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管理職なのにタイムカード?管理監督者性が否定されやすいケース5つ

管理職なのにタイムカード?管理監督者性が否定されやすいケース5つ

管理職なのにタイムカードを打刻していることについて疑問に感じていませんか

本来、管理職とは、労働時間についてある程度裁量をもって働くことができる立場のはずであり、会社に労働時間を把握されることに矛盾を感じますよね。

結論としては、管理職であっても、タイムカードを打刻していること自体は不自然なことではありません

なぜなら、会社には、管理職を含めた労働者の健康に配慮する義務があり、過労などを防ぐためにどの程度の時間労働しているかを把握する義務があるためです。

むしろ、管理職だからといって、タイムカード等の勤怠管理を一切していない場合には違法となりかねません。

しかし、会社は、管理監督者として扱うのであれば、タイムカード等による勤怠管理は、あくまでも健康管理等の目的の範囲に限定して行わなければなりません

以下のようなケースでは、労働時間の裁量を否定するものとして、管理監督者性が否定されやすくなります。

ケース1:長時間労働にもかかわらず健康管理を怠っているケース
ケース2:一部の管理職にのみ義務づけられているケース
ケース3:遅刻や欠勤による控除がなされているケース
ケース4:労働時間の承認又は決済が必要なケース
ケース5:虚偽の労働時間を打刻させられているケース

実際、管理職とされている方の多くは名ばかり管理職に過ぎないというのが現状です。

もしも、あなたが名ばかり管理職に過ぎない場合には、時効(3年)消滅していない範囲で遡ってこれまでの残業代を請求することができます

この記事で一緒に会社によるタイムカード等の勤怠制度が健康管理の目的を超えて、労働時間を管理するものになっていないかどうか確認していきましょう。

今回は、管理職のタイムカード打刻の必要性やこれにより管理監督者性が否定されやすいケース等について解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば管理職なのにタイムカードを打刻していることにつきどのような意味があるのかがよくわかるはずです。

管理職のタイムカードについては、以下の動画でも分かりやすく解説しています。

 

 

 

 

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目次

管理職でもタイムカードなしは違法!2019年4月から義務化

管理職でもタイムカードなしは違法です。

なぜなら、会社は、2019年4月以降、労働者の健康に配慮するため労働時間の状況を把握する義務を課されているためです。

そして、ここでいう労働者には、管理監督者も含まれます。

労働安全衛生法第66条の8の3
「事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。」

基発1228第16号平成30年12月28日 第2面接指導等(労働安全衛生法令関係)
問10
労働時間の状況を把握しなければならない労働者には、裁量労働制の適用者や管理監督者も含まれるか。
答10
労働時間の状況の把握は、労働者の健康確保措置を適切に実施するためのものであり、その対象となる労働者は、新労基法第 41 条の2第1項に規定する業務に従事する労働者(高度プロフェッショナル制度の適用者)を除き、…④管理監督者等…を含めた全ての労働者である。
(出典:基発1228第16号(労働安全衛生法等の解釈等について) (mhlw.go.jp))

そして、会社は、管理監督者の労働時間を把握して、残業時間(1週40時間時間を超えた時間)が月80時間を超えた場合には、労働者に通知しなければなりません

労働安全衛生規則第52条の2(面接指導の対象となる労働者の要件等)
3 事業者は、第一項の超えた時間の算定を行つたときは、速やかに、同項の超えた時間が一月当たり八十時間を超えた労働者に対し、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報を通知しなければならない。

会社は、残業時間が月80時間を超える労働者から申し出があった場合には、医師の面接指導を行わなければなりません

労働安全衛生法第66条の8(面接指導等)
1「事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。」

労働安全衛生規則第52条の2(面接指導の対象となる労働者の要件等)
1「法第六十六条の八第一項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前一月以内に法第六十六条の八第一項又は第六十六条の八の二第一項に規定する面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて法第六十六条の八第一項に規定する面接指導(以下この節において「法第六十六条の八の面接指導」という。)を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。」

