もしも労働問題に直面した場合にどこに相談すればいいか知っていますか?
実は、労働問題の相談先はたくさんあります。例えば、以下のとおりです。
相談先1:労働条件相談ほっとライン
相談先2:労働基準監督署
相談先3:労働局|総合労働相談コーナー
相談先4:弁護士
相談先5:(特定)社会保険労務士
相談先6:認定司法書士
相談先7:労働組合
相談先8:ハローワーク
相談先9:みんなの人権110番(法務省)
相談先10:社内通報窓口
相談先11:労働者健康安全機構
あなたが直面した労働問題を上手に解決するためには、各相談先の特徴を理解した上で、相談先を選ぶ必要があります。
ただし、労働問題にも種類がありますので、この記事では、その種類ごとの適切な相談先の選び方を解説していきます。
また、労働問題の相談の中には、是非、皆さんに知っておいてほしい相談が数多くあります。ブラック企業は、労働者の知識がないことに乗じて劣悪な環境での労働を強いていることがあるのです。
そのため、この記事では、私が日々労働相談を受ける中で、是非、皆さんに知っておいてほしいと感じたQ&A30個を厳選して、わかりやすく紹介していこうと思います。
更に、労働問題に直面する前に日頃からしておいていただきたい対策についても紹介していきます。
このように、今回は、「もしものときのために」、①労働問題の相談先、②知っておいてほしい労働問題のQ&A、③日頃からできる対策を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、労働問題に直面したときに悩まずに行動することができるはずですので、後悔することがなくなるでしょう。
解決に必要な情報を網羅的に記載しているため分量が多くなっていますので、労働問題に直面することがあったら、是非、「もう一度この記事を見返して」いただけますと幸いです。
目次
- 1 `もしも`の労働問題の相談先と特徴まとめ
- 2 労働問題の種類別!おすすめの相談先の見つけ方
- 3 労働問題の相談前にしておきたい準備
- 4 労働問題の知っておいてほしい厳選Q&A30個
- 4.1 Q1:残業代は退職後でも請求できる?
- 4.2 Q2:タイムカードがないと残業代は請求できない?
- 4.3 Q3:残業代請求に時効はある?
- 4.4 Q4:管理職でも残業代はもらえる?
- 4.5 Q5:固定残業代が支払われていても残業代をもらえることはある?
- 4.6 Q6:30分以上残業をしなければ残業代がもらえないのは違法?
- 4.7 Q7:残業代が30時間分までしか支払われないのは違法?
- 4.8 Q8:残業時間の上限は何時間?
- 4.9 Q9:残業は拒否できる?
- 4.10 Q10:残業の過労死ラインは何時間?
- 4.11 Q11:勝手に給料を減額するのは違法?
- 4.12 Q12:残業代未払いに罰則はある?
- 4.13 Q13:仕事が原因でうつ病になったのだけど会社の責任は?
- 4.14 Q14:会社をクビになる前兆には何がある?
- 4.15 Q15:業務改善命令をされた場合にはどう対処すればいい?
- 4.16 Q16:退職勧奨は応じなくても大丈夫?
- 4.17 Q17:解雇の条件が厳格って本当?
- 4.18 Q18:解雇が不当な場合には何を請求できる?
- 4.19 Q19:懲戒解雇されると再就職への影響はある?
- 4.20 Q20:解雇が不当と感じた場合の注意点は?
- 4.21 Q21:解雇を争うのに時効はある?
- 4.22 Q22:復職したくないのだけど解雇は争える?
- 4.23 Q23:退職を認めてもらえないのだけどどうすればいい?
- 4.24 Q24:退職届を出した後でも撤回はできる?
- 4.25 Q25:退職したらやることは何がある?
- 4.26 Q26:パワハラの慰謝料の相場は?
- 4.27 Q27:セクハラの慰謝料の相場は?
- 4.28 Q28:転勤や業務内容の変更は拒否できる?
- 4.29 Q29:有給休暇は理由がないと使えない?
- 4.30 Q30:退職する時に有給は買い取ってもらえる?
- 5 労働問題について日頃からできる対策5個
- 6 まとめ
`もしも`の労働問題の相談先と特徴まとめ
労働問題の相談先にはたくさんありますが、おすすめの相談先をまとめると以下の11個です。
相談先1:労働条件相談ほっとライン
相談先2:労働基準監督署
相談先3:労働局|総合労働相談コーナー
相談先4:弁護士
相談先5:(特定)社会保険労務士
相談先6:認定司法書士
相談先7:労働組合
相談先8:ハローワーク
相談先9:人権相談(法務省)
相談先10:社内通報窓口
相談先11:労働者健康安全機構
それでは順番に説明していきます。
相談先1:労働条件相談ほっとライン
労働条件相談ほっとラインとは、労働問題について専門的な知識を持っている方が、あなたの状況に応じて、電話により助言をしてくれるものです。厚生労働省の委託事業です。
手軽に全国どこからでも助言をもらうことができるため最初の一歩として利用するのがいいでしょう。匿名で利用することが可能です。
詳しくは、以下のリンクをご確認ください。
労働条件相談ほっとライン
相談可能な内容
労働条件相談ほっとラインに相談可能な内容は、違法な時間外労働・過重労働による健康障害・賃金不払残業などの労働基準関係法令に関する問題です。
解決方法
労働条件相談ほっとラインの解決方法は、電話による相談者への助言です。
注意点として、労働条件相談ほっとラインに相談しても、代わりに職場への調査や指導をしてもらえるわけではありません。
助言してもらったことを前提に、あなた自身が行動していく必要があります。
費用
労働条件相談ほっとラインを利用する場合の費用は、無料です。
相談先2:労働基準監督署
労働基準監督署は、労働基準法の実施に関して調査や指導の権限をもっている機関です。労基署と呼ばれることもあります。
全国に存在しますので、所在地については以下のリンクをご参照ください。
全国労働基準監督署の所在案内
相談可能な内容
労働基準監督署に相談可能な内容は、労働基準関係法令に違反する労働問題です。
例えば、以下のような事項です。
☑給料未払い
☑残業代未払い
☑長時間残業
☑労働条件通知書の記載が事実と異なる
☑解雇予告手当の不払い
これに対して、不当解雇やハラスメントの問題については、労働基準関係法令により規律されている問題ではないため、相談をしても対応してもらえないことがあります。
解決方法
労働基準監督署の解決方法は、助言、調査、指導です。
労働基準監督署に相談すると多くの場合、まずは、労働基準関係法令のルールを教えてもらうことができ、このように行動した方がいいなどの方針を助言してもらうことができます。
そして、必要がある場合には、労働基準監督署は会社を調査してくれます。事前に会社に予告をして調査をすることもありますし、予告なしに調査を行うこともあります。調査は、資料の確認やヒアリングが中心です。
そして、労働基準監督署は、調査後、法律違反や改善の必要な箇所がある場合には、会社に対して、指導をしてくれます。
費用
労働基準監督署への相談費用は、無料です。
