毎日残業2時間は普通なのかと悩んでいませんか?
2時間の残業が毎日のように続くと、疲れも溜まってしまいますよね。
結論から言うと、毎日残業2時間は普通ではありません。
なぜなら、毎日2時間も残業している場合、年間の残業の上限を超えることになり、違法の可能性があるためです。
労働時間の上限は1日8時間、週40時間であり、これを超えて労働させるためには、会社と労働者の間で36協定というものあらかじめ結んでおく必要があります。
36協定を結ぶことで労働時間の上限を超えた残業が可能になりますが、それでも月45時間、年360時間までとされているのです。
毎日残業を2時間していた場合、年間に換算すると通常の勤務形態では480~528時間ほどの残業をすることになるため、違法の可能性が高くなるのです。
加えて、このような違法な残業を指示しているような会社は、残業代を十分に支払っていない場合が多く、未払いの残業代を請求できる可能性があります。
実は、私が相談を受ける中でも、毎日残業を2時間して心身ともに疲弊しているにも関わらず、十分な残業代が支払われていないという方もいるのです。
今回は、毎日残業2時間が違法になる可能性が高い理由を説明したうえで、未払いの残業代の請求方法や常態化した残業から抜け出すための対処法について解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、毎日残業2時間が普通ではないことが、よくわかるはずです。
残業時間の平均や健康への影響については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
毎日残業2時間はきつい?残業が当たり前になっている1日の生活
毎日残業2時間を続けることは、心身に大きな負担がかかります。
月22日出勤する方に当てはめて考えると、約44時間の残業をしていることになります。
これは、月の残業時間の上限ギリギリの状態であり、多少残業が伸びる日がある可能性などを考慮すると、1か月だけで見ても上限を超えて違法となる可能性もあります。
また、日本における1か月の平均残業時間は約24時間となっています。
(データ出典:⽇本の残業時間 定点観測 OpenWork 働きがい研究所 (vorkers.com))
これを1日の残業時間に換算すると約1時間程度となるため、毎日残業2時間というのは、平均の約2倍であることが分かります。
毎日残業を2時間している場合のタイムスケジュールの例を作成してみると、以下のとおりになります。
図のように、通勤を1時間とした場合、毎日残業を2時間していると、帰宅する時間は21時頃になります。
食事、入浴が終わるころには22時になってしまうという方もいるでしょう。
これでは、配偶者ならまだしも子供と食事を取るというのもなかなか難しいですし、22時を過ぎてから自由時間となっても、スマホやテレビを眺めるだけという方も多いのではないでしょうか。
プライベートな時間がないわけではないですが、このような生活を毎日続けていたら疲れもあまり取れないでしょうし、リフレッシュも困難でしょう。
そのため、毎日残業2時間は労働者にとって負担が大きく、きついものなのです。
毎日残業2時間は普通じゃない!残業の上限
毎日残業2時間というのは、1日の残業時間だけで見れば違法でないケースがほとんどです。
他方で、年間を通して毎日残業2時間が当たり前になっている場合、違法の可能性が高くなります。
労働時間の上限は労働基準法で定められていて、1日8時間、週40時間とされています。
労働基準法32条(労働時間)
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」
しかし、会社と労働者の間で事前に協定を締結しておくことで、この上限を超えることができるようになります。
この協定を、36協定といいます。
36協定を締結することによって、月45時間、年360時間までの残業が許容されるようになるのです。
労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
4「……限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間……とする。」
ほとんどの会社は36協定を締結しているため、1日に残業を2時間しても違法となる可能性は低くなります。
しかし、毎日残業を2時間しているとなると話が変わります。
先ほども言った通り、残業の上限は月45時間、年360時間です。
毎日残業を2時間している場合、月40~44時間、年480~528時間前後の残業をしていることになります。
月の残業時間だけを見ても上限ギリギリであり、多少残業時間が伸びる日があるだけで上限を超える状態になっています。
さらに、年間の残業時間を見ると、上限の約1.5倍になってしまうのです。
そのため、万が一年間を通して毎日残業2時間していた場合、違法の可能性が高くなります。
一応、36協定には不測の事態への対応などのために、月45時間、年360時間という残業の上限を超えることを許容する条項を定めておくことができます。
これを、特別条項といいます。
特別条項を適用することで、月100時間、年720時間まで残業させることができるようになります。
しかし、特別条項には厳格な条件があり、以下のような場合に限り適用できるようになるのです。
(ⅰ)通常予見できない業務量の大幅な増加により残業をする必要が生じたこと
