解雇とはどのような意味か分かりにくいと悩んでいませんか?
解雇という言葉自体は聞いたことがあるという方がほとんどだと思いますが、その正確な意味となるとよくわかっていない方もいますよね。
解雇とは、雇用主が一方的に労働者を退職させることをいいます。
退職が労働者の意思によるものではない点で辞職や合意退職等の通常の退職とは異なっています。
解雇には、普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の3つの種類があり、それぞれ法律上の規制も異なっています。
解雇に関する法規制で最も重要なのは、解雇権濫用法理です。日本における解雇が厳格だと言われる所以です。
また、解雇については非常に多くの判例が蓄積されていますので、解雇がどのようなものかを知るうえでとくに重要ないくつかを厳選して紹介いたします。
あなたが解雇の対象となってしまった場合でも、突然退職となることは多くはなく、通常は一定の手続きが踏まれていきます。
この記事では、解雇がどのようなものかイメージがつかない方に向けて、可能な限りわかりやすいように工夫をして、解雇がどのようなものかを説明していきたいと考えています。
今回は、解雇とはどういう意味かを分かりやすく簡単に弁護士が徹底解説します。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば解雇とはどのようなものかがよくわかるはずです。
目次
解雇とは?どういう意味かを簡単に分かりやすく説明
解雇とは、雇用主が一方的に労働者を退職させることをいいます。
分かりやすく言うと、雇用主が労働者の同意を得ることなく辞めさせることが解雇です。
解雇された人は、解雇日をもって退職したことになります。
そのため、解雇日付けで、雇用保険や社会保険の資格喪失手続きが行われることになりますし、解雇日以降は会社からお給料を支払ってもらえなくなります。
例えば、ある日、会社があなたに対して、解雇通知書を渡して、〇月〇日をもって解雇となりますなどと、告げてきます。
これが解雇の典型的な例です。
他方で、会社があなたに対して、「あなたを雇用し続けることが難しいので退職してくれないか」と告げてくるのは、一方的に辞めさせているわけではないので解雇ではありません。
会社が労働者に対して自主的に退職するように促すことは、退職勧奨(たいしょくかんしょう)といいます。
退職勧奨とは何かについては、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇と辞職・合意退職の違い
退職には、解雇・辞職・合意退職の3つがあります。
解雇は、雇用主が一方的に労働者を退職させることです。労働者の同意がないため厳格な規制があります。
辞職は、労働者が一方的に退職することです。期間の定めのない雇用契約では2週間前までに退職することを伝える必要があります。
合意退職は、労働者が雇用主と合意のうえで退職することです。お互いの合意があるためとくに規制はありません。
解雇・辞職・合意退職の違いを比較すると以下の表のとおりです。
会社から退職届を記載するように求められて、これを書いてしまうと、解雇ではなく「辞職」や「合意退職」とされてしまいますので注意しましょう。
退職届を書いてしまった場合の撤回については以下の記事で詳しく解説しています。
解雇の種類は3つ|普通解雇・懲戒解雇・整理解雇
解雇には、普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の3つがあります。
それぞれ順番に説明していきます。
普通解雇
普通解雇とは、最も一般的な解雇であり、会社が一方的に雇用契約を解約するものです。
懲戒解雇や整理解雇に該当しないものがこれに該当します。
民法627条1項が「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。」としていることを根拠として行われます。
能力不足や勤務成績の不良、協調性不足、勤怠不良などによって行われるのが典型になります。
能力不足を理由とする解雇については以下の記事で詳しく解説しています。
勤怠不良を理由とする解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
懲戒解雇
懲戒解雇とは、労働者が企業の秩序に違反したことに対する制裁として行われる解雇です。
就業規則に規定された懲戒解雇事由に該当する場合に懲戒解雇が行われることになります。
無断欠勤や業務命令違反、犯罪行為などが典型となります。
懲戒解雇とは何かについては以下の記事で詳しく解説しています。
整理解雇
整理解雇とは、企業の経営上必要とされる人員削減のために行われる解雇です。
労働者に落ち度がなく、会社の事情に基づいて行われる点に特徴があります。
いわゆるリストラというのは、日本ではこの整理解雇の意味で用いられることが多いです。
整理解雇とは何かについては、以下の記事で詳しく解説しています。
整理解雇とは何かについては以下の動画でも詳しく解説しています。
~内定取り消しや試用期間満了時の本採用拒否~
内定取り消しや試用期間満了時の本採用拒否についても、解雇に準じて考えられています。
内定取り消しについては、以下の記事で詳しく解説しています。