相談先3:労働局|総合労働相談コーナー
労働局は、情報の提供や相談、並びに助言や指導、紛争調整委員会によるあっせんも行っています。
全国に存在しますので、所在地については以下のリンクをご参照ください。
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧
相談可能な内容
労働局に相談可能な内容は、個別労働関係紛争です。
つまり、職場において働く労働者と雇用主との間で、賃金、解雇、配置転換など労働条件に関係して発生したトラブルについて相談することができます。
労働基準監督署に相談できない不当解雇やハラスメントなどの問題も相談可能です。
解決方法
労働局の解決方法は、助言・指導と、あっせんです。
まず、労働局には総合労働相談センターが設置されています。総合労働相談センターでは、人事労務管理の実務家等に相談して助言を得ることができます。
そして、必要がある場合には、雇用主側の担当者を呼びだして事情聴取を行い、書面又は口頭で指導をしてくれることがあります。
助言・指導でも解決できない場合には、あっせんを行うようにすすめられることがあります。あっせんを申し立てると、労働問題の専門家が入り、紛争の解決のために調整をしてくれます。
ただし、労働局のあっせんは権利関係に関する心証形成の審理を行うことなく、迅速に金銭的解決を図るための手続きとして利用されており、労働審判や裁判上の和解に比べて解決金額が格段に低くなる傾向にあります。
費用
労働局への相談費用は、無料です。
ただし、あっせんの申し立てには費用は必要です。
相談先4:弁護士
弁護士は、法律の専門家です。法律や判例の知識、法的手続きを用いて、労働問題を解決します。
幅広く相談することができますし、あなたに代わって代理できる金額や手続きにも特に制限はありません。
相談可能な内容
弁護士に相談可能な内容は、特に制限はありません。
例えば、未払い賃金や残業代、慰謝料等の損害賠償、不当解雇された場合の地位の確認などの相談が可能です。
弁護士に相談すれば、あなたにどのような権利があるのか、どのような証拠を集めるべきなのか、どのような手続きを利用するべきで、解決までにどのくらいの期間や費用がかかるのかを教えてもらうことができます。
解決方法
弁護士の解決方法は、調査、交渉、裁判手続です。
弁護士に相談すると、まずヒアリングや資料の確認が行われます。依頼した場合には、会社に対して、足りない資料の開示を求めるなどの調査をしてもらうこともできます。
そして、弁護士は、調査した内容をもとに、会社に対して具体的な請求を行い、会社からの回答に応じて交渉を行うことになります。
交渉での解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判手続きを行うことになります。
労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。
残業代の裁判については、以下の記事で詳しく解説しています。
不当解雇の裁判については、以下の記事で詳しく解説しています。
費用
弁護士に相談・依頼する場合の費用は、有料です。
各弁護士費用の相場は以下のとおりです。
【残業代請求の弁護士費用相場】
【不当解雇・退職勧奨の弁護士費用相場】
相談料について、1時間1万円程度のことが多いですが、現在は初回無料相談を行っている弁護士も増えてきています。
着手金については、完全成功報酬制を採用している弁護士に頼めば無料となります。着手金は事件が失敗に終わった場合には戻ってこない費用となりますので、完全成功報酬制の弁護士に依頼することでリスクを軽減することができます。
残業代請求の弁護士の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
不当解雇の弁護士の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨対応の弁護士の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
相談先5:(特定)社会保険労務士
社会保険労務士は、労働問題や社会保険問題の専門家です。
社会保険労務士の中でも「特定社会保険労務士」の認定を受けた方は、あっせん等の裁判外紛争手続きを代理することができます。
相談可能な内容
社会保険労務士には、解雇、残業代、労災などの問題を相談することができます。
解決方法
社会保険労務士の解決方法は、労災保険の書類の作成や申請代行と裁判外紛争手続の代理です。
まず、あなたが業務や通勤が原因で病気やケガをした場合には、労災保険の書類の作成や申請を代行してもらうことができます。
また、裁判外紛争手続きの代理としては、特定社会保険労務士であれば、解雇や残業代等の問題について、裁判外の手続きによる解決を代理してもらうことができます。
ただし、120万円を超える事件について代理するためには、弁護士と共同で行う必要があるとされています。
費用
社労士に依頼する場合の費用は、有料となります。
社労士により費用が異なりますので直接確認してみるのがいいでしょう。
相談先6:認定司法書士
司法書士は、法律知識を用いて登記、供託、訴訟その他の法律業務を行います。
法務大臣より認定を受けた認定司法書士は、訴訟等の代理業務を行うことができます。
相談可能な内容
司法書士は、訴訟その他の法律業務を扱っていますので、給料や残業代の未払いなどの問題についても相談可能です。
ただし、司法書士ごとに取り扱い分野がありますので、労働問題についてどの程度取り扱っているかを確認した方がいいでしょう。
解決方法
司法書士が行う解決手段は、交渉のみではありません。交渉が決裂する場合には訴訟等の裁判手続きが可能です。
ただし、司法書士は、労働審判手続の代理を行うことはできません。
なぜなら、司法書士が代理できるのは簡易裁判所において取り扱う手続きであり、労働審判は地方裁判所において行われるためです。
また、司法書士であっても140万円を超える事件を扱うことができないという点には注意が必要です。
例えば、未払い給料を調査する中で140万円を超えることが明らかになることがあります。そのため、140万円を超える可能性がある場合には、弁護士に相談した方がいいでしょう。
費用
司法書士に依頼する場合には、有料となります。
費用については、個別の司法書士に確認するのがいいでしょう。
参考までに、日本司法書士連合会によるアンケートでは、「貸付金100万円の貸金返還請求訴訟」における着手金と報酬金の関東地区の全体の平均値は以下のとおりとなっています。
(出典:日本司法書士連合会による「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」28頁を加工して作成)
相談先7:労働組合
労働組合は、労働者が主体となり自主的に労働条件の維持改善をしていくための団体です。
労働組合はあなた自身が組合員の一人として活動していく点に特徴があります。
相談可能な内容
労働組合に相談可能な内容は、労働条件や職場環境についての問題です。