労働安全衛生規則第52条の3(面接指導の実施方法等)
1「法第六十六条の八の面接指導は、前条第一項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする。」
3 「事業者は、労働者から第一項の申出があつたときは、遅滞なく、法第六十六条の八の面接指導を行わなければならない。」

そのため、会社は、タイムカード等により労働者の労働時間を把握しなければならないのです。

~2019年3月までは管理監督者の労働時間把握は義務ではなかった~

2019年3月までは、管理監督者の労働時間把握は義務とはされていませんでした。

なぜなら、労働時間の管理を定めた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」においては、管理監督者は対象から除外されていたためです。

2019年4月以降の労働安全衛生法の改正により義務化されたことになります。

タイムカードの打刻だけで管理監督者性が否定されるわけではない

タイムカードの打刻を義務付けられていても、当然に管理監督者性が否定されるわけではありません

管理監督者に該当するためには、以下の3つの条件が必要であるとされています。

①経営者との一体性
②労働時間の裁量
③対価の正当性

あなたは名ばかり管理職?

そして、労働時間の裁量については、始業時間や終業時間がどの程度厳格に取り決められ、管理されていたかの問題です。

タイムカードへの打刻や勤怠への入力が行われていた場合には、労働時間について管理されていて裁量がなかったといいやすい事情となります

もっとも、タイムカードへの打刻をしていても、当然に労働時間の裁量がなかったということにはなりません

なぜなら、タイムカードへの打刻を指示していたが、出退勤については労働者の自由に任せていたという場合もあり得るためです。

とくに、最近では、会社側から、タイムカードは健康管理の目的で打刻を指示していただけであり、労働時間を管理する目的ではないと反論されることが多くなっています。

そのため、タイムカードを打刻しているからといって、当然に名ばかり管理職であるということはできないのです。

管理監督者とは何かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

 

 

 

 

タイムカードの打刻により管理監督者性が否定されやすいケース5つ

タイムカードの打刻だけで当然に管理監督者性が否定されるわけではありませんが、他の事情も加わると管理監督者性が否定されることがあります

例えば、タイムカードの打刻により管理監督者性が否定されやすいのは以下の5つのケースです。

ケース1:長時間労働にもかかわらず是正措置を怠っているケース
ケース2:一部の管理職にのみ義務づけられているケース
ケース3:遅刻や欠勤による控除がなされているケース
ケース4:労働時間の承認又は決済が必要なケース
ケース5:虚偽の労働時間を打刻させられているケース

タイムカードにより労働時間の裁量が否定されるケース

それでは各ケースについて順番に解説していきます。

ケース1:長時間労働にもかかわらず是正措置を怠っているケース

タイムカードの打刻により管理監督者性が否定されやすいケースの1つ目は、長時間労働にかかわらず是正措置を怠っている場合です。

なぜなら、健康管理の目的によりタイムカードの打刻を義務付けているのであれば、長時間労働を把握したら、是正措置を講じることが通常であると考えられるためです。

例えば、残業が80時間を超えているにもかかわらず、労働者に対して通知を怠っているような場合には、健康管理の目的でタイムカードを打刻していたということは難しいでしょう。

(東京地判平27.6.24労判ジャーナル44号35頁[学生情報センター事件]参照)

ケース2:一部の管理職にのみ義務づけられているケース

タイムカードの打刻により管理監督者性が否定されやすいケースの2つ目は、一部の管理職にのみ義務づけられているケースです。

なぜなら、健康管理の目的によりタイムカードの打刻を義務付けているのであれば、一部の管理職のみならず、全ての従業員に対してタイムカードの打刻を義務付けることが通常です。

例えば、執行役員以上の者に対してはタイムカードへの打刻を求めていないような場合には、健康管理の目的でタイムカードを打刻していたということは難しいでしょう。

(東京地判平27.6.24労判ジャーナル44号35頁[学生情報センター事件]参照)

