このような悩みを抱えていませんか。
サービス残業とは、簡単に言うと、
をいいます。
サービス残業は、決して当たり前の事ではありません。
この記事を読んでくださっている方には、まず、サービス残業は、
であるということを知っておいていただければと思います。
実際、私が、これまで経験した多くの事件では、裁判所は、会社に対して、サービス残業についての残業代を支払うように命じています。
日本労働組合総連合会による調査によるとサービス残業時間の平均は、
とされています。
例えば、月に100時間のサービス残業を行っている方など、月16.7時間を大きく上回る方は、ブラック企業に勤めている可能性がありますので注意が必要です。
とはいっても、今自分が置かれているケースが、本当に「サービス残業」といえるものなのか疑問に感じている方もいるでしょう。
この記事では、そもそも「サービス残業とは何なのか」、あなたの置かれている状況がサービス残業に当たるのかについて、具体例などを用いて説明していきます。
具体的にはこの記事の流れは以下のとおりです。
この記事を読めば、あなたのサービス残業に関する悩みが解消しますよ。
目次
サービス残業とは
サービス残業とは、簡単に言うと、
のことをいいます。
残業というのは、例えば、以下のものをいいます。
・1日8時間又は1週40時間を超える労働(法定外残業)
・1週1日の法定休日についての労働(法定休日残業)
・午後10時~午前5時についての労働(深夜残業)
残業時間に該当するためには、会社の明示の指示は必ずしも必要ではありません。
明示の指示がなくても、会社が残業を知りつつ黙認しているような場合には、残業にあたるのです。
以下では
・サービス残業の要因
・サービス残業の例
・サービス残業が多い職業
について、少し詳しく説明します。
サービス残業の要因
サービス残業の代表的な要因は、以下の3つです。
・人件費削減
・会社の社風
・働き方改革
順に説明していきます。
人件費削減
サービス残業の要因の1つ目は、
です。
会社が人件費を節約するために、業務量に対して、人員が不足しているにもかかわらず、新人の募集をせず、かつ、残業代の支払いもしないことがあります。
(例)
会社の社風
サービス残業の要因の2つ目は、
です。
会社において、サービス残業が当然という雰囲気がまん延していることがあります。
(例)
働き方改革
サービス残業の要因の3つ目は、
です。
働き方改革により、1か月の残業時間の上限は、原則として45時間とされました。その影響で、残業をさせないように、定時で帰るように命じる会社が増えました。
しかし、業務量は変わらないので、やむを得ず、仕事を持ち帰り残業をしている方が増えているのです。
(例)
サービス残業の6つの典型例
サービス残業の典型例は、以下の6つです。
・タイムカードを切った後のサービス残業
・数分の残業については残業代が支給されないサービス残業
・一定以上の残業代をカットすることによるサービス残業
・研修という名目でのサービス残業
・早出によるサービス残業
・持ち帰りによるサービス残業
順に説明していきます。
タイムカードを切った後のサービス残業
サービス残業の典型例の1つ目は、
です。
会社は、労働者が残業をした証拠を残さないようにするために、定時でタイムカードを切らせる場合があります。
このようにタイムカードを切った後も会社に残って仕事を続ける場合、会社から残業代は支払われないことになります。
そのため、タイムカードを切った後の残業は、サービス残業の典型例といえます。
数分の残業については残業代が支給されないサービス残業
サービス残業の典型例の2つ目は、
です。
会社によっては、30分に満たない残業については、残業代を支給しないなどのルールを定めている場合があります。
しかし、会社は、このようなルールを定めていたとしても、実際には、1分単位で残業代を支給しなければなりません。
そのため、数分の残業時間を支給しないことは、サービス残業の典型例といえます。
一定以上の残業代をカットするサービス残業
サービス残業の典型例の3つ目は、
です。
会社によっては、30時間を超える残業代は支給しないなどのルールを定めている場合があります。
しかし、会社は、このようなルールを定めていたとしても、労働者が行った残業時間に応じて、残業代を支給しなければなりません。
そのため、一定以上の残業代をカットすることは、サービス残業の典型例といえます。
研修という名目でのサービス残業
サービス残業の典型例の4つ目は、