例えば、賃金や解雇、ハラスメントなどの問題を相談することができます。
解決方法
労働組合の解決方法は、団体交渉と争議行為です。
団体交渉とは、雇用主に対して労働条件や職場環境に関して交渉するものです。雇用主は、団体交渉を求められた場合には、誠実に交渉に応じる義務があります。
争議行為とは、雇用主に対する要求を実現するためにストライキなどの行為を行うものです。
費用
労働組合へ加入して労働問題を解決する場合の費用は、有料です。
加入する際の「加入金」や毎月発生する「組合費」、紛争を解決した場合に納める「カンパ」と言われる費用などがかかります。
また、通常、労働組合との関係については、特定の労働問題が解決した場合でも脱退するまでは継続することになります。
相談先8:ハローワーク
ハローワークは、職業紹介や雇用保険の手続き等の事業を行っている国の機関です。公共職業安定所とも言われます。
ハローワークの所在地は以下のリンクをご参考ください。
全国ハローワークの所在案内
相談可能な内容
ハローワークでは、就職活動や失業保険の受給についての相談が可能です。
主に「就職する時」や「退職する時」などに利用することになります。
解決方法
ハローワークでは、就職活動については、進め方の助言や職業紹介などの支援を受けることが可能です。
失業保険については、申請の方法の案内や受給資格の決定、離職理由の判定をしてもらうことができます。
また、「離職票が届かない場合」や「離職票に記載された離職理由」が異なる場合などにも、調査や助言をしてくれることがあります。
費用
ハローワークを利用する場合の費用は、無料です。
相談先9:人権相談(法務省)
人権相談は、人権問題について電話や面談により相談できるものです。法務省が管轄しています。
詳しくは、以下のリンクをご確認ください。
法務省:人権相談
相談可能な内容
人権相談で相談可能な内容は、セクハラやパワハラ、家庭内暴力、体罰やいじめ、インターネットでの誹謗中傷、差別などです。
解決方法
解決方法は、職員又は人権擁護委員が調査を行い、必要に応じて以下の措置を行います。
⑴援助:関係機関への紹介、法律上の助言等を行います。
⑵調整:当事者間の間係整を行います。
⑶説示・勧告:人権侵害を行った者に対して改善を求めます。
⑷要請:実効的対応ができる者に対し、必要な措置をとるよう求めます。
⑸通告:間係行政機間に情報提供し、措置の発動を求めます。
⑹告発:刑事訴訟法の規定により、告発を行います。
⑺啓発:事件の間係者や地域に対し、人権尊重に対する理解を深めるための働きかけを行います。
費用
人権相談の相談費用は、無料です。
相談先10:社内通報窓口
社内通報窓口は、会社ごとに独自に設けられている社内の相談先です。
比較的規模が大きい会社ではこのような窓口がある場合があります。
相談可能な内容
相談可能な内容は、通常、ハラスメントやサービス残業、不正行為等です。
詳細は、会社内の案内等を確認しましょう。
解決方法
解決方法は、通常、通報内容を調査して、その結果を通報者にフィードバックしたうえで、是正措置が行うというものです。
ただし、会社ごとに具体的なプロセスが異なる場合がありますし、解決方法が明確化されていない場合や通報窓口が形骸化している場合などもありますので注意が必要です。
費用
社内通報窓口への相談は、通常、無料です。
相談先11:労働者健康安全機構
労働者健康安全機構とは、独立行政法人労働者健康安全機構法に基づいて設立された、厚生労働省が所轄する法人です。
詳しくは以下のリンクご参考ください。
労働者健康安全機構
相談可能な内容
労働者健康安全機構には、会社が倒産してしまった場合の未払い賃金の立替についての相談をすることができます(労働基準監督署でも相談可能です)。
解決方法
労働者健康安全機構は、会社に代わり未払い賃金を立て替えて労働者に支払ってくれます。
ただし、立て替え払いを受けることができる額は、退職時年齢に応じて88万円~296万円の上限が設けられています。
また、立て替え払いを受けることができる額は、未払い賃金の額の8割です。
解決手段
労働者健康安全機構への相談は、無料です。
労働問題の種類別!おすすめの相談先の見つけ方
それでは、先ほどまとめた相談先について、労働問題の種類別にどこに相談に行けばいいのか分かりやすく説明していきます。
具体的には、以下の3つの労働問題に分類して説明していきます。
分類1:給料・残業代未払い等の賃金未払問題
分類2:不当解雇・退職勧奨・配置転換等の人事問題
分類3:ハラスメント・職場いじめ問題
分類1:給料・残業代未払い等の賃金未払問題
賃金未払問題の相談先については、以下のフロチャートに従って選ぶことをおすすめします。
まず、会社が既に倒産している場合には、労働者健康安全機構又は労働基準監督署に相談に行きましょう。
次に、電話だけで相談したい方には、労働条件相談ほっとラインがおすすめです。
また、自分で主体的に行動したい方は、労働組合に相談しましょう。
これに対して、法的な争点がある場合又は早く確実に回収できるなら有料でもいい場合には、弁護士・司法書士・社労士に相談しましょう。
ただし、140万円を超えるような場合には、弁護士に相談することがおすすめです。認定司法書士は140万円を超える事件は扱うことができず、特定社会保険労務士は120万円を超える事件は弁護士と共同受任する必要があるためです。
法的な争点がなく、かつ、無料で相談したい場合には、労働基準監督署がおすすめです。
給料未払いの相談先については、以下の記事で詳しく解説しています。
サービス残業の相談先については、以下の記事で詳しく解説しています。
分類2:不当解雇・退職勧奨・配置転換等の人事問題
人事問題については、以下のフロチャートに従って選ぶことをおすすめします。
解雇や配置転換が法的に無効なことを確認したい場合には、弁護士に相談しましょう。
また、解雇された後の賃金や慰謝料、解決金などの金銭的な請求をしたい場合にも、弁護士がおすすめです。
ただし、交渉や手続きを任せてしまうのではなく、自分も主体的に交渉に参加していきたいという方は、労働組合に相談するのがいいでしょう。
費用をかけずに、迅速に解決したい場合には、労働局に相談するといいでしょう。ただし、先ほど見たように、労働局のあっせんは解決金の金額が低廉になりがちです。
解雇の相談先については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨の相談先については、以下の記事で詳しく解説しています。
分類3:ハラスメント・職場いじめ問題
ハラスメント問題等については、以下のフロチャートに沿って相談先を決めるのがいいでしょう。
まず、社内で解決したい場合には、社内通報窓口に相談しましょう。
また、自分で主体的に交渉したい場合には、労働組合に相談しましょう。
次に、損害賠償請求が目的ではなく、ハラスメントをやめてもらうことが目的である場合には、人権相談を利用するのがいいでしょう。
これに対して、損害賠償請求もしたいが無料で解決したいという場合には労働局に相談しましょう。
