも延長することにより、更に柔軟に労働時間を調整することが可能となります。

施行時期

 フレックスタイム制の拡充の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。

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時間外労働の上限規制

 労働基準法では、労働時間は1日8時間、週40時間までとされています。使用者は、これを超えて時間外労働を命じる場合には36協定の締結・届出が必要とされています。
 36協定で定めることができる時間外労働の上限につき、従来は、告示で1カ月45時間、1年360時間と定められているのみでした(平成10年労告154号)。そのため、時間外労働の上限については、強行的効力はなく、これに反する三六協定も行政指導をされることはあっても効力は有効とされていました。
 しかし、働き方改革により、労働基準法により36協定の限度時間の上限が定められることとなります。「限度時間」は、1カ月につき45時間、1年につき360時間です(労働基準法36条4項)。
 ただし、1年のうち6カ月以内での特別協定による時間外労働を許容しています。その場合、時間外労働の特別の上限は、1カ月100時間未満、1年720時間とされています。(労働基準法36条5項)。

施行時期・適用猶予・経過措置

⑴ 施行時期
 時間外労働上の上限規制の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。
⑵ 適用猶予
 もっとも、建設事業、自動車運転の業務、医師については、2024年3月31日まで上限規制の適用が猶予されています(労働基準法139条2項、140条2項、141条4項)。また、2024年4月1日以降についても、例外的な取り扱いがなされています(労働基準法130条1項、140条1項、141条1項、2項、3項)。
 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業については、2024年3月31日まで、時間外・休日労働協定に特別の条項を設ける場合の1箇月についての上限、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限についての規定は、適用が猶予されています(労働基準法142条)。2024年4月1日以降については、これらの規定も全面的に適用されることになります。
⑶ 経過措置
 経過措置として、改正後の労働基準法36条の規定は、2019年4月1日以後の期間のみを定めている時間外・休日労働協定について適用するものであるとされ、2019年3月31日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日までの間については、なお従前の例によるとされています(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則2条)。
 中小企業主の事業に係る時間外・休日労働協定については、2020年4月1日から改正後の労働基準法36条の規定の適用があるとされています。中小企業主の場合、改正後の労働基準法36条の規定は、2020年4月1日以後の期間のみを定めている時間外・休日労働協定について適用するものであるとされ、2020年3月31を含む期間を定めている時間外・休日労働協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日までの間については、なお従前の例によるとされています(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則3条、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について[平成30年9月7日基発0907第1号]18頁乃至19頁)。

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年5日の年次有給休暇の確実な取得

 働き方改革により、使用者は、年休が10日以上発生した労働者については、その日数のうち5日については、労働者ごとにその時季を定めることにより年休を与えることが義務化されました(労働基準法39条7項)。
 使用者がこの義務に違反した場合には、30万円以下の罰金に処されます(労働基準法120条)。

施行時期・経過措置

⑴ 施行時期
 年5日の年次有給休暇の確実な取得の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。
⑵ 経過措置
 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律施行の際4月1日以外の日が基準日(年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとした場合はその日)である労働者に係る年次有給休暇については、同法律施行の日後の最初の基準日の前日までの間は、改正後の労働基準法39条7項の規定にかかわらず、なお従前の例によることとし、改正前の労働基準法39条が適用されます(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則4条)。

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高度プロフェッショナル制度の創設

 高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度をいいます(労働基準法41条の2)。
 働き方改革により、新たに導入される制度です。
 もっとも、高度プロフェッショナル制度の導入事例は、令和元年12月末時点において、わずか11件と低迷しています。

施行時期

 高度プロフェッショナル制度の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。

厚生労働省:高度プロフェッショナル制度に関する届出状況(令和元年度)

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月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ

 60時間を超える時間外労働については、基礎賃金の5割以上の割増賃金を支払わないとならないとされています(労働基準法37条1項但書)。
 中小事業主については、当分の間、上記60時間を超える場合の割増率の適用が猶予されていました(労働基準法附則138条)。働き方改革により、中小事業主に対する適用猶予が廃止されます

施行時期

 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げについての中小事業主の猶予措置の廃止に係る改正規定の施行期日は、2023年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条但書3号)。

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労働条件の明示

 働き方改革により、使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により明示しなければならないとされている労働条件について、事実と異なるものとしてはならないとされました(労働基準法施行規則5条2項)。「事実と異なるもの」とは、労働基準法15条2項において、労働者が即時に労働契約を解除することができるとされる場合と同様に判断されます(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について[平成30年9月7日基発0907第1号]25頁乃至26頁)。
 また、働き方改革により、使用者は、労働条件明示の方法について、労働者が希望した場合には、①ファクシミリの送信、②電子メール等の送信(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成ることができるものに限る、)により明示することが可能になりました(労働基準法施行規則5条4項)。

施行時期

 労働条件の明示に関する規則の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。

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過半数代表者の選任

 働き方改革により、過半数代表者の要件として、「使用者の意向に基づく選出されたものではないこと」が追加されました(労働基準法施行規則6条の2第1項第2号)。また、使用者は、過半数代表者がその事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮行わなければならないとされました(労働基準法施行規則6条の2第4項)。

