月110時間の残業が当たり前のようになっている状況に、疑問を感じていませんか?
110時間もの残業を続けているとプライベートな時間もありませんし、心身ともに疲弊して続けられるのか不安になってしまいますよね。
結論から言うと、月110時間もの残業をさせるのは、異常です。
月の残業の上限時間は、36協定を締結したとしても、特別な事情がない限り月45時間、年360時間までとされています。
特別条項を定めていても、1月の残業時間の上限は100時間までとされているのです。
それだけではなく、月110時間もの残業は過労死のリスクが非常に高く、心身へ重大な影響を及ぼす危険があります。
というのも、厚生労働省は、直近1か月間における100時間以上の残業を、労災認定基準の1つの要素として挙げているためです。
このような危険な状況から抜け出す最も確実な方法は、転職することです。
労働環境の改善を待ちつつ会社の指示に従って残業を続けていては、心身が持たない可能性があるためです。
また、このような違法な残業を指示しているような会社は、残業代をしっかりと払っていない場合が多く、未払いの残業代を請求できる可能性があります。
実は、私が相談を受ける中でも、長時間の残業で心身ともにボロボロであるにも関わらず、十分な残業代すら支払われていないというケースもあるのです。
今回は残業110時間の異常性を解説した上で、残業110時間から抜け出す対処法と未払いの残業代を請求する方法を解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、残業110時間から抜け出す方法がよくわかるはずです。
残業時間の平均や生活、健康への影響については、以下の動画で詳しく解説しています。
目次
残業110時間は異常!心身へ影響を及ぼす危険な生活
1か月の残業が110時間にも及ぶのは、異常です。
昨年の日本の平均残業時間は約24時間程度であり、月110時間もの残業は約4倍となっていることからも、異常であることが分かります。
(データ出典:⽇本の残業時間 定点観測 OpenWork 働きがい研究所 (vorkers.com))
月110時間の残業をするためには、月22日出勤する方の場合だと、平均で毎日
110時間÷22日
=5時間
の残業をすることになります。
1日に約5時間の残業をした場合のタイムスケジュールは、以下のようになります。
このように、残業を終えて帰宅するのは0時頃となります。
通勤に使っている路線によっては終電になっている可能性がある時間です。
そこから食事、入浴のような最低限のことだけをしていても、深夜1時頃になってしまうスケジュールになっています。
睡眠時間として6時間確保しようとすると、プライベートな時間は一切ない状態になります。
当然、家族との時間は取ることはほぼ不可能でしょう。
そのため、月110時間の残業は異常であり、労働者にとっては大きな負担なのです。
残業110時間は36協定があっても違法!残業の限度時間
月110時間にも及ぶ残業をさせるのは、違法です。
そもそも、労働基準法において、労働時間の上限は1日8時間、週40時間までと定められています。
労働基準法32条(労働時間)
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」
そのため、上限の時間を超えて労働をさせる場合には、会社は労働者との間で事前に36協定を結んでおく必要があります。
36協定は、会社と労働組合などの代表者の間で毎年締結することが通常です。
この協定を締結後、会社は労働基準監督署に届け出る必要があります。
他方で、協定を結んでいない場合は、1日の労働時間の上限である8時間を超えて労働をさせること自体が違法になります。
そのため、会社の規模が小さく労働組合がないから、などのような理由で36協定を結んでいない場合、1日8時間以上の労働が許されないのです。
そして、36協定を結んで残業をさせることができるようになっても、36協定が許容する残業の時間は、1か月45時間までとされています。
労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
4「……限度時間は、一箇月について四十五時間……とする。」
例外として、36協定に特別条項を設けることができ、以下に該当する一定の場合には36協定の上限を超えて労働させることができます。
(ⅰ)通常予見できない業務量の大幅な増加により残業をする必要が生じたこと
(ⅱ)特別協定が締結されており、その範囲内で残業を命じていること
しかし、特別条項にも残業時間の上限があり、月100時間未満、年720時間以内と定められているのです。
労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)
5「……当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。……」
そのため、労働基準法が適用されない公務員などの一部の例外を除いて、月110時間もの残業をさせることは違法となるのです。
残業時間の上限については、以下の記事で詳しく解説しています。
残業110時間は過労死ライン越え!死のリスクと隣合わせの危険な残業
月110時間の残業は、健康被害・死亡のリスクがあります。
具体的には、以下の2つのリスクがあります。
①脳・心臓疾患-過労死
②うつ病・適応障害等-過労自殺