もっとも、正当な金額を獲得できるなら有料でもいいのであれば、弁護士に相談するのがいいでしょう。ハラスメントの損害賠償については慰謝料の請求が中心になるものと想定され、金額に幅があります。そのため、金額の制限なく代理できる弁護士がおすすめなのです。
労働問題の相談前にしておきたい準備
労働問題の相談をより充実したものにするためには、準備をしてから行くことをおすすめします。
労働問題の相談前にしておきたい準備としては、以下の3つがあります。
準備1:事実関係を整理する
準備2:自分が望む解決を言えるようにする
準備3:手元の証拠を持参する
順番に説明していきます。
準備1:事実関係を整理する
労働問題の相談前にしておきたい準備の1つ目は、事実関係を整理することです。
労働問題の相談に行くと、あなたの基本的な労働条件や業務内容と問題に関する経緯、会社とのやり取りを確認されることになります。
例えば、相談に行く際には、以下のような内容を整理しておいた方がいいでしょう。
〇一般的な事項
・入社時期
・業務内容
・役職
・賃金の額や内訳
〇相談する問題について
・時系列(具体的な日付まで整理しておく)
・会社とのやり取り
具体的な事実関係が明らかでないと、相談についての回答も曖昧なものとなってしまいます。
そのため、可能な限り事実関係は正確に伝えられるようにしておくといいのです。
準備2:自分が望む解決を言えるようにする
労働問題の相談前にしておきたい準備の2つ目は、自分が望む解決を言えるようにしておくことです。
労働問題については、あなたが望む解決により助言の内容も異なることがあります。
例えば、解雇問題であれば、「あなたが元の会社で働き続けたいのか」、「解決金をもらって他の会社で再就職することも考えているのか」により、助言の内容も異なります。
例えば、ハラスメント問題であれば、「ハラスメントが止まればいいのか」、「損害賠償を請求したいのか」により、助言の内容も異なります。
勿論、何ができるのかが分からないと、自分が望む解決を考えることも難しいかもしれませんが、おおよその意向については言えるようにしておいた方がいいでしょう。
あなたの意向がわかれば、助言の内容もその意向の実現に向けられた具体的なものとなるためです。
準備3:手元の証拠を持参する
労働問題の相談前にしておきたい準備の3つ目は、手元の証拠を持参することです。
雇用契約書や労働条件通知書、給与明細、就業規則等については、手元にあれば持参しましょう。
その他、相談する問題に関連する資料についても、手元にあるものは持参することがおすすめです。
客観的な資料があると助言の内容もより正確なものとなります。
労働問題の知っておいてほしい厳選Q&A30個
よくある労働問題の中で皆さんに知っておいてほしいQ&Aを厳選すると以下30個になります。
Q1:残業代は退職後でも請求できる?
Q2:タイムカードがないと残業代は請求できない?
Q3:残業代請求に時効はある?
Q4:管理職でも残業代はもらえる?
Q5:固定残業代が支払われていても残業代をもらえることはある?
Q6:30分以上残業をしなければ残業代がもらえないのは違法?
Q7:残業代が30時間分までしか支払われないのは違法?
Q8:残業時間の上限は何時間?
Q9:残業は拒否できる?
Q10:残業の過労死ラインは何時間?
Q11:勝手に給料を減額するのは違法?
Q12:残業代未払いに罰則はある?
Q13:仕事が原因でうつ病になったのだけど会社の責任は?
Q14:会社をクビになる前兆には何がある?
Q15:業務改善命令をされた場合にはどう対処すればいい?
Q16:退職勧奨は応じなくても大丈夫?
Q17:解雇の条件が厳格って本当?
Q18:解雇が不当な場合には何を請求できる?
Q19:懲戒解雇されると再就職への影響はある?
Q20:解雇が不当と感じた場合の注意点は?
Q21:解雇を争うのに時効はある?
Q22:復職したくないのだけど解雇は争える?
Q23:退職を認めてもらえないのだけどどうすればいい?
Q24:退職届を出した後でも撤回はできる?
O25:退職したらやることは何がある?
Q26:パワハラの慰謝料の相場は?
Q27:セクハラの慰謝料の相場は?
Q28:転勤や業務内容の変更は拒否できる?
Q29:有給休暇は理由がないと使えない?
Q30:退職する時に有給は買い取ってもらえる?
順番にこれらの悩みを解消していきます。
Q1:残業代は退職後でも請求できる?
残業代請求は、退職後でもすることが可能です。
会社を退職した後も、あなたがこれまで残業をした事実がなくなるわけではないためです。
実際、「在職中に残業代を請求すると報復を受けるのではないか」、「会社と気まずくなるのではないか」と感じて、退職後に請求する方も多くいるのです。
退職後の残業代請求については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q2:タイムカードがないと残業代は請求できない?
タイムカードがなくても、残業代を請求できる可能性があります。
残業の証拠はタイムカードだけではないためです。
残業時間の証拠には、例えば以下のものがあります。
①があると心強いですが、これがない場合には、②業務メール送信記録や③日報等の営業記録などの証拠がないかを検討します。
①②③いずれもない場合には、やむを得ないため、④残業時間のメモを残しておくなどの方法により、残業時間を立証していくことになります。
メモについては以下のように始業時刻と終業時刻、休憩時間を1分単位で正確に記録しておきましょう。
残業代請求の証拠については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q3:残業代請求に時効はある?
残業代の時効は、2020年3月末までに発生したものは2年、2021年4月1日以降に発生したものは3年です。
残業代の消滅時効は、令和2年の労働基準法改正で、2年から3年になったためです。
残業代の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q4:管理職でも残業代はもらえる?
管理職でも、残業代を請求できる可能性があります。
管理職には、「名ばかり管理職」と「管理監督者」があります。
労働基準法では、「管理監督者」には、時間外労働者や休日労働の残業代を支払う必要はないとされています。
「管理監督者」に該当するには、以下の条件を満たす必要があるとされています。
☑経営者との一体性
☑労働時間の裁量
☑対価の正当
例えば、経営会議などでの発言力に乏しい場合や休日・出勤時間を自由に決められない場合、新人の採用や部下の配置に関与できない場合などには、「管理監督者」には該当せず、「名ばかり管理職」にすぎない可能性が高いのです。
実際には、管理職とされている方の多くは、名ばかり管理職にすぎないというのが実情です。
管理職の残業代については、以下の記事で詳しく解説しています。
管理監督者とは何かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
Q5:固定残業代が支払われていても残業代をもらえることはある?