です。
研修といえども、会社に参加を強制されている場合や参加を義務付けられている場合には、残業に当たります。
会社は、時間外に、労働者を研修に参加させる場合には、残業代を支払わなければなりません。
そのため、研修という名目で労働者に指示を出して、残業代を支給しないことは、サービス残業の典型例といえます。
早出によるサービス残業
サービス残業の典型例の5つ目は、
です。
例えば、会社からの指示で、準備や朝礼のために、始業時刻よりも早く出社する場合には、残業に当たります。
会社は、始業時刻前の残業についても、残業代を支払う必要があります。
そのため、早出による残業について、残業代を支給しないことは、サービス残業の典型例といえます。
持ち帰りによるサービス残業
サービス残業の典型例の6つ目は、
です。
家に持ち帰って仕事をする場合にも、会社の明示又は黙示の指示があり、プライベートと区別できている場合には、残業に当たります。
会社は、持ち帰り残業についても、残業代を支給する必要があるのです。
そのため、持ち帰り残業について、残業代を支給しないことは、サービス残業の典型例といえます。
テレワークについても、残業をした場合には、残業代を請求することができます。
そのため、テレワークによる残業について、残業代が支給されない場合も、サービス残業に当たることになります。
ただし、テレワークの場合の注意点として、会社からの明示又は黙示の指示があることや労働時間の立証をできることが重要となります。
例えば、会社に時間外も業務を行ったことを報告したり、残業した時間や内容を記録したりするようにしましょう。
サービス残業が多い職業
サービス残業が多い職業は、例えば以下のものがあります。
・看護師
・私立教員
・建設業
・保育士
・介護士
・システムエンジニア
順に説明します。
看護師
サービス残業が多い職業の一つ目は、看護師です。
例えば、以下のような作業があるためです。
・勤務開始前の準備やチェック作業
・勤務終了後の報告書の作成
・勉強会や研修
・ナースコールへの対応
私立教員
サービス残業が多い職業の2つ目は、私立教員です。
私立教員は、試験問題の作成や採点、生徒のノートチェック授業の準備などについて、持ち帰り残業をせざるを得ない場合があります。
なぜなら、業務時間中は、実際に授業を行ったり、生徒の監督をしたり、相談に乗ったり、事務仕事をしたりなどで忙しいためです。
そのため、私立教員は、サービス残業が多くなりがちなのです。
なお、私立教員は、通常の会社勤務の方と同様、学校に対して、残業代を請求することができます。
建設業
サービス残業が多い職業の3つ目は、建設業です。
建設業は、以下の理由から残業時間が長くなりがちな傾向にあります。
・業務量が多い
・人員が不足している
・予期せぬ設計変更等に対応する必要がある
・仕事の閑散の差が大きい
・災害やトラブル等の緊急対応を要する
保育士
サービス残業が多い職業の4つ目は、保育士です。
保育士は、たよりなどの書類や小道具の作成について、持ち帰り残業をせざるを得ない場合があります。
なぜなら、業務時間中は子どもの保育で忙しく、これらの業務を行う時間をとることができないためです。
そのため、保育士は、サービス残業が多くなりがちなのです。
介護士
サービス残業が多い職業の5つ目は、介護士です。
介護士は、以下の業務により残業時間が長くなりがちな傾向にあります。
・情報収集や記録
・ケアの準備や片付け
・会議や委員会、研修
・利用者へのケア
そして、介護報酬の変更に伴う人件費削減等により、適正な残業代が支給されていない施設が多く存在します。
そのため、介護士は、サービス残業がおおくなりがちなのです。
システムエンジニア
サービス残業が多い職業の6つ目は、システムエンジニアです。
システムエンジニアは、業務量が多いことに加えて、場所を問わず一人で業務をすることができるため、持ち帰り残業が多くなりがちであるためです。
~公務員のサービス残業~
国家公務員一般職の方や地方公務員の方は、原則として、残業をすれば、残業代を請求することができます。
そのため、公務員であっても、残業代を支払ってもらえなければ、サービス残業となり得るのです。
ただし、国家公務員の特別職の場合には、残業代の支払いについては個別の規律を確認する必要があります。
また、地方公務員であっても、一部職員については例外が定められている場合があります。例えば、公立学校の教員の場合には、給特法により残業代は支給しないとされています。
サービス残業は違法!