それでは、各リスクについて解説していきます。
脳・心臓疾患のリスク
月110時間による疾患のリスクの1つ目は、脳・心臓疾患のリスクです。
月110時間にもおよぶ残業をすると、脳・心臓疾患のリスクが非常に高い状態にあります。
というのも、厚生労働省は、発症前の1か月に100時間、または2~6か月の平均で月80時間を超える場合、脳・心臓疾患のリスクとの関連が強いとしているためです。
脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
下記のような症状がある場合には、脳・心臓疾患の可能性があるため、受診を検討しましょう。
・手足が動かしづらい
・呂律が回らない
・急なめまい
・運動後に動悸がする
・胸の圧迫感、痛み
うつ病などの精神疾患のリスク
月110時間残業のリスクの2つ目は、うつ病などの精神疾患のリスクです。
月110時間の残業をする場合、うつ病や精神疾患のリスクがあります。
行政通達では、うつ病などの精神疾患の労災認定基準に関して、以下のようにしています。
・1か月に80時間以上の時間外労働を行っている:心理的負荷「中」
・連続した2か月間に1月あたり120時間以上の時間外労働を行っている:心理的負荷「強」
この基準からも、月110時間の残業が精神疾患のリスクが高いことが分かります。
以下のような症状がある場合には、うつ病の可能性があるため、受診することを検討しましょう。
・気分が落ち込む、考えが悪い方向に向いてしまう(抑うつ)
・イライラして落ち着かない
・死にたいと考えてしまう(希死念慮:消えてなくなりたい、楽になりたいといった感情)
・様々なことに対する興味の喪失、意欲の低下
・眠れない
・食欲がない
・周囲の人から体調を心配されることが増えた
・動機、息苦しさがある
残業110時間の手取りはいくら?大まかな月給ごとに紹介
月110時間の残業をした場合の手取りと残業代に関して、大まかな月給ごとに解説していきます。
まず、残業代の計算方法は以下の通りです。
基礎賃金÷所定労働時間×割増率×残業時間数
ここで挙げられている基礎賃金は、各種手当や臨時で支払われた賃金などを除いたものであり、基本給というわけではないため注意が必要です。
所定労働時間は会社において定められている労働時間です。
例えば、朝9時から夕方6時までが労働時間だった場合、休憩時間を除いた8時間が所定労働時間となります。
割増率は、法定時間外労働は1.25倍、深夜労働となる22時~5時は0.25倍をさらに追加し、法定休日労働は1.35倍です。
残業時間は、法定時間外労働や法定休日などに働いた時間の合計です。
残業代の詳しい計算に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、以下の月収における手取りと残業代、恒常的に月110時間の残業をしていた場合に発生する残業代を計算していきます。
※手取りについては具体的な事案によって異なります。
・月給20万円の場合
・月給25万円の場合
・月給30万円の場合
・月給40万円の場合
この後計算も交えて解説しますが、計算した具体的な数字は以下のようになります。
なお、所定労働時間を160時間と仮定し、手取りに関しては額面の75~85%で計算していきます。
また、月110時間の時間外労働をするためには、深夜残業や休日労働が必要になることが多いですが、計算の分かりやすさを重視して一律1.25倍で計算しています。
そのため、実際の残業代よりも金額が低くなっている可能性があります。
月給20万円の場合
月収20万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下の通りとなります。
20万円÷160時間×1.25倍×110時間
=
17万1875円
1か月の額面を37万1875円(20万+17万1875円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下のとおりになります。
37万1875円×75%~85%
=
27万8906円~31万6093円
そして、残業代の時効は3年のため、もしも恒常的に110時間の残業をしていた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりになります。
17万1875円×3年(36か月)分
=
618万7500円
月給25万円の場合
月収25万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下の通りとなります。
25万円÷160時間×1.25倍×110時間
=
21万4843円
1か月の額面を46万4843円(25万+21万4843円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下のとおりになります。
46万4843円×75%~85%
=
34万8632円~39万5116円
そして、残業代の時効は3年のため、もしも恒常的に110時間の残業をしていた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりになります。
21万4843円×3年(36か月)分
=
773万4348円
月給30万円の場合
月収30万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下の通りとなります。