固定残業代が支払われていても、残業代をもらえることがあります。
具体的には、固定残業代が支払われていても、残業代をもらえるのは以下のようなケースです。
ケース1:固定残業代に関して雇用契約書や就業規則等の根拠がない場合
ケース2:基本給組込型では、組み込まれた残業代の金額が明確でない場合
ケース3:手当型では、残業代以外の性質が含まれている場合
ケース4:固定残業代が想定する残業時間が月45時間分を大きく上回る場合
ケース5:固定残業代が想定する残業時間を超えて残業をした場合
ケース1:まず、会社は、労働者の労働条件を勝手に決めることはできないので、固定残業代が残業代の支払いと認められるには雇用契約書や就業規則等の根拠があることが必要です。
ケース2:固定残業代の金額がわからなければ十分な残業代が支払われているのかが判断できません。そのため、基本給の一部が固定残業代であるような場合に残業代の支払いと認められるには、組み込まれた固定残業代の金額が明確である必要があります。
ケース3:固定残業代が基本給とは別の手当として支給される場合には、その手当に残業代以外の性質が含まれていることがあります。例えば、役職手当などの名称で固定残業代が支給されている場合に争いとなることがよくあります。手当に残業代以外の性質が含まれている場合には、固定残業代の金額が不明確となります。そのため、手当型の場合には、残業代の支払いと認められるには、残業代以外の性質が含まれていないことが必要です。
ケース4:後で説明するように、働き方改革により、残業時間の上限は、原則として月45時間とされています。そのため、固定残業代が想定する残業時間が月45時間を大きく上回る場合には、無効となる可能性があります。
ケース5:固定残業代は、一定の金額で何時間でも残業を命じることができる制度ではありません。会社は、固定残業代が想定する時間を超えて残業した時間については、差額の支払いをしなければならないのです。
固定残業代については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q6:30分以上残業をしなければ残業代がもらえないのは違法?
30分以上残業をしなければ残業代を支給しないなどの端数時間の切り捨ては、違法となる可能性があります。
裁判実務上では、残業代は1分単位で支払わなければいけないとされているためです。
ただし、行政解釈上では、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは、常に労働者に不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、労働基準法24条及び37条違反としては取り扱わないとされています(昭和63年3月14日基発150号)。
そのため、端数の切り捨てのみではなく、切り上げも行われているような場合には、労働基準監督署では違法とは扱ってもらえない可能性があります。
Q7:残業代が30時間分までしか支払われないのは違法?
会社が残業代の支払い金額に上限を設けることは違法です。
残業代の支払いについては、労働基準法により定められた義務であり、会社が独自のルールを設けることにより免れることができるものではないためです。
例えば、何時間残業しても、残業代は30時間分までしか支給しないなどのルールを設けている会社がありますが許されません。
Q8:残業時間の上限は何時間?
残業時間の上限は、36協定がある場合であっても、原則、月45時間以内、年360時間以内とされています。
ただし、予見することのできない業務量の大幅な増加がある場合には、例外的に、月100時間未満(2~6か月平均で80時間以内)、年720時間以内の残業を命じることができる場合もあります。
残業時間の上限については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q9:残業は拒否できる?
残業を拒否することができるのは、例えば、以下のような場合です。
・残業を命じることができない場合
・体調不良の場合
・残業の必要性が低い場合
・妊娠中又は出産から1年未満の場合
・養育や介護の必要がある場合
・サービス残業を命じられた場合
なお、①残業を命じるには、⑴36協定を締結していること、⑵雇用契約書や就業規則等に根拠があることが必要です。
残業の拒否については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q10:残業の過労死ラインは何時間?
過労死ラインは、以下の時間を超える時間外労働が行われた場合です。
又は
発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月あたりおおむね80時間
行政通達(平成13年12月12日基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」)では、以下のように記載されています。
疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の加重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、
① 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
② 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること
月100時間の残業については、以下の記事で詳しく解説しています。
月80時間の残業については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q11:勝手に給料を減額するのは違法?
給料の減額は、根拠がなければ違法です。
なぜなら、雇用契約の内容を勝手に会社が変更することはできないためです。
ただし、根拠がある場合には、給料の減額が許されることがあります。
具体的には、給料の減額の根拠としては、主に以下の6つがあります。
根拠1:懲戒処分としての減額
根拠2:降格に伴う減額
根拠3:給料の査定条項に基づく減額
根拠4:就業規則の給与テーブルの変更による減額
根拠5:労働協約に基づく減額
根拠6:合意に基づく減額
このような根拠がないのに会社が勝手に給料を下げることは許されないのです。
給料の減額については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q12:残業代未払いに罰則はある?
残業代の未払いには、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されるとされています。
労働基準法119条
「次の各号の一に該当する者は、これを6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」
一「…第37条…の規定に違反したもの」
労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1「使用者が、…労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
残業代未払いの罰則の対象は、①法律に違反した代表者や上司と②会社です。
残業代未払いの罰則については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q13:仕事が原因でうつ病になったのだけど会社の責任は?
会社は、労働者の健康や安全に配慮しなければならないとされています。
会社は、仕事が原因で労働者がうつ病になったようなケースにおいて、会社がこのような義務を怠っている場合には、債務不履行や不法行為に基づく損害賠償義務を負います。
裁判例には、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当」とした上で、恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及びその健康状態が悪化していることを上司らが認識しながら、その負担を軽減させるための措置を採らなかったことにつき、過失があるとしたものがあります(最二判平12.3.24民集54巻3号1155頁[電通事件])。
Q14:会社をクビになる前兆には何がある?
会社をクビになる前兆としては、例えば以下の10個があります。
前兆1:次に〇〇をしたらクビだと警告される
前兆2:業務を改善するように是正の機会を与えられる
前兆3:他の職種への変更や転勤を打診される
前兆4:退職を勧奨される
前兆5:始末書の提出を求められる
前兆6:懲戒処分としての減給・降格・出勤停止をされる
前兆7:弁明の機会を付与される
前兆8:新人の採用をしなくなる
前兆9:不採算部門の閉鎖を行う
前兆10:希望退職の募集を行う
解雇の前兆を感じた場合には、業務態度を改めるなどの方法で、解雇事由に該当しないように行動する必要があります。
状況により適切な対策も異なりますので、解雇のリスクが具体化している場合には、一度、専門家に相談しておいた方がいいこともあるでしょう。
解雇の前兆については以下の記事で詳しく解説しています。
Q15:業務改善命令をされた場合にはどう対処すればいい?