(ⅱ)特別協定が締結されており、その範囲内で残業を命じていること
このことから、毎年、毎月あるような繁忙期といった理由では適用することができませんし、年間を通して毎日残業を2時間しているような状況になることも許されません。
そのため、毎日残業2時間は、違法の可能性が高いのです。
残業時間の上限に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
毎日残業2時間した場合の体調への影響
毎日残業を2時間している状況は、心身に対して影響を及ぼします。
主な健康被害のリスクは、以下の2つです。
・脳・心臓疾患
・うつ病等の精神疾患
厚生労働省は、脳・心臓疾患の労災認定基準として、労働時間に関して以下のようにしています。
・発症前1か月間に100時間または2~6か月平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強い
・月45時間を超えて長くなるほど、関連性は強まる
・発症前1~6か月平均で月45時間以内の時間外労働は、発症との関連性は弱い
このことから分かるように、月45時間の残業が認定基準上の最低限のボーダーラインになっています。
先ほども説明した通り、毎日残業を2時間していると、月44時間前後の残業をしていることになります。
そして、残業が45時間に達する月が連続している状態で脳・心臓疾患を発症した場合、その他の要素と勘案して、労災と認定される可能性があるのです
他方で、精神疾患に関して厚生労働省は、「1か月に80時間未満の時間外労働を行った」という項目を心理的負荷「弱」と評価しています。
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました|厚生労働省
もちろん、月の残業80時間未満であっても精神疾患を発症する可能性はありますが、残業時間の精神疾患への関与については80時間を基準として評価されるため、労災に認定されるかはなんとも言えないところになってしまいます。
毎日残業2時間した場合の残業代はいくら?大まかな月給別に紹介
毎日残業を2時間していた場合の手取りと残業代について、大まかな月給ごとに解説していきます。
まず、残業代の計算方法は、以下の通りです。
基礎賃金÷所定労働時間×割増率×残業時間数
基礎賃金は、各種手当や臨時で支払われた賃金などを除いたものであり、基本給とは異なるため注意してください。
所定労働時間は、会社において定められている労働時間になります。
例えば、8時30分~17時30分までが労働時間だった場合、休憩時間を除いた8時間が所定労働時間になります。
割増率に関しては、以下のとおりとなっています。※これは最低限度の基準です。ここから会社が独自に増やすことは問題ありません。
※法定休日労働と法定時間外労働の割増率は重複しません。
残業時間は、時間外労働や法定休日などに働いた時間の合計となります。
残業代の計算については、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、毎日残業を2時間していた場合の、以下の月収における残業代と手取りについて計算していきます。
※手取りについては具体的な事案によって異なります。
・月給20万
・月給25万
・月給30万
・月給40万
この後計算も交えて解説しますが、具体的な金額は以下のようになります。
なお、所定労働時間を160時間と仮定し、手取りに関しては額面の75~85%で計算します。
また、週5日勤務の場合月によって20~22日程度出勤することになりますが、一律で月20日出勤として計算しているため、実際の金額よりも低くなっている可能性があります。
・月給20万
月収20万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下のとおりとなります。
20万円÷160時間×1.25倍×40時間
=
6万2500円
1か月の額面を26万2500円(20万+6万2500円)とすると、1か月のおおよその手取りは、以下のとおりになります。
26万2500円×75%~85%
=
19万8750円~22万5250円
そして、残業代の時効は3年のため、毎日残業を2時間していた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりになります。
6万2500円×3年(36か月)分
=
225万0000円
・月給25万
月収25万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下のとおりとなります。
25万円÷160時間×1.25倍×40時間
=
7万8125円
1か月の額面を32万8125円(25万+7万8125円)とすると、1か月のおおよその手取りは、以下のとおりになります。
32万8125円×75%~85%
=
24万6093円~27万8906円
そして、残業代の時効は3年のため、毎日残業を2時間していた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりになります。
7万8125円×3年(36か月)分
=
281万2500円
・月給30万
月収30万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下のとおりとなります。
30万円÷160時間×1.25倍×40時間
=
9万3750円