サービス残業は、
です。
会社には、労働者に残業をさせたら、残業代の支払いをする義務があるためです。
そして、会社が労働者にサービス残業をさせた場合には、罰則が定められています。
以下では、
・残業代を支払う法律上の義務
・残業代の支払いを怠った場合の罰則
について、それぞれ説明します。
残業代を支払う法律上の義務
会社は、労働者に残業をさせた場合には、残業代の支払いをする義務があります。
労働基準法上、労働者に法定の時間外や休日、深夜に労働させた場合には、残業代を支払う必要があると規定されているためです。
労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1「使用者が、…労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
4「使用者が、午後十時から午前五時まで…の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
以下の記事で、詳しく説明しています。
残業代の支払いを怠った場合の罰則
会社が残業代の支払いを怠った場合の罰則には、
・刑罰
・付加金
があります。
刑罰
残業代の支払いを怠った場合の刑罰は、以下のとおりです。
労働基準法119条
「次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」
一「…第三十七条…の規定に違反した者」
労働基準法違反の罪については、労働基準監督署が警察の職務を行います。
そのため、サービス残業を告発した場合には、労働基準監督署に対して行うことになります。
サービス残業の告発については、以下の記事で詳しく説明しています。
付加金
付加金とは、会社が労働者に対して一定の金員の支払いを怠った場合において、労働者の請求により、裁判所が会社に対して未払い金と同一額の支払いを命じるものです。
会社が労働者に対して、法定の残業代の支払いを怠った場合には、裁判所に
の支払いを命じてもらえる可能性があるのです。
第114条(付加金の支払)
「裁判所は、…第三十七条の規定に違反した使用者…に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。…」
~自主的なサービス残業は適法?~
労働者が自主的にサービス残業をしている場合でも、適法とは限りません。
その業務が会社の指揮命令下において行われている場合には労働時間に当たることになり、残業代の支払いをする必要があるためです。
会社の指揮命令というのは必ずしも明示の指示は必要ではなく、会社が労働者の残業を知りつつ黙認している場合も含みます。
そのため、労働者がよかれと思って自主的に残業をしている場合であっても、会社がこれを知りつつ放置しているような場合には、残業代を支払うべきケースもあるのです。
従って、自主的にサービス残業を行うことは、会社に迷惑となることもあるので注意しましょう。
サービス残業を減らす方法
サービス残業を減らす方法は、以下の4つです。
①サービス残業の証拠を集める
②サービス残業を強要されたら拒否する
③サービス残業に悩んでいることを相談する
④これまでの残業代を請求する
この順序で対処していくことをおすすめします。
サービス残業の証拠を集める
サービス残業を減らす方法として、最初に行うべきなのは、
ことです。
労働者にサービス残業を行わせる会社では、残業に関する証拠が残っていないことも珍しくないためです。
具体的には、以下の証拠を集めましょう。
まずは、①があれば一番いいですが、これがない場合には②や③の証拠がないかを検討します。
①②③いずれもない場合には、やむを得ないので、残業時間や業務内容をメモするなどして、④の証拠を集めるようにしましょう。
サービス残業を強要されたら拒否する
サービス残業を減らす方法の2つ目は、サービス残業を強要されたら拒否することです。
先ほど説明したように、サービス残業は違法です。
例えば、サービス残業をするように強要されたら、
と明確に伝えましょう。
サービス残業に悩んでいることを相談する
サービス残業を減らす方法の3つ目は、サービス残業に悩んでいることを相談することです。
サービス残業のおすすめの相談先は、以下の5つです。
・社内通報窓口
・労働条件相談ほっとライン
・労働組合
・弁護士
・労働基準監督署
詳しくは以下の記事で解説しています。
残業代を請求する
サービス残業を減らす方法の4つ目は、サービス残業についての残業代を請求することです。
これまでの残業代を請求することで、将来のサービス残業の抑止にもつながるためです。
会社は、労働者に対して、残業代を支払わなければならないことが分かれば、人件費を削減するために、残業を減らすでしょう。
サービス残業の残業代については、以下で詳しく説明します。
これまでのサービス残業の残業代
サービス残業については、残業代を請求することができます。
以下では、
・残業代の計算方法
・あなたが請求できる残業代金額
・残業代の請求方法
について説明します。
残業代の計算方法
残業代の計算式は、以下のとおりです。
以下の記事で誰でも計算できるように説明していますので、読んでみてください。
あなたが請求できる残業代金額
残業代金額のおおよその目安については、月給と残業時間ごとに以下の早見表で整理しました。
あなたの残業代金額を確認してみてください。
残業代の請求方法
残業代の請求は以下の流れで行います。