30万円÷160時間×1.25倍×110時間
=
25万7812円
1か月の額面を55万7812円(30万+25万7812円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下のとおりになります。
55万7812円×75%~85%
=
41万8359円~47万4140円
そして、残業代の時効は3年のため、もしも恒常的に110時間の残業をしていた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりになります。
25万7812円×3年(36か月)分
=
928万1232円
月給40万円の場合
月収40万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下の通りとなります。
40万円÷160時間×1.25倍×110時間
=
34万3750円
1か月の額面を74万3750円(40万+34万3750円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下のとおりになります。
74万3750円×75%~85%
=
55万7812円~63万2187円
そして、残業代の時効は3年のため、もしも恒常的に110時間の残業をしていた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりになります。
34万3750円×3年(36か月)分
=
1237万5000円
残業代を請求する4つのステップ
未払い残業代を請求するには、適切な手順を踏んでいく必要があります。
踏むべき手順は以下の通りです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟
それでは、未払い残業代を請求する手順を順番に解説していきます。
残業代請求の方法・手順については、以下の動画でも詳しく解説しています。
STEP1:通知書の送付
残業代を請求するためのSTEPの1つ目は、通知書の送付です。
未払い残業代を請求する際は、まず最初に内容証明郵便などを利用して、会社に通知書を送付することになります。
通知書を送付する理由は以下の2つです。
・時効を一時的に止めるため
・資料の開示を請求するため
残業代には時効が存在し、3年経過すると残業代を請求できなくなります。
しかし、残業代を請求する意思を見せることで、時効を一時的に止めることができるのです。
そのため、まずは通知書を送付し、残業代の計算などをしている間に時効となってしまう月が発生しないようにすることが重要となります。
残業代の時効に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
送付する通知書は、以下のようなものになります。
STEP2:残業代の計算
残業代を請求するためのSTEPの2つ目は、残業代の計算です。
会社から返答があったら、開示された資料をもとに残業代を計算していくことになります。
もしも開示してもらえない場合は、自分で記録しておいたタイムカードの写真などの出退勤の時間が分かる資料を用いて計算していきましょう。
残業代の計算については、以下の記事で詳しく解説しています。
~残業時間の切り捨ては違法?~
会社が15分刻みや30分刻みでしか日々の残業を認めず、端数を切り捨てることがありますが、それは違法です。
残業時間は1分単位で記録する必要があります。
端数処理が可能な部分もありますが、それは1か月単位で集計後に1時間未満の端数がある場合にのみ、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることが許されているのです。
端数処理に関するパンフレット:端数処理のソレダメ!(新居浜労働基準監督署).pdf (mhlw.go.jp)
例えば、1か月の残業時間を計算した際に、10時間40分になったとしましょう。
この場合に行うことができる端数処理は、40分の部分を切り上げて、11時間として計算することのみになるのです。
当然、日々の残業時間に分けて、個々で端数処理をすることは許されません。
このように、日々の残業時間で端数を切り捨てる処理をすることは違法となるため、注意が必要です。
STEP3:交渉
残業代を請求するSTEPの3つ目は、交渉です。
残業代の計算が終わったら、会社との間で残業代の支払いについて交渉していくことになります。
それに対して、通常、会社からは計算方法などについて、何らかの反論があることが多いです。
そうして会社と争うことになった箇所については、裁判例や法律と照らし合わせて、説得的に主張を行っていくことになります。
STEP4:労働審判・訴訟
残業代を請求するSTEPの4つ目は、労働審判・訴訟です。
月110時間もの残業をしている場合、未払い残業代も相応に高額になっていると考えられるため、交渉だけでは話がまとまらない可能性も高いでしょう。
交渉しても話がまとまらない場合には、労働審判や訴訟の申立てを行っていくことになります。
労働審判とは、裁判官を交えた話し合いである期日を3回まで行い、調停による解決を図るものです。
労働審判でも調停が成立しない場合には、裁判所から一時的な判断が出されることになります。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、回数制限などはなく期日を行い、交渉していくことになります。