1か月の額面を39万3750円(30万+9万3750円)とすると、1か月のおおよその手取りは、以下のとおりになります。
39万3750円×75%~85%
=
29万5312円~33万4687円
そして、残業代の時効は3年のため、毎日残業を2時間していた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりになります。
9万3750円×3年(36か月)分
=
337万5000円
・月給40万
月収40万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下のとおりとなります。
40万円÷160時間×1.25倍×40時間
=
12万5000円
1か月の額面を52万5000円(40万+12万5000円)とすると、1か月のおおよその手取りは、以下のとおりになります。
52万5000円×75%~85%
=
39万3750円~44万6250円
そして、残業代の時効は3年のため、毎日残業を2時間していた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりになります。
12万5000円×3年(36か月)分
=
450万0000円
毎日残業2時間における未払い残業代を請求するステップ4つ
未払いの残業代を請求していくには、適切な手順踏むことが重要になります。
踏むべき手順は、以下のとおりです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟
それでは、未払い残業代の請求方法について解説していきます。
残業代の請求方法については、以下の動画で詳しく解説しています。
STEP1:通知書の送付
未払い残業代を請求する手順の1つ目は、通知書を送付することです。
未払いの残業代を請求することを決めたら、内証証明郵便などを使って、まず最初に会社に通知書を送付することになります。
最初に通知書を送付する理由は、以下の2つです。
・時効を一時的に止めるため
・資料の開示を請求するため
残業代には時効があり、3年経過すると請求することが出来なくなってしまいます。
しかし、残業代の時効は、請求する意思を示すことで、一時的に止めることができます。
そのため、最初に通知書を送付し、残業代の計算などをしている間に時効になる月が発生しないようにすることが重要になります。
残業代の時効に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
送付する通知書は、以下のようなものになります。
STEP2:残業代の計算
未払い残業代を請求する手順の2つ目は、残業代の計算です。
通知書に対して会社から返答があったら、開示された資料をもとに残業代を計算することになります。
とはいえ、会社が資料を開示してくれない場合もあるでしょう。
そのような場合には、自分で記録しておいたタイムカードの写真など、出退勤時間が分かる資料を用いて計算していくことになります。
残業代の計算については、以下の記事で詳しく解説しています。
STEP3:交渉
未払い残業代を請求する手順の3つ目は、交渉です。
残業代の計算をしたら、その結果をもとに会社と残業代の支払いについて交渉していくことになります。
それに対して、会社から計算方法などについての何らかの反論があるのが通常です。
そのようにして会社と争うことになった箇所については、裁判例や法律と照らし合わせながら、説得的に主張していくことになります。
STEP4:労働審判・訴訟
未払い残業代を請求する手順の4つ目は、労働審判・訴訟です。
交渉しても話がまとまらない場合には、労働審判や訴訟といったような裁判所を用いた手続きを取っていくことになります。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
労働審判、訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
毎日残業2時間を改善するための対処法4つ
毎日残業を2時間しているような状態は違法の可能性があるうえに、心身にも影響を及ぼす可能性があります。
事態の深刻化を避けるためにも、もしも体調などに影響が出ている場合には、改善のために動いていく必要があります。
毎日残業2時間を改善するために具体的な対処法は、以下の4つです。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:労働基準監督署に相談する
対処法4:転職する
それでは、毎日残業2時間を改善するための対処法を順番に解説していきます。
対処法1:上司に相談する
毎日残業2時間を改善するための対処法の1つ目は、上司に相談することです。
長時間の残業を改善したい場合には、まずは上司に残業を減らしてほしい旨を素直に相談してみましょう。
年間を通して毎日残業を2時間している場合、特別条項が適用されるような特別な事情がない限り違法となるため、正直に申し出れば調整してもらえる可能性があります。
ただし、毎日残業2時間というのは、その日1日だけで見れば2時間の残業でしかないため、改善を訴えても理解を得られないかもしれません。
理解を得るためには、なるべく具体的に説明することが重要になります。
例えば、以下のようなことを説明することが考えられます。
・先月の残業は何時間だったか
・(常態化している場合)現時点での今年の残業時間が何時間か