施行時期

 労働条件の明示に関する規則の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。

じん肺法の改正

 働き方改革により、「労働者の心身の情報に関する取扱い」の規定が追加されます。

施行時期

 じん肺法の上記改正の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。

雇用対策法の改正

 働き方改革により、法律の名称が「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」となり、基本的理念や努力義務、基本方針等が追加されます。

施行時期

雇用対策法の上記改正の時期は、公布の日(2018年7月6日)とされています(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条但書1号)。

労働安全衛生法の改正

産業医・産業保健機能

 働き方改革により、長時間労働やメンタルヘルス不調などにより、健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、産業医による面接指導や健康相談等を確実に実施するようにします(労働安全衛生法13条3項乃至6項、13条の2、13条の3、19条の3)。

長時間労働者に対する面接指導

 働き方改革により、長時間労働やメンタルヘルス不調などにより、健康リスクが高い労働者を見逃さないため、医師による面接指導が確実に実施されるようにし、労働者の健康管理を強化します(労働安全衛生法66条の8の2、66条の8の3、66条の8の4)。

施行時期

 労働安全衛生法の上記改正の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。

派遣法の改正

 働き方改革により、派遣先に雇用される通常の労働者(無期雇用フルタイム労働者)と派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消する「派遣労働者の同一労働同一賃金」を目指しています。具体的には、①待遇を決定する際の規定の整備(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「派遣法」といいます。)30条の3乃至30条の7)、②派遣労働者に対する説明義務の強化(派遣法31条の2)、③裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備(派遣法47条の4乃至47条の9)等をしています

施行時期

 派遣法の上記改正の施行時期は、2020年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条但書2号)。

労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正

 働き方改革により、新たに、①勤務間インターバル制度の導入に勤めること(労働時間等の設定に関する特別措置法2条1項)、②他の企業との取引に当たって、著しく短い期限の設定(短納期発注)や発注の内容の頻繁な変更を行わないよう努めることが事業主の努力義務になります(労働時間等の設定に関する特別措置法2条4項)。また、③労働時間等設定改善企業委員会の決議に係る労働基準法の適用の特例が設けられました(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法7条)

施行時期

 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の上記改正の施行時期は、2019年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条)。

勤務間インターバル制度2018年働き方改革関連法に基づき、我が国でも、勤務間インターバル制度が規定されました。今回は、勤務間インターバル制度について解説します。...

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の改正

 働き方改革により、法律の名称が「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」から「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、「パートタイム・有期雇用労働法」といいます。)になります。これにより有期雇用労働者にも、同法の適用があることになります
 また、正社員との間の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」を目指すため、①待遇を決定する際の規定の整備・統合(パートタイム・有期雇用労働法8条乃至13条)、②派遣労働者に対する説明義務の強化(パートタイム・有期雇用労働法14条)、③裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備(パートタイム・有期雇用労働法22条乃至26条)等をしています

施行時期・経過措置

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の上記改正の施行時期は、2020年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条但書2号)。
 中小事業主については、経過措置として、2021年3月31日までの間、改正後のパートタイム・有期雇用労働法第2条第1項、第3条、第3章第1節(第15条及び第18条第3項を除く。)及び第4章(第26条及び第27条を除く。)の規定は、適用されません。この場合において、改正前の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第2条、第3条、第3章第1節(第15条及び第18条第3項を除く。)及び第4章(第26条及び第27条を除く。)の規定並びに第8条の規定による改正前の労働契約法第20条の規定は、なおその効力を有します(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則11条)。

同一労働同一賃金の原則-正社員との不合理な待遇差がある場合-正規労働者と非正規労働者との待遇差を是正する考え方として同一労働同一賃金というものがあります。近時、同一労働同一賃金のもとに格差を是正する規定も整備されてきました。今回は、同一労働同一賃金の原則について解説します。...
パートタイム労働者の法律関係パートタイム労働者がその有する能力を有効に発揮するためには、適正な労働条件を確保することが重要となります。今回は、パートタイム労働者の法律関係について、一般の労働者との相違点等を踏まえつつ解説します。...

労働契約法の改正

 働き方改革により、有期雇用労働者にパートタイム・有期雇用労働法が適用されることとなるため、従前、有期雇用労働者に関して不合理な労働条件の禁止について定めていた労働契約法20条は削除されます

施行時期

 労働契約法の上記改正の施行時期は、2020年4月1日です(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則1条但書2号)。
 もっとも、前述したように、中小事業主については、経過措置として、2021年3月31日までの間、改正前の労働契約法第20条の規定は、なおその効力を有します(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律附則11条)。

働き方改革関連法参考リンク

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 法律条文

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 法律新旧対照条文

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署:働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)

京都労働局:働き方改革関連法の主な内容と施行時期

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)

厚生労働省・都道府県労働局:平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>

厚生労働省・都道府県労働局:パートタイム・有期雇用労働法が施行されます

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