業務改善命令とは、業務の問題点を指摘して、それを改善するように命令するものです。
特に、書面で業務改善命令が行われた場合には、解雇の証拠とされることも多いため慎重な対処が必要となります。
会社から業務改善命令をされた場合には、まず改善の対象となる事実が具体的かを確認しましょう。
例えば、何月何日のミスや行為が対象とされており、どこに問題があるとされているのかを把握する必要があります。
改善の対象として指摘された事実があなたの認識と合致しているのであれば、真摯に改善に努めましょう。
改善計画の提出を求められた場合には、原因と対策を分析して作成することが一般的ですが、対策を思いつかない場合には会社側に相談してみるのも一つの手です。
これに対して、改善の対象として指摘された事実とあなたの認識に齟齬がある場合には、事実と異なる旨を伝えましょう。
過酷な改善目標を設定された場合や達成できなかった場合には解雇するなど言われた場合には、安易に承諾しないことが大切です。
業務改善命令への対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q16:退職勧奨は応じなくても大丈夫?
退職勧奨とは、会社から自主的に退職するように促されることを言います。
まず、会社から退職勧奨をされたとしても、あなたがこれに応じる義務は全くありません。退職勧奨は、あなたの意思を尊重して行わなければなりませんので、無理に退職届を提出させることは禁止されています。
あなたは、退職勧奨をされた場合には、「退職勧奨に応じる」又は「退職勧奨を拒否する」という2つの選択肢があります。
退職勧奨をされた場合には、通常、以下のような流れで進んでいきます。
退職勧奨に応じるかこれを拒否するかは、以下の点を考慮して慎重に決めましょう。
・解雇された場合にそれが有効となるかどうか
・その会社で働き続けたいか
・退職した場合に生活を維持できるか
退職勧奨をされた場合の対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q17:解雇の条件が厳格って本当?
日本では、解雇の条件はとても厳格です。実は、会社による解雇はその多くが解雇の条件を満たしていません。
具体的には、解雇の条件としては以下の3つの事項を確認する必要があります。
・合理性と相当性があること
・解雇の手続きが守られていること
・解雇が禁止される場合に当たらないこと
①解雇は、合理性・相当性が認められないと濫用として無効となります。
解雇事由ごとの裁判例の傾向は、以下の通りです。
②解雇には必要な手続きがあり、⑴解雇の予告、⑵解雇の意思表示、⑶懲戒解雇特有の手続きが問題となります。
③法律上、以下のような場合には、解雇が禁止されており、これに該当すると解雇は無効となります。
・国籍、信条又は社会的身分による差別的取り扱いの禁止に違反する場合
・公民権行使を理由とする解雇の禁止に違反する場合
・業務上の負傷・疾病の休業期間等の解雇制限に違反する場合
・産前産後休業期間等の解雇制限に違反する場合
・育児・解雇休業法による解雇の禁止に違反する場合
・男女雇用機会均等法による解雇の禁止に違反する場合
・短時間・有期雇用労働法による解雇の禁止に違反する場合
・個別労働紛争解決促進法による解雇の禁止に違反する場合
・公益通報者保護法による解雇の禁止に違反する場合
・労働施策総合推進法による解雇の禁止に違反する場合
・不当労働行為に該当する場合
解雇の条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇をされた場合に問題があるかは、以下の不当解雇チェッカーで簡単に確認できますので試してみてください。
Q18:解雇が不当な場合には何を請求できる?
解雇をされた場合に会社に対して請求することができる権利としては、以下の5つがあります。
権利1:退職金
権利2:解雇予告手当
権利3:解雇後の賃金
権利4:損害賠償
権利5:解決金
ただし、権利1~5について、1つの事案ですべてを請求できるわけではなく、それぞれ請求できるケースが異なります。
解雇をされた場合に請求できる権利については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q19:懲戒解雇されると再就職への影響はある?
懲戒解雇をされた場合の再就職への影響は大きいものです。
懲戒解雇をされてしまったことは、以下のような理由で再就職先に知られてしまうことがよくあります。
理由1:離職票
理由2:雇用保険受給資格者証
理由3:退職証明書
理由4:履歴書
理由5:面接
理由6:前職への照会
理由7:同業者からの噂
理由8:SNS
理由9:入社後の言動
そして、採用の際に懲戒解雇されたことが知られてしまうと、入社後に問題を起こすのではないかと警戒され、不採用を言い渡されてしまうケースが多いのです。
また、入社後に懲戒解雇されたことを再就職先に知られてしまうと、これを秘して入社した場合には、懲戒解雇をされたり、信頼関係が崩れてしまったりするリスクがあります。
懲戒解雇の再就職への不利益を根本的に解消する対処法は、解雇の無効を主張することです。
懲戒解雇の再就職への影響については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q20:解雇が不当と感じた場合の注意点は?
解雇が不当と感じた場合には、解雇を認める行動をしないように注意しましょう。
解雇の有効を前提とした行動と捉えられかねない場合には、解雇を争う意思がある旨を明示しておくことが大切です。
いざ解雇を争おうとご相談に来ていただいた段階で、既に不利益な事実が積み重ねられてしまっているケースも多いのです。
例えば、以下の点については、注意が必要です。
・解雇予告手当や退職金の受領
・離職票の受領や失業保険の受給
・健康保険証の返還
・業務の引継ぎ
・私物の引き取り
解雇予告手当や退職金の受領
解雇予告手当や退職金については、解雇が有効であることを前提としたものとなります。そのため、解雇が不当であると感じている場合には、解雇予告手当や退職金は請求しないようにしましょう。
もしも、会社から、一方的に解雇予告手当や退職金を振り込まれてしまった場合には、解雇を争う意思がある旨と解雇後の賃金として受領する旨を伝えましょう。
離職票の受領や失業保険の受給
離職票については、退職を前提としたものですが、失業保険を受領するのに必要となりますので、不当解雇を争う期間の生活を維持するために受領する旨を伝えておきましょう。
離職票については、以下の記事で詳しく解説しています。
失業保険については、失業を前提としたものですので、本給付を受けてしてしまうと解雇が有効であることを前提とした行動と言われることがあります。そのため、仮給付により受給するようにしましょう。
失業保険の仮給付については、以下の記事で詳しく解説しています。
健康保険証の返還
健康保険証については、解雇後に会社から返還を求められます。
不当解雇を争っている場合であっても、返還に応じないと無効の公示がなされることになり、これを不当に使用すると詐欺罪として処罰される可能性があります(昭和25年10月9日保発68号)。
そのため、健康保険証については、解雇を争う意思がある旨を明示したうえで、一時的に返還に協力するのがいいでしょう。
業務の引継ぎ
業務の引継ぎは、解雇を争う意思がある旨を明示したうえで、これに協力しましょう。
業務命令として引き継ぎが指示された場合にこれを拒否すると業務命令違反と主張されることがあるためです。
私物の引き取り
私物の引き取りについても、解雇を争う意思がある旨を明示したうえで、これに協力することが穏当です。
私物の引き取りを拒否していると、会社建物の所有権や占有権を理由に妨害排除請求をされたり、保管料を請求されたりするケースがあるためです。
ただし、会社に勝手に入って私物を回収するとトラブルとなるので、引き取りについては日程を協議したうえで行いましょう。
私物の引き取りについては、以下の記事で詳しく解説しています。
Q21:解雇を争うのに時効はある?