ケース3:遅刻や欠勤による控除がなされているケース

タイムカードの打刻により管理監督者性が否定されやすいケースの3つ目は、遅刻や欠勤による控除がなされているケースです。

なぜなら、控除まで行う場合には、健康管理目的の範囲を超えており、出退勤を厳格に管理されているものといえるためです。

例えば、1日欠勤した場合などに、日割り計算でお給料が減らされてしまったような場合には、管理監督者というのは難しいでしょう。

ケース4:労働時間の承認又は決済が必要なケース

タイムカードの打刻により管理監督者性が否定されやすいケースの4つ目は、労働時間の承認又は決済が必要なケースです。

なぜなら、健康管理目的であれば、会社は労働者が何時間働いたかを把握すれば足り、それを承認する必要まではないためです。

例えば、タイムカードの端に上司の印鑑が押されているような場合には、管理監督者に該当しないと言いやすいです。

ケース5:虚偽の労働時間を打刻させられているケース

タイムカードの打刻により管理監督者性が否定されやすいケースの5つ目は、虚偽の労働時間を打刻させられているケースです。

なぜなら、健康管理目的であれば正確な労働時間を把握する必要があり、虚偽の労働時間を打刻させていたら健康管理を行うことができないためです。

例えば、18時00分になったら一律にタイムカードを打刻するようになどの指示をされている場合には、管理監督者とは言い難いでしょう。

名ばかり管理職が労働時間の裁量を争う際のポイント

名ばかり管理職が労働時間の裁量を争う際には、いくつか抑えておくべきポイントがあります。

例えば、以下の4つのポイントをおさえておくことで、格段に争いやすくなります。

ポイント1:メールなどで労働時間や業務内容の報告をする
ポイント2:有給や欠勤の申請は口頭ではなく証拠に残しておく
ポイント3:タイムカードを適当に打刻しない
ポイント4:シフトを指示されているメール等を保存する

タイムカードがある場合に労働時間の裁量が争うポイント

それでは各ポイントについて順番に説明していきます。

ポイント1:メールなどで労働時間や業務内容の報告をする

名ばかり管理職が労働時間の裁量を争うポイントの1つ目は、メールなどで労働時間や業務内容の報告をすることです。

なぜなら、労働時間や業務内容の報告については、労働時間を管理されていたといえる方向の事情となるためです。

メールで報告することにより、証拠として残すことができます。

例えば、1日の業務終了後、上司に仕事が終わった旨の報告、成果物の報告等をメールで送ることを習慣にするといいでしょう。

ポイント2:有給や欠勤の申請は口頭ではなく証拠に残しておく

名ばかり管理職が労働時間の裁量を争うポイントの2つ目は、有給や欠勤の申請は口頭ではなく証拠に残しておくことです。

なぜなら、仕事を休む際に会社側の承認を得る必要があり、出退勤の自由がない場合には。労働時間の裁量がなかったといいやすいためです。

例えば、仕事を休む際には、上司にメールなどで連絡しておくことが考えられます。

ポイント3:タイムカードを適当に打刻しない

名ばかり管理職が労働時間の裁量を争うポイントの3つ目は、タイムカードを適当に打刻しないことです。

なぜなら、出勤時刻が不規則ですと所定労働時間が厳格に定められておらず、労働時間に裁量があったと言われかねないためです。

例えば、タイムカードが毎日8時00分頃に打刻されている場合には、8時00分までに出勤することが義務付けられていたことをうかがわせる事情となるでしょう。

ポイント4:シフトを指示されているメール等を保存する

名ばかり管理職が労働時間の裁量を争うポイントの4つ目は、シフトを指示されているメール等を保存することです。

なぜなら、会社が出勤日や出勤時間を指示している場合には、会社側が労働時間を管理しており、自由に出退勤を決めることができなかったといえるためです。

例えば、月初めなどに会社からシフトが配られているような場合、シフトのメールが送られてくるような場合には、それを保存しておくといいでしょう。

 