概ね1か月に1回程度の期日を重ねていき、解決まで1年以上かかることもあります。
残業110時間から抜け出すための対処法4つ
月110時間の残業は心身に危険な影響を及ぼす状態なので、改善していく必要があります。
具体的な対処法は、以下の4つになります。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:産業医面談を希望する
対処法4:労働基準監督署に相談する
それでは、対処法について順番に解説していきます。
対処法1:上司に相談する
残業110時間から抜け出す対処法の1つ目は、上司に相談することです。
まずは、残業を減らしてほしい旨を、素直に上司に相談してみましょう。
その際には、以下のように具体的に説明することが重要となります。
・先月の残業は何時間だったか
・体調不良がある場合には、どのような症状が出ているか(診断書があるか)
・睡眠時間やプライベートへの支障
詳細に状況を伝えることで、上司がどのような配慮が必要なのか判断しやすくなります。
会社は労働者の健康や安全に配慮する義務を負っているため、このような相談があれば業務の再配分などの、何らかの配慮をしてくれる可能性があります。
対処法2:残業を拒否する
残業110時間から抜け出す対処法の2つ目は、残業を拒否することです。
既に説明した通り、一部の例外を除いて、月110時間もの残業を強いることは違法です。
これは、36協定に特別条項がある場合でも同様です。
自社規定などを持ち出される場合もありますが、それは労働基準法に違反していい理由にはなりません。
このような違法な残業は、拒否することを検討してみましょう。
とはいえ、残業の拒否という行為に対して、違法な残業を強いているような会社は、解雇や懲戒をちらつかせてくる可能性もあるでしょう。
しかし、会社が労働者を解雇したり懲戒したりできるのは、
客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当
と言える場合のみです。
違法な残業の拒否がこれにあたる可能性は低く、違法な残業の拒否を理由とする解雇や懲戒は無効となる可能性が高いのです。
残業を拒否する具体的な方法などに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
対処法3:産業医面談を希望する
残業110時間から抜け出すための対処法の3つ目は、産業医面談を希望することです。
産業医と面談をすることにより、必要に応じて措置の指示が出る可能性があります。
この措置は、要休業というようなものから、時間外労働の制限や禁止、就業時間の制限など、様々な種類があります。
また、産業医がこのような措置が必要だと判断した場合、産業医から会社に対して勧告してくれることがあります。
この勧告は、労働安全衛生法に基づくものであり、会社はその意見を尊重して対応を行う必要性が生じます。
会社は、勧告に対して、どのような対応をしたのかについて、その理由とともに文書に残す必要があるのです。
そのため、勧告を合理的な理由なく拒否することは難しくなっています。
加えて会社は、労働安全衛生法により、労働者が産業医への面接指導を申し出た際に、その労働者が月80時間を超えて残業をしていた場合、産業医面談を実施することを義務付けられています。
たとえ会社の規模が小さく、専任の産業医がいなかったとしても、これに該当する労働者の申し出を拒否することは違法になります。
自社に産業医がいないから面談は行わないというような言い訳は通用せず、外部の医師などに面接指導の実施を依頼するなど、何らかの対応を行う必要があるのです。
対処法4:労働基準監督署に相談する
残業110時間から抜け出すための対処法の4つ目は、労働基準監督署に相談することです。
月110時間の残業をさせることは違法であるため、労働基準監督署に相談することが考えられます。
労働基準監督署に相談することで、会社に対して労働基準法違反の事実があるかの調査を行い、結果に応じて指導してもらうことができます。
しかし、労働基準監督署もすべての事案に対応できるわけではありません。
なぜなら、労働基準監督署は、緊急性の高い事案を優先して対応する傾向にあるためです。
そのため、電話のみでの相談や匿名での相談の場合、緊急性の低い事案として扱われる可能性があるのです。
対応してもらえる可能性を高くするためには、実際に労働基準監督署に赴き、氏名、会社名などを告げたうえで相談することをお勧めします。
名前などを会社に伝わらないようにしたければ、その旨を労働基準監督署に伝えることで配慮してもらうことができます。
労働基準監督署への通報については、以下の記事で詳しく解説しています。
残業110時間の会社から抜け出す手順3つ
月110時間にも及ぶ異常な長時間残業から抜け出す最も確実な方法は、転職することです。
転職するために退職する場合、適切な手順を踏んでいく必要があります。
具体的には、以下の手順です。
手順1:証拠を集める
手順2:退職届を出す
手順3:残業の少ない会社に転職する
それでは、転職する手順を順番に解説していきます。
手順1:証拠を集める
転職する手順の1つ目は、証拠を集めることです。
残業代の請求以外にも、後から何らかの健康被害が生じた場合や、失業保険を受給する場合に備えて、長時間の残業をしていたことを証明するための証拠が必要になります。