不当解雇の無効を主張して、現在も従業員としての地位にあることを確認することについて時効はありません。
これに対して、不当解雇に関連して金銭的な請求をする場合には、これらには時効があります。
まず、解雇後の賃金請求の時効は、給料日から2年です。ただし、労働基準法が改正されたことにより、2020年4月以降が給料日の賃金の時効は3年となります。
次に、慰謝料請求の時効は3年です。ただし、不当解雇による労働者の権利侵害は継続しているのが通常であるためどの時点から3年を数えるかは一律に明確とはいえません。解雇日から3年が経過するまでに請求することをおすすめしますが、解雇日から3年を経過していても請求できる可能性があります。
退職金請求の時効は、請求できるときから5年です。
解雇予告手当請求の時効は、解雇予告の申渡日から起算して2年です。
不当解雇の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q22:復職したくないのだけど解雇は争える?
積極的に復職したいと考えていない場合であっても、解雇を争うことはできます。
解雇を争う場合には、解雇の無効を主張して、解雇後の賃金を請求するのが通常です。
ただし、解雇の無効が認められた場合でも、その会社で働き続けなければならないわけではありません。
そのため、解雇無効の判決を受けて、解雇後の賃金を支払ってもらった後に、退職届を出して辞めることも自由です。
もっとも、解雇後の賃金を請求している期間については、会社から解雇を撤回されて業務指示をされた場合には、これに応じる意思があることが必要です。
もしも、会社から解雇を撤回されても、これに応じる意思がない場合には、解雇の無効は主張せずに、再就職に必要な期間の賃金に相当する金額を損害賠償として請求する方法があります。
ただし、損害賠償の請求は、解雇が濫用となるにとどまらず違法であると言わなければならないので条件が厳格ですし、再就職に必要な期間の範囲でしか認められない傾向にあります。そのため、この構成はあまりとられないのです。
会社から解雇を撤回された場合の対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q23:退職を認めてもらえないのだけどどうすればいい?
期間の定めのない雇用契約については、2週間以上前に伝えることで、会社を退職することができます。
民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
1「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
会社は労働者が退職することを拒否することはできません。
そのため、会社が退職届を受け取ってくれない場合には、内容証明郵便に配達証明を付して、退職する旨と退職日を通知しましょう。
ただし、期間の定めがある場合については、その期間内に退職するには、やむを得ない事由が必要とされています。
民法第628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。」
ブラック企業を退職する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q24:退職届を出した後でも撤回はできる?
退職届は、人事部長などの権限のある方が受理するまでは、撤回が認められる傾向にあります。
ただし、辞職(会社の承諾とは関係なく一方的に退職する意思を示すもの)と解される特段の事情がある場合には、会社に到達した時点で撤回ができなくなってしまいます。
退職届の撤回をすることができない場合でも、以下の3つのケースでは取り消しや無効を主張できます。
ケース1:害悪を示して脅された場合(脅迫)
ケース2:勘違い(錯誤)や騙された場合(詐欺)
ケース3:本心でないことを会社が知り得た場合(心裡留保)
退職届の撤回については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q25:退職したらやることは何がある?
退職したらやることには、主に以下の7つがあります。
やること1:退職に不満がないかの検討
やること2:健康保険や年金保険の切り替え手続き
やること3:失業保険の受給手続き
やること4:会社からの未払いがないかの確認
やること5:私物の引き取り
やること6:住民税の納付手続き
やること7:所得税の確定申告
1~7の順番で処理していくことがおすすめですが、退職時期や期間制限により前後することもあります。
退職したらやることについては、以下の記事で詳しく解説しています。
退職したらやることについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
Q26:パワハラの慰謝料の相場は?
パワハラの慰謝料の相場は、
暴行を伴う事案につき10万円~200万円程度
とされています。
慰謝料の金額については、以下の要素を考慮して判断される傾向にあります。
①行為態様の悪質性
②ハラスメント行為の継続性
③被害者の自殺
④被害者の精神疾患の発症
⑤被害者の素因等
⑥被害者側の対応
⑦被害の軽微性・回復
パワハラの慰謝料の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q27:セクハラの慰謝料の相場は?
セクハラの慰謝料の相場は、
性的接触の事案20万円~200万円程度
とされています。
慰謝料の金額については、以下の要素を考慮して判断される傾向にあります。
①行為態様の悪質性
②行為の継続性
③休職・退職等の結果発生の有無
④被害者側の要因
セクハラの慰謝料の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q28:転勤や業務内容の変更は拒否できる?
転勤や業務内容の変更については、以下のような場合であれば拒否できる可能性があります。
☑職種や勤務地を限定する合意をしている場合
☑業務上の必要性がない場合
☑命令が不当な動機・目的による場合
☑労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じる場合
転勤や業務内容の変更を命じるには、就業規則などに根拠となる規定があることが必要かについては説が分かれています。
解雇の条件が厳格に制限されている反面、転勤や業務内容の変更については会社に広い裁量が認められる傾向にあります。
転勤や業務内容の拒否については、以下の記事で詳しく解説しています。
Q29:有給休暇は理由がないと使えない?
有給休暇については、労働者が自由に使うことができます。
会社の承認は必要ありませんし、有給休暇を取得する理由も不要です。
会社は、事業の正常な運営を妨げる場合には、時季の変更をするように求めることができるにとどまります。
Q30:退職する時に有給は買い取ってもらえる?