 

 

 

名ばかり管理職の未払い残業代請求の手順|時効(3年)消滅していない範囲で遡って請求可能

あなたが実際には管理監督者ではなく名ばかり管理職にすぎない場合には、時効(3年)に係っていない範囲で遡って未払いの残業代を請求することができます。

具体的には、名ばかり管理職の方が残業代を請求する手順は、以下のとおりです。

手順1:名ばかり管理職の証拠を集める
手順2:残業代の支払いの催告をする
手順3:残業代の計算
手順4:交渉
手順5:労働審判・訴訟

管理職が残業代を請求する手順

それでは、順番に説明していきます。

残業代請求の方法・手順については、以下の動画でも詳しく解説しています。

手順1:名ばかり管理職の証拠を集める

残業代を請求するには、まず名ばかり管理職の証拠を集めましょう。

名ばかり管理職としての証拠としては、例えば以下のものがあります。

①始業時間や終業時間、休日を指示されている書面、メール、LINE、チャット
→始業時間や終業時間、休日を指示されていれば、労働時間の裁量があったとはいえないため重要な証拠となります。
②営業ノルマなどを課せられている書面、メール、LINE、チャット
→営業ノルマなどを課されている場合には、実際の職務内容が経営者とは異なることになるため重要な証拠となります。
③経営会議に出席している場合にはその発言内容や会議内容の議事録又は議事録がない場合はメモ
→経営会議でどの程度発言力があるかは、経営に関与しているかどうかを示す重要な証拠となります。
④新人の採用や従業員の人事がどのように決まっているかが分かる書面、メール、LINE、チャット
→採用や人事に関与しておらず、社長が独断で決めているような場合には、経営者との一体性がないことを示す重要な証拠となります。
⑤店舗の経営方針、業務内容等を指示されている書面、メール、LINE、チャット
→経営方針や業務内容の決定に関与しておらず、社長が独断で決めているような場合には、経営者との一体性を示す重要な証拠となります。

手順2:残業代の支払いの催告をする

残業代を請求するには、内容証明郵便により、会社に通知書を送付することになります。

理由は以下の2つです。

・残業代の時効を一時的に止めるため
・労働条件や労働時間に関する資料の開示を請求するため

具体的には、以下のような通知書を送付することが多いです。
御通知(残業代請求:時効3年)※御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。

手順3:残業代の計算

会社から資料が開示されたら、それをもとに残業代を計算することになります。

残業代の計算方法については、以下の記事で詳しく説明しています。

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手順4:交渉

残業代の金額を計算したら、その金額を支払うように会社との間で交渉することになります。

交渉を行う方法については、文書でやり取りする方法、電話でやり取りする方法、直接会って話をする方法など様々です。相手方の対応等を踏まえて、どの方法が適切かを判断することになります。

残業代の計算方法や金額を会社に伝えると、会社から回答があり、争点が明確になりますので、折り合いがつくかどうかを協議することになります。

手順5:労働審判・訴訟

交渉による解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判所を用いた手続きを行うことになります。

労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。

労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。

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残業代の裁判については、以下の記事で詳しく解説しています。

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まとめ

以上のとおり、今回は、管理職のタイムカード打刻の必要性やこれにより管理監督者性が否定されやすいケース等について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・管理職でもタイムカードなしは違法です。

・タイムカードの打刻を義務付けられていても、当然に管理監督者性が否定されるわけではありません。

・タイムカードの打刻により管理監督者性が否定されやすいのは以下の5つのケースです。
ケース1:長時間労働にもかかわらず是正措置を怠っているケース
ケース2:一部の管理職にのみ義務づけられているケース
ケース3:遅刻や欠勤による控除がなされているケース
ケース4:労働時間の承認又は決済が必要なケース
ケース5:虚偽の労働時間を打刻させられているケース

この記事がタイムカードが無いことに不安に感じている管理職の方の助けになれば幸いです。

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