・体調不良がある場合には、どのような症状が出ているか(診断書があるか)
・睡眠時間やプライベートへの支障
このように、具体的に説明することで上司の理解を得られやすくなります。
というのも、会社は労働者の健康や安全に配慮する義務を負っているため、このような相談があれば、業務の再分配などの何らかの配慮をしてくれる可能性があるためです。
対処法2:残業を拒否する
毎日残業2時間を改善するための対処法の2つ目は、残業を拒否することです。
既に説明したとおり、毎日残業2時間というのは、年間を通してみれば違法の可能性があります。
そのような違法な残業は、拒否することを検討しましょう。
もちろん、違法な状況でないにも関わらず残業を拒否すれば、事情によっては懲戒や解雇が有効になってしまう可能性があるため、注意は必要です。
例えば、36協定が締結されていて、就業規則などにも記載があり、翌日では間に合わない事案に関しての残業を指示されているにも関わらず拒否した場合などには、懲戒が有効となる可能性があります。
残業を拒否する具体的な方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
対処法3:労働基準監督署に相談する
毎日残業2時間を改善するための対処法の3つ目は、労働基準監督署に相談することです。
毎日残業を2時間しているような状態は違法の可能性があるため、労働基準監督署に相談することが考えられます。
相談することで、会社に対して労働基準法違反の事実があるのか調査を行い、その結果に応じて指導してもらうことができるため、状況が改善する可能性があります。
しかし、労働基準監督署もすべての事案に対応できるわけではありません。
これは、相談の中から緊急性の高い事案を優先して対応する傾向にあるためです。
特に電話のみでの相談や匿名での相談の場合、緊急性の低い事案として扱われてしまう可能性があるのです。
そのため、実際に労働基準監督署に赴き、氏名、会社名などを告げた上で相談することをおすすめします。
もしも名前などを会社に伝わらないようにしたければ、その旨を労働基準監督署に伝えること配慮してもらうことができます。
労働基準監督署への通報については、以下の記事で詳しく解説しています。
対処法4:転職する
毎日残業2時間を改善するための対処法の4つ目は、転職することです。
毎日残業を2時間することが当たり前になっているような会社では、そのような会社風土になっていることもあるため、会社が改善に動こうとしてくれない場合もあるでしょう。
そのような場合には、転職してしまうのも1つの手段になります。
転職の際に長時間労働や残業が少ない会社かを判断するポイントは、以下の4つです。
・長時間分の固定残業代がないかを確認する
・タイムカードがあるかを確認する
・業務量と比較して人員が少なすぎないかを確認する
・社員数に対して採用人数が多すぎないかを確認する
ただし、転職は転職先が見つからなかったり、転職後に大きく収入が減る可能性があるなどのリスクを伴うことであるため、先を見据えて慎重に検討するようにしましょう。
ホワイト企業の特徴と見分け方については、以下の記事で詳しく解説されていますので読んでみてください。
残業代請求はリバティ・ベル法律事務所におまかせ
残業代請求については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
残業代請求については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきます。
リバティ・ベル法律事務所では、残業代請求について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しておりますので、あなたの最善の解決をサポートします。
リバティ・ベル法律事務所では、残業代問題に関して、「初回相談無料」「完全成功報酬制」を採用していますので、少ない負担で気軽にご相談できる環境を整えています。
残業代の未払いに悩んでいる方は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、毎日残業2時間が違法になる可能性が高い理由を説明したうえで、未払いの残業代の請求方法や常態化した残業から抜け出すための対処法について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると、以下のとおりです。
・毎日残業2時間は、日本の1日の平均残業時間の約2倍である。
・毎日残業2時間は、年間を通してみると年間の残業の上限時間の約1.5倍になるため、違法の可能性が高い。
・毎日残業2時間は、身体に影響を及ぼす可能性があります。
・毎日残業2時間した場合の月の残業代、手取り、3年間続けた場合の残業代の総額は、以下の通りです。
・毎日残業2時間における未払い残業代を請求するステップは、以下の4つです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟
・毎日残業2時間を改善するための対処法は、以下の4つです。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:労働基準監督署に相談する
対処法4:転職する
この記事が毎日残業2時間が普通なのかと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので、読んでみてください。