そのため、退職前に、タイムカードなどの残業時間が分かる証拠を残すようにしておきましょう。
しかし、明らかに違法な残業をさせている会社の場合、そもそもタイムカードが存在しなかったり、定時で打刻させるなどの何らかの対策をしている場合もあります。
そのような場合には、入退館記録や業務メール、日報の営業記録など、だれが見ても会社にいたことが分かるようなものを探しましょう。
それすらもなければ、自分で以下のような項目を細かくメモしておくことをお勧めします。
・業務開始時間
・休憩時間
・業務終了時間
・業務内容
具体的なメモの書き方を含めた残業の証拠に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
手順2:退職届を出す
転職する手順の2つ目は、退職届を出すことです。
退職届を出す方法は、手渡しでも内容証明郵便でも構いません。
しかし、手渡しで提出する場合には、コピーを取っておくべきです。
退職届には、具体的には以下の内容を記載しておきましょう。
・退職する意思と退職の日付
・離職票の交付請求
・退職する理由(必須ではありません)
・有給休暇の取得申請(必須ではありません)
例えば、以下のような内容を記載します。
期間の定めのない労働契約の場合、退職日から2週間前には提出しておく必要があるため、注意が必要です。
他方で、期間の定めのある労働契約の場合、期間中に退職するにはやむを得ない理由が必要になります。
違法な残業を強いられたことを理由に退職したとしても、場合によっては会社から損害賠償請求をされる可能性があるのです。
そうなると、月110時間の残業をしていたことを証明したうえで、やむを得ない理由にあたるかを争っていく必要が生じます。
そのため、もしも期間の定めのある労働契約を結んでいて、期間内に退職したい場合は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
手順3:残業の少ない会社に転職する
転職する手順の3つ目は、残業の少ない会社に転職することです。
残業の少ない会社に転職するポイントは、以下の4つになります。
・長時間分の固定残業代がないかを確認する
・タイムカードがあるかを確認する
・業務量と比較して人員が少なすぎないかを確認する
・社員数に対して採用人数が多すぎないかを確認する
これらの点に注意して転職先を探しましょう。
~残業110時間は会社都合退職にできる?~
ハローワークでは、特定受給資格者の条件について、以下の項目を挙げています。
「離職の直前6か月間のうちに(1)いずれか連続する3か月で45時間、(2)いずれか1か月で100時間、又は(3)いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。」
ハローワークインターネットサービス – 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 (mhlw.go.jp)
そのため、会社都合退職として失業保険を受給する際に有利に扱ってもらえる可能性があります。
会社都合退職については、以下の動画でも詳しく解説しています。
残業代請求はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
残業代請求については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
残業代請求については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきます。
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まとめ
今回は残業110時間の異常性を解説した上で、残業110時間から抜け出す対処法と未払いの残業代を請求する方法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると、以下の通りです。
・昨年の日本の月平均残業時間は約24時間であり、月110時間の残業は異常です。
・月110時間の残業をしていると、帰宅は0時頃となり、プライベートな時間はほとんどありません。
・月110時間の残業は、ごく一部の例外を除いて違法となります。
・月110時間の残業は心身への影響が非常に大きく、心不全や精神疾患など、多数のリスクがあります。
・月110時間の月の残業代、手取り、3年間続けた場合の残業代の総額は、以下の通りです。
・残業代を請求するステップは、以下の4つです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟
・残業110時間から抜け出すための対処法は、以下の4つです。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:産業医面談を希望する
対処法4:労働基準監督署に相談する
・残業110時間の会社から抜け出す手順は、以下の3つです。
手順1:証拠を集める
手順2:退職届を出す
手順3:残業の少ない会社に転職する
この記事が、月110時間の長時間残業で苦しんでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので、読んでみてください。