試用期間満了時の本採用拒否については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇に関する法規制|労働契約法・労働基準法など
解雇に関する法規制としてとくに重要なものは以下の3つです。
法規制1:解雇権濫用法理
法規制2:解雇禁止
法規制3:解雇予告
それでは順番に説明していきます。
法規制1:解雇権濫用法理
解雇に関する法規制で重要なものの1つ目は、解雇権濫用法理です。
解雇権濫用法理とは、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当性を欠く場合には、解雇が無効となる(効力が否定される)という法理です。
労働契約法で規制されています。
つまり、解雇が不当なものであれば、解雇権濫用法理により、解雇日よりも後も引き続き労働者であったことになります。
解雇が無効であった場合には、解雇日以降の賃金を遡って請求できる可能性があります。
バックペイ(解雇後の賃金)については、以下の動画でも詳しく解説しています。
解雇権濫用法理による解雇の基準については、以下の表で整理していますのでご参照ください。
法規制2:解雇禁止
解雇に関する法規制で重要なものの2つ目は、解雇制限です。
解雇制限に反する解雇は無効となります。
法律上、解雇が禁止される場合には、例えば以下のものが挙げられます。
・国籍、信条又は社会的身分による差別的取り扱いの禁止に違反する場合
・公民権行使を理由とする解雇の禁止に違反する場合
・業務上の負傷・疾病の休業期間等の解雇制限に違反する場合
・産前産後休業期間等の解雇制限に違反する場合
・育児・解雇休業法による解雇の禁止に違反する場合
・男女雇用機会均等法による解雇の禁止に違反する場合
・短時間・有期雇用労働法による解雇の禁止に違反する場合
・個別労働紛争解決促進法による解雇の禁止に違反する場合
・公益通報者保護法による解雇の禁止に違反する場合
・労働施策総合推進法による解雇の禁止に違反する場合
・不当労働行為に該当する場合
法規制3:解雇予告
解雇に関する法規制で重要なものの3つ目は、解雇予告です。
会社は、労働基準法上、解雇は30日前までに行わなければならないとしています。
仮に予告を行わずに解雇する場合には、不足日数分に相当する手当を支払う必要があります。
解雇予告手当については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇に関する判例
解雇に関する判例として重要なものを厳選すると以下の16個です。
解雇に関する判例については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇手続き|解雇をされる場合の流れ
あなたが解雇の対象となってしまった場合でも、いきなりその日に退職となることはあまりなく、通常は一定の手続きが踏まれていきます。
解雇は会社にとってリスクの大きい行為ですし、法律上も最終手段として用いなければならないとされているためです。
具体的には、解雇をされる場合の流れは以下のとおりです。
流れ1:注意や業務改善指導がされる
流れ2:退職勧奨をされる
流れ3:解雇予告をされる
流れ4:解雇される
それでは各流れについて順番に説明していきます。
流れ1:注意や業務改善指導がされる
解雇される前にまず、注意や業務改善指導をされるのが通常です。
会社は労働者を解雇する前に改善の機会を与えなければいけないためです。
改善の機会を与えることなく解雇した場合には、雇用を継続できないほど重大な事由ではなく解雇は濫用により無効とされることがあります。
業務改善指導については以下の記事で詳しく解説しています。
流れ2:退職勧奨をされる
解雇される前には、退職勧奨を行われることが多くなっています。
解雇については法律上厳格な規制があり、会社は紛争化した場合に大きなリスクを負うことになるためです。
ある日、人事担当から面談室等に呼ばれて、雇用絵を継続することが難しいので退職してくれないかと話を切り出されることが通常です。
退職勧奨をされたらどうすればいいかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
流れ3:解雇予告をされる
解雇される30日前に解雇をすると予告されるのが通常です。
先ほど説明したように労働基準法では解雇をする前には予告をしなければならないとされているためです。
ただし、解雇予告が省略されて、その代わりに解雇予告手当が支給されることもあります。
流れ4:解雇される
解雇される際には、解雇する旨の意思表示がされます。
多くの場合には、解雇通知書という文書を交付されることになります。
(出典:厳選!解雇通知書のテンプレート5つ|弁護士が上手な書き方を解説【無料雛型(ひな型)付き】 (libertybell-law.com))
解雇を予告される場合には、解雇予告通知書として解雇通知書を兼ねられることもあります。
解雇通知書については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇された後に労働者がやることについては、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇についてよくある疑問6つ
解雇についてよくある疑問としては、以下の6つがあります。
Q1:解雇で請求できる可能性のある金銭は?