退職時に有給休暇が残っている場合であっても、労働者がこれの買い取りを求める権利は、法律上は規定されていません。
そのため、退職するときに有給を買い取ってもらうことはできないのが原則です。
ただし、退職時に余っている有給休暇に相当する金額を手当として交付する制度を設けることは禁止されていません。
そのため、会社がこのような制度を整えている場合には、残っている有給休暇に相当する手当の支払いを請求することができます。
有給休暇については、以下の記事で詳しく解説しています。
労働問題について日頃からできる対策5個
労働問題については、日頃からできる対策があります。
何も意識せずに仕事をしていると、いざ労働問題に直面した場合に、証拠がなかったり、既に不利な状況となっていて取り返しがつかなかったりすることが多いのです。
具体的には、日頃から是非しておいていただきたい対策としては以下の5つがあります。
対策1:記録をつけるようにする
対策2:口頭だけではなくメールでも確認をする
対策3:誠実に業務をする|よく会社から指摘される例
対策4:安易に書類に署名押印をしないようにする
対策5:就業規則等のルールを確認する
順番に説明していきます。
対策1:記録をつけるようにする
労働問題について日頃からできる対策の1個目は、記録をつけるようにすることです。
労働問題が顕在化した場合には、具体的に「いつ・どこで・誰が・どのようなことをしたのか」が非常に重要になります。
数か月前のことなどは忘れてしまっていることが多いので、何か出来事があった直後に小まめにメモをつけておくようにしましょう。
例えば、あなたがハラスメントをされた際などに、その行為があった日付や出来事を具体的にノートにまとめておくと、これが重要な証拠となることがあります。
対策2:口頭だけではなくメールでも確認をする
労働問題について日頃からできる対策の2個目は、口頭だけではなくメールでも確認をすることです。
労働問題の相談を受けていると、「口頭でのやり取りだったので、証拠がないです」ということが非常に多いです。
口頭でのやり取りについては、「言った言わない」になってしまうことが多く、立証が困難です。
そのため、日頃の業務を行うにあたっては、問題になりそうなことはメールでやり取りするようにしたり、口頭でのやり取りの後に発言の内容を確認するメールを送ったりするようにしましょう。
メールにしておけば、スクリーンショットを取るなどの方法で証拠とすることができるためです。
例えば、以下のようなやり取りについては、口頭だけではなく、メールなどでも残しておいた方がいいでしょう。
☑上司や社長からの自宅で残業をするようにとの指示
☑自宅で残業をしていた際などの業務報告
☑ハラスメントの相談
☑理不尽な業務指示・指導
etc…
対策3:誠実に業務をする
労働問題について日頃からできる対策の3個目は、誠実に業務をすることです。
残業問題でも、解雇問題でも、会社から労働者の業務態度が悪かったと指摘がされることがよくあります。
例えば、残業問題では、始業時刻前や終業時刻後にタイムカードが打刻されていても仕事をしていたわけではない理由として、業務態度が悪かったと指摘されます。
例えば、解雇問題では、業務態度が悪かったことを解雇事由の1つとして指摘される場合や改善可能性がないことの事情として指摘される場合があります。
具体的には、会社からよく指摘される例としては以下の通りです。
例1:離席が多い・離席時間が長い
例2:業務時間中にスマートフォンをいじったり・会社のPCでネットサーフィンをしたりしている
例3:終業時刻後も会社内で仕事以外のことをしている
例4:業務の注意をしても反省の色がない
こういった内容については、会社も労働問題が顕在化しそうになると小まめに記録していますので注意が必要です。
そのため、労働問題が顕在化しそうな段階では、常に会社から見られている可能性があることに注意しましょう。
対策4:安易に書類に署名押印をしないようにする
労働問題について日頃からできる対策の4個目は、安易に書類に署名押印をしないことです。
労働問題の相談を受けていると、安易に書類に署名押印をしてしまったために、争うことが難しくなったり、不要な争点が増えてしまったりするケースが非常に多くなっています。
労働者は、労働基準法や労働契約法等により、その権利が強く保護されています。そのため、会社は、労働者自身に承諾をさせることで、労働者に争われるリスクを回避しようとするのです。
例えば、以下のような書類については、その場では署名押印せずに一度持ち帰ってよく内容を確認することをおすすめします。
⑴ 入社日以降に渡された雇用契約書
→求人票の内容と異なる内容が記載されていることがあるので注意しましょう。例えば、無期契約と聞いていたのに、有期契約とされているようなケースがよくあります。
⑵ 業務改善指導書
→改善の対象となる事実に齟齬がないか、改善目標が過酷ではないか、達成できなかった場合の措置が重すぎないかなどを確認しましょう。
⑶ 賃金の減額や降格の同意書
→賃金の減額や降格の根拠が十分にあるのか(同意しなかった場合に会社が減額や降格を行うことが可能な状況か)を確認しましょう。
⑷ 退職勧奨同意書・退職届
→退職勧奨に応じない場合に解雇をする正当な理由があるか、その会社で働き続けたいか、退職した場合に生活を維持できるかなどを踏まえて慎重に検討しましょう。
⑸ 退職の際に交付される誓約書等
→会社に対して何らの債権的な請求もできないことを確認する条項(清算条項)や競業避止義務を課す条項が記載されていることがあるので注意しましょう。
対策5:就業規則等のルールを確認する
労働問題について日頃からできる対策の5個目は、就業規則等のルールを確認することです。
これらを確認することで、あなたの「残業代がどのように計算されるのか」や「どのようなことをすると解雇されるのか」などを知ることができます。
例えば、以下のような規則については確認しておくといいでしょう。
・就業規則
職場のルールや労働条件が記載されています。
・賃金規程
就業規則の一種で賃金に関するルールが記載されています。賃金規程として別に作成されず、就業規則の中に賃金に関する規定がある場合もあります。
・退職金規程
就業規則の一種で退職金に関するルールが記載されています。退職金規程として別に作成されず、就業規則の中に退職金に関する規定がある場合もあります。
・36協定
残業を命じるために必要なもので、残業に関する労使間の約束事が記載されています。
これらの規則を確認するには、上司や社長に就業規則等を確認したい旨を伝えてみましょう。
もしも、上司や社長が就業規則等があるのに見せてくれない場合には、これらの規則等は周知する必要がある旨を伝えます。
それでも見せてくれない場合には、そのやり取りをメールや録音で記録して、労働基準監督署に相談に行くことを検討しましょう。
まとめ
以上のとおり、今回は、「もしものときのために」、①労働問題の相談先、②知っておいてほしい労働問題のQ&A、③日頃からできる対策を解説しました。
最後にこの記事の要点を簡単に整理していきます。
労働問題のおすすめの相談先と特徴をまとめると以下のとおりです。
賃金未払い問題については以下のフロチャートに沿って相談先を決めるのがいいでしょう。
人事問題については、以下のフロチャートに沿って相談先を決めるのがいいでしょう。
ハラスメント問題等については、以下のフロチャートに沿って相談先を決めるのがいいでしょう。
労働問題の相談前にしておきたい準備としては、以下の3つがあります。
労働問題について、日頃から是非しておいていただきたい対策としては以下の5つがあります。
この記事が、もしも皆さんが労働問題に直面した際の助けになれば幸いです。
もしも労働問題に直面することがあったら、是非、「もう一度この記事を見返して」ください。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。