STEP1は、会社に対して通知書を送付することです。残業代を請求する旨を告げて、時効の完成を一時的に止めたり、残業代を計算するのに必要な資料の開示を求めたりします。
STEP2は、会社から開示された資料を踏まえて、残業代を計算することになります。
STEP3は、計算した残業代金額を支払うように会社に求めて、交渉を行うことになります。
STEP4は、交渉での解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判所をとおした解決を検討することになります。
残業代請求の方法・手順については、以下の動画でも詳しく解説しています。
雇用形態や役職別のサービス残業
サービス残業について、そもそも残業代を請求することができるか悩む方が多い雇用形態や役職として、以下のものがあります。
・管理職
・バイト・パート・派遣
・営業職
順に説明していきます。
管理職
管理職であっても、残業をすれば、残業代を請求できることがあります。
労働基準法上、管理監督者には、労働時間や休日の適用が除外されているため、時間外や休日の残業について、残業代を支払わなくていいとされています。
しかし、ここでいう管理監督者というのは、管理職であれば誰でもあたるわけではありません。
実際に、これに該当するのは、経営者と一体といえるような、特に限られた方です。
そのため、世の中には、本当であれば残業代が支払われるべきなのに、これが支払われていない管理職の方が多く存在するのです。
管理職の残業代については、以下の動画でも分かりやすく解説しています。
名ばかり管理職については、以下の記事で詳しく解説しています。
アルバイト・パート・派遣社員
アルバイトやパート、派遣社員も、残業をすれば、残業代を請求することができます。
アルバイトやパート、派遣社員も、労働者であることに変わりはないためです。
例えば、会社が、アルバイトやパート、派遣社員には残業代を支給しないとしているのであれば、それは誤りです。
そのため、アルバイトやパート、派遣社員であっても、正社員と同様に、サービス残業がなされていれば問題なのです。
営業職
営業職であっても、残業をすれば、残業代を請求できるのが原則です。
労働基準法は、営業職にも適用されるためです。
ただし、事業外のみなし労働時間制が採用されている場合には、例外的に、残業代を請求できない場合があります。
詳しくは以下の記事をお読みください。
サービス残業については早めに弁護士に相談を!
サービス残業については、早めに弁護士に相談するべきです。
理由は、以下の4つです。
・残業代請求の見通しを教えてもらえる!
・残業代計算のポイントを教えてもらえる!
・残業代の請求方法を教えてもらえる!
・初回無料相談であれば費用はかからない!
残業代請求の見通しを教えてもらえる!
弁護士に相談することで、残業代請求の見通しを教えてもらうことができます。
残業代を請求した経験がないと、残業代をどの程度請求できるのか見通しを立てるのが難しいでしょう。
労働事件に注力している弁護士であれば、これまでの経験から、残業代請求の見通しについて、適切に助言することができます。
そのため、残業代を請求する際には、弁護士に見通しを聞くことがおすすめなのです。
残業代計算のポイントを教えてもらえる!
弁護士に相談すれば、残業代計算のポイントを教えてもらうことができます。
残業代の計算については、基礎賃金や割増率、残業時間などの計算において、自分に有利な点を見落としてしまうこともあります。
労働事件に注力している弁護士であれば、見落としがちなポイントを熟知していますので、残業代の計算をするに当たり注意すべき点をアドバイスすることができます。
そのため、残業代を計算は、弁護士に相談してから行うべきです。
残業代の請求方法を教えてもらえる!
弁護士に相談すれば、残業代の請求方法を教えてもらうことができます。
残業代の請求をしようとすると、具体的な事案により、通知書にどのような記載をするか、どのように交渉をしていくか悩むことも多いでしょう。
労働問題に注力している弁護士であれば、あなたの事案に応じて、残業代をどのように請求するべきかについて、その方針を助言することができます。
そのため、会社に残業代を請求するには、その方針について、弁護士に相談してから決めるのがいいでしょう。
初回無料相談であれば費用はかからない!
初回無料相談を利用すれば、費用をかけずに弁護士に相談することができます。
弁護士に依頼するか悩んでいる方も、まずは見通しやリスク、費用を聞いてから弁護士に依頼するかどうかを決めればいいのです。
初回無料相談を利用するデメリットは特にありません。
そのため、サービス残業については、早めに弁護士に相談することがおすすめです。
まとめ
以上のとおり、今回は、サービス残業の意味や典型例について解説しました。
この記事の要点は以下のとおりです。
・サービス残業とは、残業代を支払ってもらうことができない残業のことをいいます。
・サービス残業は、労働基準法に反して違法です。
・サービス残業をした方は、残業代を請求することができます。
サービス残業の典型例は以下の6つです。
・タイムカードを切った後のサービス残業
・数分の残業時間をカットすることによるサービス残業
・一定以上の残業代をカットすることによるサービス残業
・研修という名目でのサービス残業
・早出によるサービス残業
・持ち帰りによるサービス残業
この記事がサービス残業に悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。