Q2:不当解雇の証拠は?
Q3:解雇は会社都合になる?
Q4:解雇の相談先は?
Q5:解雇の撤回は拒否できる?
Q6:解雇に時効はある?
それでは、各疑問について順番に解消していきます。
Q1:解雇で請求できる可能性のある金銭は?
解雇で請求できる可能性のある金銭としては、以下の5つがあります。
権利1:退職金
権利2:解雇予告手当
権利3:解雇後の賃金
権利4:損害賠償
権利5:解決金
解雇で請求できる可能性のある金銭やその請求方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q2:不当解雇の証拠は?
不当解雇された場合には以下の4種類の証拠を集めていただくことになります。
⑴ 労働条件がわかる証拠
⑵ 解雇理由がわかる証拠
⑶ 解雇事由の有無に関する証拠
⑷ 解雇後の賃金や慰謝料の証拠
具体的には、以下の表のとおりです。
不当解雇の証拠については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q3:解雇は会社都合になる?
解雇された場合の離職理由は、原則として、会社都合になります。
ただし、例外的に重責解雇とされる場合には、自己都合となります。
解雇が会社都合になるかについては以下の記事で詳しく解説しています。
会社都合退職については、以下の動画でも詳しく解説しています。
Q4:解雇の相談先は?
解雇の相談先は、弁護士、労働組合、労働局の3つがあります。
それぞれの特徴を比較すると以下のとおりです。
解雇の相談先については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q5:解雇の撤回は拒否できる?
解雇は、労働者の同意がなければ、撤回することができません。
労働者が解雇の効力を争っている場合には、解雇の撤回に同意しているとされる可能性があります。
解雇の撤回については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q6:解雇に時効はある?
不当解雇の無効を主張して争うこと自体には、時効はありません。
ただし、不当解雇に関連する金銭の請求については、賃金請求は3年、慰謝料請求は3年、退職金請求は5年、解雇予告手当の請求は2年です。
また、長期間経過後に不当解雇を争う場合には、①信義則違反を主張されることがある、②就労の意思を否定されることがある、③証拠を集めにくくなるというデメリットがあります。
解雇の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。
不当解雇の相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
不当解雇の相談については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
解雇問題は専門性が高いため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇の有効性につき見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
また、解雇事件については、依頼者の方の負担を軽減するために着手金無料、完全成功報酬としております。
初回相談は無料となっておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
以上のとおり、今回は、解雇とはどういう意味かを分かりやすく簡単に弁護士が解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・解雇とは、雇用主が一方的に労働者を退職させることをいいます。
・退職が労働者の意思によるものではない点で辞職や合意退職等の通常の退職とは異なっています。
・解雇には、普通解雇・懲戒解雇・整理解雇があります。
・解雇に関する法規制としてとくに重要なものは以下の3つです。
法規制1:解雇権濫用法理
法規制2:解雇禁止
法規制3:解雇予告
・解雇をされる場合の流れは以下のとおりです。
流れ1:注意や業務改善指導がされる
流れ2:退職勧奨をされる
流れ3:解雇予告をされる
流れ4:解雇される
この記事が解雇とは何かを知りたいと考えている労働者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。